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第二話 Q&A【事件編】

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「こいつは、久々に面白いやつとやれそうだな」

 坂田が独り言のごとく呟くと、同じようにあちらも「そりゃ、こっちの台詞だな」と呟く。もはや話し合いなどでは決着することはないだろう。

「だったら、思う存分行かせてもらうぜ!」

 坂田と金髪、ほぼ同時に床を蹴った時のことだった。

大見おおみさん! 大変です!」

 青パーカーの連中が2人ほど雪崩れ込んでくる。床で伸びている自分達の仲間を見てから、一瞬動きを止める。そもそも、普段はVIPなどには入れない立場なのであろう。あっさり立ち入れたことに、誰よりも本人達が驚いているようだった。

「なーに、水を差してくれちゃってんの? これからがお楽しみなのに」

 金髪の名前は大見というらしい。そんな大見は実に不機嫌そうに返す。すると、青パーカーの男達は、やや怯えた様子で口を開いた。

「警察からガサが入りました。今、ホールで対応してますけど、やばいです!」

 店内で堂々とクスリをやっていたようだし、警察に摘発されたら言い逃れはできないだろう。坂田は小さく舌打ちをすると「まさか、巖鉄のおっさんが一枚噛んだりしてねぇだろうな」と呟き落とす。

「あー、なんか取り込みはじめたし、俺先に帰るわ。変なことに巻き込まれるのも面倒だしよ。それじゃ坂田ちゃん。また」

 変わり身が誰よりも早かったのは銀山だったであろう。警察が介入したと知ってからの逃げ足の速さは、きっと真似できる者はいない。

 ふと、店に流れていた大音量の音楽が消える。急に静かになったせいか、耳鳴りが酷かった。

「はい、ご覧の通り警察です! 君ら、なんだかよろしくないクスリやってるね。はい、動かないで……」

 その声はどこかで聞いたことのある声だった。それこそ、ついさっき電話で話した相手が、こんな声だったような気がする。

「余計なことしやがって……」

 坂田が独り言を漏らすと、金髪……大見は小さく溜め息を漏らす。

「とんだ邪魔が入ったみたいだな。おかげさんで、しばらく商売もできなくなりそうだ」

 大見が言うと同時に「警察だ!」と、男が踏み込んでくる。その姿、やはり見たことのない男であったが、しかし坂田は知っていた。もしかすると、本能的な出会いというものを感じていたのかもしれない。

「よし、とりあえず全員署まで来てもらおうか。詳しく事情を聞かせてもらうからな」

 こうして、坂田が欲した情報は、警察の乱入により立ち消えてしまった。

 ――振り出しに戻る。
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