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第二話 Q&A【事件編】

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「まぁ、それ相応の謝礼をするってことで話がついたから――」

 坂田はそれを聞いて携帯を取り出す。もし、男が死体のふりをしていただけなのであれば、色々と事情が違ってくる。巌鉄に連絡を入れたかった。こういう時、相手も携帯を持っていれば便利なのに。

 とりあえず、巌鉄のベルを鳴らすだけ鳴らしてみたほうがいい。もし、舞香の言っていることが事実ならば、警察を本格的に巻き込むのはよろしくない。

「それ相応の謝礼ねぇ。とりあえず、頼むほうも頼むほうだけどよ、それを引き受けるほうも引き受けるほうだぜ」

 坂田は携帯を操作し、巌鉄のポケットベルへとメッセージを送信。とりあえずこちらの電話番号だけ打ち込んでおけば、あちらも意図に気づいてくれることだろう。

「とにかく、これで振り出しだな……」

 男はただ死んだふりをしていただけ。囮捜査が大きく失敗してしまっていたがゆえに、その事実に内心で胸を撫で下ろす。人が死んだとなれば面倒なことになるのは避けられないが、今ならばいくらでもごまかすことができる。そんなことを考えていた矢先、坂田は思い知った。

 ――もうすでに、面倒なことに巻き込まれていたことを。

「いや、マイナススタートか」

 人混みの中に向かって、腰を少しだけ落として構える坂田。人混みに紛れて気配をごまかしていたつもりなのであろうが、やり方が雑すぎる。素人のやり方だ。

 ふと、坂田の目の前に拳が現れた。それは、行き交う人の流れを縫うようにして、それでいて流れに逆らいながらも、坂田の面前に迫る。

「まぁ、これくらいの刺激はあったほうがいいよな」

 軌道通りに行けば、確実に坂田の鼻っ柱を捉えていたはずの拳は、しかし残念ながら坂田の手の平によって受け止められる。坂田は受け止めた拳を強く握ると、そのまま握り潰そうと力を入れた。もちろん、相手の拳はそれから逃れようとする。わざと拳を離した坂田は、その拳の先――ひょろりと伸びた腕を掴んで引っ張った。坂田の目の前によろけて現れたのは、全身ライダースーツを着て、フルフェイスヘルメットをしている人物だった。間違っても、繁華街を歩く格好ではない。

「おらぁ!」

 相手がフルフェイスのヘルメットをかぶっているというのに、お構いなしで頭突きをかましてやる坂田。一般的に考えれば、人間の頭と強化プラスティック――勝つのは強化プラスティックなのであろうが、そのような常識は坂田には通用しなかった。
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