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第二話 Q&A【事件編】

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「まず、例のホテルで死んでた男の身元が明らかになった。名前は……いや、最近はプライバシーの問題もあるし、ここは伏せておいてもいいだろう」

 警察が一般人にペラペラと捜査情報を話す。そんなのは、2時間ものの刑事ドラマだけで充分とでも言いたそうだ。まぁ、坂田も坂田で、殺された男の素性が分かったところで、なにかが進展するとは思っていない。あえて固執するところでもないだろう。

「殺された男は、あるグループに所属していた人間だった。まぁ、店に直接乗り込んだくらいだから、もう分かっているのかもしれないが」

 店に乗り込んだのは成り行きであって、そこまで丁寧に調べ上げて乗り込んだわけではない。しかし、そこでも妙なつながりがあるのだとすれば、もはや偶然で済ますことはできないだろう。

「ブルーゼノの人間だったってことか?」

 坂田の言葉に、巌鉄は大して驚きもしなかったようだ。ある程度のことをこちらが掴んでいることは、大前提となっているのかもしれない。

「その通りだ。しかも、ブルーゼノとかいうグループの中では、かなり上のほうにいた人間みたいだな」

 たまたま舞香のことをナンパをしてきたという男が、ブルーゼノの人間だった。これだけを切り取っても、偶然で済まされるものではない。

「ちなみに、あいつらが扱っていたドラッグ……通称スマイルだが、どうやらLSDに似た成分で作られたものだったようだ」

 LSDはアッパー系のドラッグの代名詞のようなものであり、経口摂取という手軽さから、簡単に若者の間に広がってしまう。ちょっとアンダーグラウンドに潜れば、割りかし簡単に手に入ってしまうのもまた、普及する理由になっただろう。

「それで、遺体からLSDと同様の成分が多量に検出された。一度に摂取するような量じゃねぇってよ」

 坂田が煙草を吸い終えると、巌鉄が気を利かせて灰皿を差し出してくれる。灰皿で煙草を揉み消しながら坂田は口を開いた。

「あのホテルで死んでた男は、やっぱり本当に死んでたんだよな? 死んだふりをしていたわけでもなく」

 舞香の話とところどころで食い違いがある。この奇妙な状況に、坂田の中ではある推測が形成されつつあった。

「あぁ、自分で自分の腹を切りつけたみたいだな。鑑識の見立てだと、クスリの多量摂取のせいでやったんじゃねぇかって……」
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