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第二話 Q&A【事件編】

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【10】

「おい、どういうことだ? 昨日の大量検挙といい、随分と活躍してしてるみたいだが、俺の理解が追いつかない」

 朝、署に出てくるなり、倉科に呼び出された巌鉄。廊下を歩きながら倉科に問う。

「ですから、これで一連の事件も解決ということです。まぁ、最後の最後は棚からぼたもちですけど」

 颯爽と歩く倉科の後に続く巌鉄。一連の事件とは何を指しているのか。ブルーゼノ絡みのクスリを指しているのだろうか。疑問符だらけの巌鉄のことを察してくれたのであろう。実に分かりやすい説明を、倉科はたった一言で済ませてくれた。

「橋本舞香が今朝自首をしました。クスリの売買及び、加藤千秋の殺害を仄めかす供述もしているようです」

 あらかじめその可能性を疑っていたせいか、そこまでの衝撃はなかった。むしろ、やはりか――という印象が強い。

「そうか、やっぱりあの子が一枚噛んでいたか」

 これは坂田にも一報を入れてやらねばなるまい。すぐにでも携帯を鳴らしてやりたいが、署内にある電話は限られている。今まではそれが当たり前だったから、不便にも思わなかったが、携帯電話という文明の利器を知ってしまったら、連絡を取れないのがもどかしい。

「噛んでいた――というより、主犯ですよ。クスリはともかく、殺しをしたのは、彼女以外の何者でもありませんから」

 すっかり彼女に利用されしまった。がしかし、それを簡単には認めたくない巌鉄は、少しばかり穿った見方をしてしまう。

「だが、それはあくまでも彼女の自供によるものだろ?」

 倉科はちらりと巌鉄のほうを振り返ると、こくりと頷いた。

「えぇ。ですが、自首をしてきた人間の供述ですから、信憑性はあるかと思います」

 確かに、倉科の言い分も一理はある。しかし、あれだけ回りくどい工作をしていた彼女が、なぜ今さらになって自首という手段に出たのか。

「それで、俺はなんで朝っぱらから呼び出されたんだ?」

「橋下舞香が話をしたいそうです。ほかの捜査員には話せないことがあるみたいで」

 事件というものは待ってはくれないし、こちらの都合なんてお構いなしだ。取調べだって、一応時間は定められてはいるが、今の舞香のように朝っぱらに自首してくれば、そのまま話を聞くことだってある。

「彼女が俺に?」

 舞香からすれば、巌鉄はただ都合のいい相手だったはず。それなのに、なにを今さら話そうというのだろうか。
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