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第二話 Q&A【事件編】

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「分かればいい。お前達、命拾いしたな。きっと、ここでものしあがれるぜ」

 実に適当な物言いではあるが、すでに坂田の存在は、彼らにとって上の存在へと昇華されてしまっている。どこの誰かは知らないし、分かりもしないけど、とにかくすごい人。そんな風に映っていることだろう。この界隈、それっぽく振る舞えば、それっぽく見せることができるから不思議だ。まぁ、基本的に馬鹿の集まりということか。

「お前ら、もうちっと勉強しておいたほうがいいぞ。俺のこと知らないとか、マジでクソだから」

 銀山は坂田に口裏を合わせている――というより、本気で偉そうにしているようだ。別に誰が上か下かなんて気にならないし、そもそも気にすることでもないのだろうが、それでも銀山の仕草は鼻につく。一応、同じ側の坂田でもそうなのだから、下っ端の彼らからすれば、随分と横柄に見えることだろう。

 とにもかくにも簡単に店内へと入ることに成功した坂田達。店内は薄暗く、しかしお約束だとばかりにブルーライトで統一されていた。地響きのようなウーファーに、どこのアーティストなのか分からない音楽が響く。ホールにいる客はまばらではあるが、しかしまるで人が入っていないというわけでもない。健全な商売としては明らかに赤字の人の入りだった。それでも、この店が成り立つのは、おそらく――。

「おい、あそこの男と女を見ろ。堂々とクスリをキメてやがる。いくら見張を店の出入り口につけてるとはいえ、ちょっと警戒心がねぇな」

 坂田はホールをざっと見渡しすと、怪しげな動きをしている男女を数組確認。クスリは経口接種する形らしい。普通、いぶったり、鼻から吸い込んだりしてキメるものだが、どうやらスマイルとやらは、直接飲み込む形らしい。

「アッパー系って話だから、ここで決めて――多分裏に連れ込んでやることやるんだろうよ。中々にゲスいことやりやがるな」

 銀山は至って真面目であるが、坂田からすれば大きなブーメランが戻ってきているのが見える。

「あんたにゲスいって言われるやつらに同情するぜ……。とにかく、VIPルームとやらに向かってみるか。まぁ、ハッタリが通じるのはここまでだろう」

 坂田は辺りを見回すと、明らかに他とは様相の異なる扉を発見する。ホールから階段を登った先にある扉。明らかに場違いなほど重厚だった。

「あそこがVIPルームだな。さてさて、雨立町のVIPをどのようにもてなしてくれるのかなぁ」

 そう言って笑みを浮かべた銀山に向かって「お前、マジできもいな」とだけ言い放ち、坂田はVIPルームへと向かう。
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