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第二話 Q&A【事件編】

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【9】

「ブルーゼノの店も警察のガサが入った。千秋の部屋にもガサが入った――お前、何か警察に話したか?」

 それは地下の奥深くにある、会員制のバー。それなりのお金を持っていなければ、入ることさえ許されない場所だ。こうして、会員の連れということで入店を許されているわけだが、それでも肩身が狭い。

「私はなにも話していない。それに、嗅ぎ回っている連中を追い払おうともした」

 出された飲み物に手をつける気にはなれなかった。それよりも、クスリが欲しい。喉がからからに渇き、それなのに変な脂汗はかいている。

「そこからガサ入ったんじゃねぇのか? お前、やってることが全部裏目に出てんだよ。結局、ブルーゼノの店にも警察が入ったし、あの死んだ男の体内からも、同じ成分が検出されるだろう。色々とヘマをしてくれたみたいだな」

 完全個室の対面に座る人物は、そう言うと舞香の頬を張った。一瞬何が起きたか分からなかった舞香。ようやく状況を理解して頬をさする。

「一緒にホテルに入った男が、まさか自分の腹を掻っ捌くなんて思わないじゃない! それまではうまいこと警察の連中を誘導できていたのに!」

 舞香は例の事件からクスリの関係性を遠ざけるために、例の少年課の男を利用して、事件のでっち上げをしてきた。そして、途中まではおおむねで順調だったのだ。

 イレギュラーが発生したのは、たまたま引っ掛けた男。クスリが決まりすぎ、急にナタを片手に暴れ出したかと思ったら、そのまま自分の腹を掻っ捌いてしまった。イレギュラーにもほどがあるというか、そのせいで余計な細工をする必要性が出てきてしまった。

 本当ならば、警察があの男を逮捕し、それで終わるはずだった。基本的にスマイルはアッパー系であり、キメている最中の記憶は曖昧になる。そこで既成事実さえでっち上げることができれば、クスリを事件から遠ざけることができた。やはり、クスリをアルコールに混ぜたのが良くなかったか。

「それで、クスリのことを怪しまれたから、ブルーゼノを使って襲撃させたと。そんなの、自分が関与していると言っているようなものじゃないか!」

 相手は立ち上がれないでいる舞香の腹を蹴ってきた。この人は女子どもにさえ容赦はしない。改めて恐ろしい人間だと思う。この人は暴力だけではない、時として人を殺めることだってためらわないだろう。
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