42 / 94
2.最初の犠牲者
6
しおりを挟む
そこに折衷案を持ち込んだのは由紀子だった。そもそも押木と宮澤が交代で休もうとするのは、有事の際に動ける男手を確保しておくためだ。仲沢があんな調子である以上、動ける男は押木、宮澤、近藤の三人。何かがあった時のために、せめて二人は起きているようにしなければならないと思うのは、自然なことであろう。
そして、男手を多く残しながら、しかし効率的に休息をとるのであれば、由紀子の提案したやり方が妥当だった。
「あぁ、それならばリスクを抑えつつ、効率的に休息をとることができるな。私は賛成だが、他の人達はどうだろうか? 異論がないようなら採用したいんだが」
宮澤と押木の言い分を、上手い具合に取り入れた提案に、異論を唱える者などいなかった。
「よし、決まりだな。それでは、先に押木君と間宮君が先に休んでくれ。私と北村君がフロアに残り、三時間経過したら交代。時計の類は部屋にあったはずだから、交代の時間になった際に知らせてくれ。まぁ、時計と言っても残り時間を刻むタタイマーのようだったが」
宮澤の言葉に、部屋で見つけたタイマーのことを思い出す押木。ベットのヘッドテーブルの上に置かれ、ぱっと見た感じでは目覚まし時計のようにしか見えないデジタル式のタイマーだった。ただ、セグメントで表示されている時刻は分刻みで時間が減っていくというもので、時間を記す場所には【46】と記されていたため、それが残り時間を刻むタイマーであることは容易に理解することができたのだった。
恐らく、二人でフロアに残るにしても、女子高生と一緒というのは宮澤も気まずかったのであろう。結果、押木と亜由美を先に休ませ、由紀子をフロアに残すことにしたのだと思われる。
「それじゃあ、とりあえずその流れで動くとしようか。間宮さん、お言葉に甘えて俺達も休もう」
押木は宮澤とアイコンタクトをとって頷くと、明らかに顔色が優れない亜由美のほうへと視線を移した。亜由美はいまだに怯えている様子で、押木の言葉にほんの少しだけ頷いただけであった。
こうして、宮澤と由紀子をフロアに残し、押木と亜由美はそれぞれの部屋へと戻ることになった。
自分のプレートがかけられた扉を開け、念のために施錠をしてからベットに転がり込んでみる。そして、大の字になって天井を呆然と眺める押木、
どうしてこんなことになったのか。どうして自分でなければならないのか。冷たいコンクリートの天井で瞬く蛍光灯は、もちろんそれに答えてはくれなかった。
体は倦怠感にも似た疲れを感じているのに、いざ横になっても眠れなかった。休息を求めているはずの体はずっしりと重いし、確かに眠気はあるのだが眠れない。こんな感覚は。小学校の遠足前日以来だった。
何度も寝返りを打ち、この理不尽な現実からの逃走を図ってみるが、眠くなるどころか目が冴える一方。結局、まだ一時間と経たぬうちに、押木はあきらめて起き上がる。
食料品が保管されている棚からインスタントコーヒーを取り出し、コンロで湯を沸かしてカップに注ぐ。眠れないのであれば、いっそのこと寝なければいいと考えたすえのことだった。
そして、男手を多く残しながら、しかし効率的に休息をとるのであれば、由紀子の提案したやり方が妥当だった。
「あぁ、それならばリスクを抑えつつ、効率的に休息をとることができるな。私は賛成だが、他の人達はどうだろうか? 異論がないようなら採用したいんだが」
宮澤と押木の言い分を、上手い具合に取り入れた提案に、異論を唱える者などいなかった。
「よし、決まりだな。それでは、先に押木君と間宮君が先に休んでくれ。私と北村君がフロアに残り、三時間経過したら交代。時計の類は部屋にあったはずだから、交代の時間になった際に知らせてくれ。まぁ、時計と言っても残り時間を刻むタタイマーのようだったが」
宮澤の言葉に、部屋で見つけたタイマーのことを思い出す押木。ベットのヘッドテーブルの上に置かれ、ぱっと見た感じでは目覚まし時計のようにしか見えないデジタル式のタイマーだった。ただ、セグメントで表示されている時刻は分刻みで時間が減っていくというもので、時間を記す場所には【46】と記されていたため、それが残り時間を刻むタイマーであることは容易に理解することができたのだった。
恐らく、二人でフロアに残るにしても、女子高生と一緒というのは宮澤も気まずかったのであろう。結果、押木と亜由美を先に休ませ、由紀子をフロアに残すことにしたのだと思われる。
「それじゃあ、とりあえずその流れで動くとしようか。間宮さん、お言葉に甘えて俺達も休もう」
押木は宮澤とアイコンタクトをとって頷くと、明らかに顔色が優れない亜由美のほうへと視線を移した。亜由美はいまだに怯えている様子で、押木の言葉にほんの少しだけ頷いただけであった。
こうして、宮澤と由紀子をフロアに残し、押木と亜由美はそれぞれの部屋へと戻ることになった。
自分のプレートがかけられた扉を開け、念のために施錠をしてからベットに転がり込んでみる。そして、大の字になって天井を呆然と眺める押木、
どうしてこんなことになったのか。どうして自分でなければならないのか。冷たいコンクリートの天井で瞬く蛍光灯は、もちろんそれに答えてはくれなかった。
体は倦怠感にも似た疲れを感じているのに、いざ横になっても眠れなかった。休息を求めているはずの体はずっしりと重いし、確かに眠気はあるのだが眠れない。こんな感覚は。小学校の遠足前日以来だった。
何度も寝返りを打ち、この理不尽な現実からの逃走を図ってみるが、眠くなるどころか目が冴える一方。結局、まだ一時間と経たぬうちに、押木はあきらめて起き上がる。
食料品が保管されている棚からインスタントコーヒーを取り出し、コンロで湯を沸かしてカップに注ぐ。眠れないのであれば、いっそのこと寝なければいいと考えたすえのことだった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
バージン・クライシス
アーケロン
ミステリー
友人たちと平穏な学園生活を送っていた女子高生が、密かに人身売買裏サイトのオークションに出展され、四千万の値がつけられてしまった。可憐な美少女バージンをめぐって繰り広げられる、熾烈で仁義なきバージン争奪戦!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる