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『さぁ、まず記念すべき1人目は、大学5年生の押木準君です! おっと、言っておくけど5年生ってのは間違いでもなんでないぜぇ。彼はなんとダブっててるんだ。でも、考えようによっては辛く苦しい社会に出るのが遅れる上に、親の脛をかじれる期間が長くなるわけだから、留年ってもの悪くない。もしかすると、彼もそれを狙ったのかもしれませんねぇ』
どこか人を馬鹿にしているような紹介のされかたに、押木は思わず小さく舌打ちをする。確かに留年したことも事実だし、学費と生活費も親持ちであるのも間違いない。それに、もう1年遊べることをどこかで喜んでいる節もあった。高校を卒業して就職した友人の話を聞いて、社会に出るのが憂鬱になっていたのも否定しない。
けれども、それを赤の他人――それも、どこの誰かも分からぬ人物に面白おかしく揶揄されるのは面白くなかった。それを嘲るような笑い声の合いの手も不愉快だった。
『さぁ、どんどん参りましょう! 続いては花も恥じらう女子高生。高校2年の間宮亜由美ちゃん! 成績は中の上だけど、最近になって随分と垢抜けたのか、これまで染めたことのなかった髪を金髪にして登場です。いやぁ、女子高生ってのは世の男達の永遠のブランド。きっと今回は華を添えてくれることでしょう』
続いて紹介されたのは亜由美で、彼女はうつむきながら小さく震えていた。紹介のされかたに憤怒しているというよりかは、正体すら分からない人物に自分のこと知られているのが恐ろしいといった具合だった。
『3人目のご紹介は仲沢義昭君です。えーっと、彼はニートです。さっきから色々といきがってますけど、ニートですから。いわゆる不良に憧れていきがっていながら、親に全て養ってもらっている彼は正に寄生虫。みなさん、こんな大人になってはいけませんよぉ』
「――どこに隠れてやがる! 人を馬鹿にすんのもいい加減にしろや! ぶっ殺してやるからな!」
続いての紹介に怒鳴り声をまき散らしたのは、押木が最初に起こした金髪の男だった。どうやら、彼は仲沢というらしい。相変わらず人を小馬鹿にした紹介だったが、仲沢を見ていると妙に的を射た紹介だったような気がした。
そんな仲沢は、顏を真っ赤にしてフロアにあった扉を片っ端から開き始める。どうやら謎の人物を探しているようだった。乱暴にそれぞれの扉を開け、中に入っては喚き散らす。それが終わると、押木達の真正面にある上り階段の方へと駆け寄った。
このフロアは、両側に扉が4つずつ並び、正面側には上り階段、そして後ろには他の扉とは明らかに造りが違う鉄扉がある構造となっていた。
押木も上り階段のことは気になっていたものの、みんなを起こすことに必死で調べる間がなかったのだった。
『おっと、そこは外……上へと出るための階段だよ。でも残念ながら外に続く階段は外から溶接させてもらっているから、外に出ることは諦めたほうがいいですよぉ』
どこか人を馬鹿にしているような紹介のされかたに、押木は思わず小さく舌打ちをする。確かに留年したことも事実だし、学費と生活費も親持ちであるのも間違いない。それに、もう1年遊べることをどこかで喜んでいる節もあった。高校を卒業して就職した友人の話を聞いて、社会に出るのが憂鬱になっていたのも否定しない。
けれども、それを赤の他人――それも、どこの誰かも分からぬ人物に面白おかしく揶揄されるのは面白くなかった。それを嘲るような笑い声の合いの手も不愉快だった。
『さぁ、どんどん参りましょう! 続いては花も恥じらう女子高生。高校2年の間宮亜由美ちゃん! 成績は中の上だけど、最近になって随分と垢抜けたのか、これまで染めたことのなかった髪を金髪にして登場です。いやぁ、女子高生ってのは世の男達の永遠のブランド。きっと今回は華を添えてくれることでしょう』
続いて紹介されたのは亜由美で、彼女はうつむきながら小さく震えていた。紹介のされかたに憤怒しているというよりかは、正体すら分からない人物に自分のこと知られているのが恐ろしいといった具合だった。
『3人目のご紹介は仲沢義昭君です。えーっと、彼はニートです。さっきから色々といきがってますけど、ニートですから。いわゆる不良に憧れていきがっていながら、親に全て養ってもらっている彼は正に寄生虫。みなさん、こんな大人になってはいけませんよぉ』
「――どこに隠れてやがる! 人を馬鹿にすんのもいい加減にしろや! ぶっ殺してやるからな!」
続いての紹介に怒鳴り声をまき散らしたのは、押木が最初に起こした金髪の男だった。どうやら、彼は仲沢というらしい。相変わらず人を小馬鹿にした紹介だったが、仲沢を見ていると妙に的を射た紹介だったような気がした。
そんな仲沢は、顏を真っ赤にしてフロアにあった扉を片っ端から開き始める。どうやら謎の人物を探しているようだった。乱暴にそれぞれの扉を開け、中に入っては喚き散らす。それが終わると、押木達の真正面にある上り階段の方へと駆け寄った。
このフロアは、両側に扉が4つずつ並び、正面側には上り階段、そして後ろには他の扉とは明らかに造りが違う鉄扉がある構造となっていた。
押木も上り階段のことは気になっていたものの、みんなを起こすことに必死で調べる間がなかったのだった。
『おっと、そこは外……上へと出るための階段だよ。でも残念ながら外に続く階段は外から溶接させてもらっているから、外に出ることは諦めたほうがいいですよぉ』
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