ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

鬼霧宗作

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第二話 Q&A【事件編】

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「おい、お前ら」

 階段の中ほどまで降りると、明らかに出入り口で見張りをしている男達に声をかける。あちらの人数は2人。やろうと思えば銀山と2人で簡単に突破できるだろうが、下手に騒ぎを起こすのは得策ではない。

「あ? なんだお前ら。見ない顔だな」

 明らかに坂田達より若そうな感じである。普通ならば高校に通っているくらいの若さ。顔からもあどけなさが完全になくなっておらず、いかにもガキといった感じだった。

「……そうか。お前達、もしかしたら下っ端か? この人のことを知らないってことは、そうか。下っ端じゃ話にならねぇなぁ」

 銀山のほうに視線をやりつつ、小さくため息を漏らす坂田。そもそも、銀山はそこまで顔が広いわけではないし、知名度があるわけではない。しかし、坂田はそこを利用しようと考えた。

「ちょ、ちょっと確認してく……」

「あー、いいよいいよ。そちらさんの言いたいことは分かったから。俺達ほどの相手を出迎えるのに、何も知らない下っ端で充分ってことだろ? 言いかえれば、俺達のことを出迎えるつもりもないってことだ」

 確認するために中に入ろうとする男の肩を叩くと、いかにも呆れたように首を横に振る。もうひと押しだ。

「お前達の上の人達に伝えておいて、例の話はなかったことにしておいてくれって。こんな舐めた対応されたんじゃ、たまったもんじゃねぇよ」

 坂田は静かに言い放つと、銀山に向かって。あえて敬語で「行きましょうや」と言う。銀山は勘違いしてるのか「やっと立場が分かったのかよ、坂田ちゃん」と笑みを浮かべる。なぜこちらが演技をしているのが分からないのか。

「ま、待ってくれ! 分かった。中に入ってくれ! 例の取り引きならVIPルームに向かってくれればいい」

 基本的に下っ端というものは、何も知らされていない末端ということが多い。例えば、今日この店で大きなクスリの取り引きがあったとしても、知らされてはいないか、濁して知らされている程度だろう。そこに、さも上客と言わんばかりの悪そうな奴らが現れ、あからさまに上の人間と繋がっているような素振りを見せれば、通さざるを得ないだろう。これで取り引きが駄目になってしまった場合、理不尽ながらも対応をした下っ端の責任になってしまう。それを避けるために、下っ端の男達は坂田達を通すしかなくなるわけだ。
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