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第二話 Q&A【事件編】

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【7】

「まぁ、そう不貞腐れんなよ。あくまでも形式上のもので、すぐに帰してやるから」

 取調室にて待たされること、すでに数時間。自由に煙草が吸えない環境に置かれて、坂田はさすがに苛立ちを隠せずにいた。だから、ようやく姿を現した巌鉄に要求することはひとつだけだった。

「煙草……」

 同じ喫煙者として、煙草が吸えない辛さは分かっているはず。巖鉄は小さく溜め息を漏らすと、無言で煙草を差し出してくれた。

「で、どこまで分かったんだ?」

 煙草に火を点けたところで、坂田の機嫌が完全になおるわけではない。勝手にガサ入れされたことも面白くなかった。

「坂田、いい加減機嫌をなおしてくれないか? 確かに、署の若いのが――って言っても、それなりに歳いってるか。なんにせよ、勝手に動いたことは謝る。お前が独自に調べようとしていたところに水を差しちまったみたいだな」

 巌鉄は坂田の対面に座る。その手にはメニュー表らしきものが握られていた。

「腹減っただろ? 何食う?」

 それは、近場の食堂のものらしきメニュー表だった。

「それって禁止されてんじゃねぇのか? 食べ物と引き換えに自白を促す――みたいなことになるから」

 刑事ドラマなどでは、よく取り調べ中にカツ丼が出てくる。大抵が、なぜか刑事のおごりということになっているが、実はこの行為自体が違法である。食べ物と引き換えに自白を促す行為として受け止められてしまうからだ。

「そんなこと言ったら、煙草もアウトだ。嗜好品と引き換えに自白を――なんて言い出したらキリがねぇだろ?」

 巌鉄はそう言うと「じゃあ、取調室記念ってことで、カツ丼でいいか?」と、取調室にあった黒電話で注文をしてしまう。

「それに、お前は今回被疑者じゃねぇんだよ。警察が事情をお聞きしたい――協力をお願いしたい目撃者なんだよ。それに、決まりばっかり守っていちゃ、息苦しくて仕方ねぇだろ」

 巌鉄の言い分に、思わず鼻で笑う坂田。

「刑事がそんなこと言っていいのかよ」

「いいんだよ。俺は厳密には刑事じゃねぇからよ」

 坂田は煙草の煙を深く吸い込む、それを吐き出しながら続けた。

「それじゃあよ、現状で分かってること全部教えてくれよ。情報が色々と錯綜しててよ、整理するにしても時間がかかりそうなんだよ」

 とにかく、今の時点でも情報量が多く、少しでもそれをシェイプアップしておきたいところだった。
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