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第二話 Q&A【事件編】
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「さっさと出しておけば、ここまで揉めることもねぇのによ」
坂田は差し出された鍵を奪い取ると、鍵についていたナンバーで部屋を割り出し、そちらへと向かう。いずれリフォームをする予定のようだし、可能な限り事件当時のままの形で部屋が残ってくれているとありがたいのだが。
問題の部屋の前にたどり着くと、早速鍵を開けて中へ。
「血の匂いが染み付いてやがるな――。こいつはリフォームしても駄目かもな」
部屋の中はカーテンが引かれているせいで、真っ暗に等しかった。電気を点けると、暖色系の灯りがうっすらと部屋を照らす。乱暴にベッドの上に放り投げられた布団からは、生臭いものが漂ってくるような気がした。
「さて、なにが正しくて、なにが間違っているのか――考える必要がありそうだな」
坂田は小さく呟き落とすと、部屋の中を漁り始めた。
被害者である千秋は、ここで惨殺された。舞香の証言などからすると、どうやら援交目的ではなく、クスリの売買のために、このホテルを使ったらしい。
「筋は通ってるんだけど、そう考えると不審な点が出てくるんだよなぁ」
坂田は、いまだに壁に残っている血文字へと視線をやる。そこには狂気の問題文が書かれていた。
「こいつの答えは売女で間違いない。クスリを取り引きする相手とホテルで会ったのに、その売人のことを売女呼ばわりする奴なんているのか? だって、女の体が目当てじゃねぇってことだろ?」
誰に問うでもなく呟くと、坂田は浴室のほうを調べる。それにしても生臭い。殺人現場だとしても、どうしてこうも生臭いのか。
「この辺りが特にきついな。なんだよ、これ――」
管理人の話だと、警察の捜査が終わってから、誰も部屋に入れていなかったようだ。それにしたって、ここまで生臭い部屋になるのだろうか。臭いが取れていない――のではなく、強くなっているという印象だった。
坂田は浴室の天井へと視線をやる。そこには、点検口があった。普段はそこから天井にのぼり、さまざまなメンテナンスをするはずだ。
正直、直感的に嫌な予感というものはあった。あまり考えたくはないが、あってはならないものが、そこにあるのではないかとさえ考えた。このような時の予感というものは、特に当たる。なぜだか、当たるものだ。
天井板を外し、ゆっくりと板を上げる。途端に生臭さが増した。
「マジかよ……これ、もう警察の落ち度だろうよ」
坂田は差し出された鍵を奪い取ると、鍵についていたナンバーで部屋を割り出し、そちらへと向かう。いずれリフォームをする予定のようだし、可能な限り事件当時のままの形で部屋が残ってくれているとありがたいのだが。
問題の部屋の前にたどり着くと、早速鍵を開けて中へ。
「血の匂いが染み付いてやがるな――。こいつはリフォームしても駄目かもな」
部屋の中はカーテンが引かれているせいで、真っ暗に等しかった。電気を点けると、暖色系の灯りがうっすらと部屋を照らす。乱暴にベッドの上に放り投げられた布団からは、生臭いものが漂ってくるような気がした。
「さて、なにが正しくて、なにが間違っているのか――考える必要がありそうだな」
坂田は小さく呟き落とすと、部屋の中を漁り始めた。
被害者である千秋は、ここで惨殺された。舞香の証言などからすると、どうやら援交目的ではなく、クスリの売買のために、このホテルを使ったらしい。
「筋は通ってるんだけど、そう考えると不審な点が出てくるんだよなぁ」
坂田は、いまだに壁に残っている血文字へと視線をやる。そこには狂気の問題文が書かれていた。
「こいつの答えは売女で間違いない。クスリを取り引きする相手とホテルで会ったのに、その売人のことを売女呼ばわりする奴なんているのか? だって、女の体が目当てじゃねぇってことだろ?」
誰に問うでもなく呟くと、坂田は浴室のほうを調べる。それにしても生臭い。殺人現場だとしても、どうしてこうも生臭いのか。
「この辺りが特にきついな。なんだよ、これ――」
管理人の話だと、警察の捜査が終わってから、誰も部屋に入れていなかったようだ。それにしたって、ここまで生臭い部屋になるのだろうか。臭いが取れていない――のではなく、強くなっているという印象だった。
坂田は浴室の天井へと視線をやる。そこには、点検口があった。普段はそこから天井にのぼり、さまざまなメンテナンスをするはずだ。
正直、直感的に嫌な予感というものはあった。あまり考えたくはないが、あってはならないものが、そこにあるのではないかとさえ考えた。このような時の予感というものは、特に当たる。なぜだか、当たるものだ。
天井板を外し、ゆっくりと板を上げる。途端に生臭さが増した。
「マジかよ……これ、もう警察の落ち度だろうよ」
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