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2.最初の犠牲者
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『とにかく、こうしてみなさんに番組をお届けするのは、それの謝罪のためではありません。ここで共同生活におけるニュースをお伝えするためです』
フロアから漏れてくる、おちゃらけた様子の声が、なぜか急に取り繕ったかのような口調へと変わる。これまで軽い感じだっただけに、それは非常に重いように思えた。
いや、実際に重い内容だったのである。
『それではニュースです。本日未明、共同生活を送っていた自営業、近藤直人さんが自室にて他殺体で発見されました、第一発見者は監視をしていた私で、近藤さんが殺害された一部始終を目撃しました。なお、犯人はやはり地下室の人間であり、近藤さんはナイフでめった刺しにしていたとのことです』
それを聞いた押木と宮澤は、思わず顔を見合わせた。
ニュースの内容は、説明されずともなにが起きたのかを明確に提示していた。しかし、それをすぐに飲み込むことはできなかった。
『ここでルールに則り、みなさんにヒントをお伝えします。――【ここに集められた人間にはある共通点があり、その共通点を探ることが重要な鍵となる】です。それでは、次のヒントも誰かが殺害された時にお伝えします。みなさん、どうか素晴らしき共同生活を』
そして静寂。ただただ痛く冷たいだけの静寂。それに騒ぎ始めた亜由美達の声が混じったことで、押木はようやく状況を理解して立ち上がった。立てるほど体力が回復しているはずはないのであるが、なかば運動反射のように飛び上がったのである。
「押木君、行こうっ!」
押木より少しだけ早く状況を理解したのか、宮澤はすでにフロアへと飛び出していた。押木は心臓が早鐘を打つのを感じながら、それに続く。
フロアに戻ると、すでに近藤の部屋の前に人だかりができていた。もっとも、それは随分と小規模なものであったが、この限定された空間だけに限れば、近藤の部屋の前が最も人口密度が高かった。
亜由美、杏奈、由紀子。三人が押木と宮澤に助けを求めるかのような視線を向けてくる。しかし、澪の姿はそこになかった。
仲沢は部屋でノックダウンしているし、近藤が部屋から出てくる様子もない。よって、男手は押木と宮澤だけになり、亜由美達も押木達が駆けつけるのをさぞかし待っていたことであろう。
押木と宮澤が駆け付けると、亜由美達は近藤の部屋の前から一斉に身を退く。亜由美は顔面蒼白で、空気の読めない杏奈も顔色が悪い。
「近藤さん、いくら呼んでも出てきてくれないんです。まさか、本当に……」
そこまで言うのが精一杯だったのか、由紀子は俯いて口をつぐむ。
「分かっている。だが、それは部屋を確かめてからだ」
宮澤は呟き落とすと、近藤の部屋の扉に手をかける。だが、中から施錠されているのか、扉はびくともしなかった。
「鍵が掛かっている……。押木、こうなったら扉を破ろう。手伝ってくれ!」
宮澤の緊迫した声に押木は頷き、アイコンタクトをとると助走をつけて扉へと体をぶつける。しかし、扉はびくともしない。それこそ、何度体をぶつけようとも、扉が都合よく開くことはなかった。えてして、ご都合主義が通用するのは創作物のなかだけということだ。
「駄目だ。びくともしない……」
額からは脂汗が滲み出てくる。何度もぶつけた肩が痛み始め、いよいよ諦めムードが辺りに漂い始めた。
フロアから漏れてくる、おちゃらけた様子の声が、なぜか急に取り繕ったかのような口調へと変わる。これまで軽い感じだっただけに、それは非常に重いように思えた。
いや、実際に重い内容だったのである。
『それではニュースです。本日未明、共同生活を送っていた自営業、近藤直人さんが自室にて他殺体で発見されました、第一発見者は監視をしていた私で、近藤さんが殺害された一部始終を目撃しました。なお、犯人はやはり地下室の人間であり、近藤さんはナイフでめった刺しにしていたとのことです』
それを聞いた押木と宮澤は、思わず顔を見合わせた。
ニュースの内容は、説明されずともなにが起きたのかを明確に提示していた。しかし、それをすぐに飲み込むことはできなかった。
『ここでルールに則り、みなさんにヒントをお伝えします。――【ここに集められた人間にはある共通点があり、その共通点を探ることが重要な鍵となる】です。それでは、次のヒントも誰かが殺害された時にお伝えします。みなさん、どうか素晴らしき共同生活を』
そして静寂。ただただ痛く冷たいだけの静寂。それに騒ぎ始めた亜由美達の声が混じったことで、押木はようやく状況を理解して立ち上がった。立てるほど体力が回復しているはずはないのであるが、なかば運動反射のように飛び上がったのである。
「押木君、行こうっ!」
押木より少しだけ早く状況を理解したのか、宮澤はすでにフロアへと飛び出していた。押木は心臓が早鐘を打つのを感じながら、それに続く。
フロアに戻ると、すでに近藤の部屋の前に人だかりができていた。もっとも、それは随分と小規模なものであったが、この限定された空間だけに限れば、近藤の部屋の前が最も人口密度が高かった。
亜由美、杏奈、由紀子。三人が押木と宮澤に助けを求めるかのような視線を向けてくる。しかし、澪の姿はそこになかった。
仲沢は部屋でノックダウンしているし、近藤が部屋から出てくる様子もない。よって、男手は押木と宮澤だけになり、亜由美達も押木達が駆けつけるのをさぞかし待っていたことであろう。
押木と宮澤が駆け付けると、亜由美達は近藤の部屋の前から一斉に身を退く。亜由美は顔面蒼白で、空気の読めない杏奈も顔色が悪い。
「近藤さん、いくら呼んでも出てきてくれないんです。まさか、本当に……」
そこまで言うのが精一杯だったのか、由紀子は俯いて口をつぐむ。
「分かっている。だが、それは部屋を確かめてからだ」
宮澤は呟き落とすと、近藤の部屋の扉に手をかける。だが、中から施錠されているのか、扉はびくともしなかった。
「鍵が掛かっている……。押木、こうなったら扉を破ろう。手伝ってくれ!」
宮澤の緊迫した声に押木は頷き、アイコンタクトをとると助走をつけて扉へと体をぶつける。しかし、扉はびくともしない。それこそ、何度体をぶつけようとも、扉が都合よく開くことはなかった。えてして、ご都合主義が通用するのは創作物のなかだけということだ。
「駄目だ。びくともしない……」
額からは脂汗が滲み出てくる。何度もぶつけた肩が痛み始め、いよいよ諦めムードが辺りに漂い始めた。
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