120 / 166
第二話 Q&A【事件編】
65
しおりを挟む
「分かればいい。お前達、命拾いしたな。きっと、ここでものしあがれるぜ」
実に適当な物言いではあるが、すでに坂田の存在は、彼らにとって上の存在へと昇華されてしまっている。どこの誰かは知らないし、分かりもしないけど、とにかくすごい人。そんな風に映っていることだろう。この界隈、それっぽく振る舞えば、それっぽく見せることができるから不思議だ。まぁ、基本的に馬鹿の集まりということか。
「お前ら、もうちっと勉強しておいたほうがいいぞ。俺のこと知らないとか、マジでクソだから」
銀山は坂田に口裏を合わせている――というより、本気で偉そうにしているようだ。別に誰が上か下かなんて気にならないし、そもそも気にすることでもないのだろうが、それでも銀山の仕草は鼻につく。一応、同じ側の坂田でもそうなのだから、下っ端の彼らからすれば、随分と横柄に見えることだろう。
とにもかくにも簡単に店内へと入ることに成功した坂田達。店内は薄暗く、しかしお約束だとばかりにブルーライトで統一されていた。地響きのようなウーファーに、どこのアーティストなのか分からない音楽が響く。ホールにいる客はまばらではあるが、しかしまるで人が入っていないというわけでもない。健全な商売としては明らかに赤字の人の入りだった。それでも、この店が成り立つのは、おそらく――。
「おい、あそこの男と女を見ろ。堂々とクスリをキメてやがる。いくら見張を店の出入り口につけてるとはいえ、ちょっと警戒心がねぇな」
坂田はホールをざっと見渡しすと、怪しげな動きをしている男女を数組確認。クスリは経口接種する形らしい。普通、いぶったり、鼻から吸い込んだりしてキメるものだが、どうやらスマイルとやらは、直接飲み込む形らしい。
「アッパー系って話だから、ここで決めて――多分裏に連れ込んでやることやるんだろうよ。中々にゲスいことやりやがるな」
銀山は至って真面目であるが、坂田からすれば大きなブーメランが戻ってきているのが見える。
「あんたにゲスいって言われるやつらに同情するぜ……。とにかく、VIPルームとやらに向かってみるか。まぁ、ハッタリが通じるのはここまでだろう」
坂田は辺りを見回すと、明らかに他とは様相の異なる扉を発見する。ホールから階段を登った先にある扉。明らかに場違いなほど重厚だった。
「あそこがVIPルームだな。さてさて、雨立町のVIPをどのようにもてなしてくれるのかなぁ」
そう言って笑みを浮かべた銀山に向かって「お前、マジできもいな」とだけ言い放ち、坂田はVIPルームへと向かう。
実に適当な物言いではあるが、すでに坂田の存在は、彼らにとって上の存在へと昇華されてしまっている。どこの誰かは知らないし、分かりもしないけど、とにかくすごい人。そんな風に映っていることだろう。この界隈、それっぽく振る舞えば、それっぽく見せることができるから不思議だ。まぁ、基本的に馬鹿の集まりということか。
「お前ら、もうちっと勉強しておいたほうがいいぞ。俺のこと知らないとか、マジでクソだから」
銀山は坂田に口裏を合わせている――というより、本気で偉そうにしているようだ。別に誰が上か下かなんて気にならないし、そもそも気にすることでもないのだろうが、それでも銀山の仕草は鼻につく。一応、同じ側の坂田でもそうなのだから、下っ端の彼らからすれば、随分と横柄に見えることだろう。
とにもかくにも簡単に店内へと入ることに成功した坂田達。店内は薄暗く、しかしお約束だとばかりにブルーライトで統一されていた。地響きのようなウーファーに、どこのアーティストなのか分からない音楽が響く。ホールにいる客はまばらではあるが、しかしまるで人が入っていないというわけでもない。健全な商売としては明らかに赤字の人の入りだった。それでも、この店が成り立つのは、おそらく――。
「おい、あそこの男と女を見ろ。堂々とクスリをキメてやがる。いくら見張を店の出入り口につけてるとはいえ、ちょっと警戒心がねぇな」
坂田はホールをざっと見渡しすと、怪しげな動きをしている男女を数組確認。クスリは経口接種する形らしい。普通、いぶったり、鼻から吸い込んだりしてキメるものだが、どうやらスマイルとやらは、直接飲み込む形らしい。
「アッパー系って話だから、ここで決めて――多分裏に連れ込んでやることやるんだろうよ。中々にゲスいことやりやがるな」
銀山は至って真面目であるが、坂田からすれば大きなブーメランが戻ってきているのが見える。
「あんたにゲスいって言われるやつらに同情するぜ……。とにかく、VIPルームとやらに向かってみるか。まぁ、ハッタリが通じるのはここまでだろう」
坂田は辺りを見回すと、明らかに他とは様相の異なる扉を発見する。ホールから階段を登った先にある扉。明らかに場違いなほど重厚だった。
「あそこがVIPルームだな。さてさて、雨立町のVIPをどのようにもてなしてくれるのかなぁ」
そう言って笑みを浮かべた銀山に向かって「お前、マジできもいな」とだけ言い放ち、坂田はVIPルームへと向かう。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―
鬼霧宗作
ミステリー
窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。
事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。
不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。
これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。
※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる