108 / 178
第二話 Q&A【事件編】
53
しおりを挟む
坂田が疑念を抱いたのは、まだ時代的には新しい掲示板の特徴だった。この掲示板というものは、基本的に自己申告なのである。例えば【アキト】なるネット上の名前を名乗るにしても、それは自己申告制となる。中には固定のハンドルネームを使用しないところもある。だから匿名性があるわけだ。ゆえに、別に【アキト】本人でなくとも、掲示板上で【アキト】と名乗ってしまえば、その書き込みは【アキト】に成り変わることが可能だ。
「そんな証拠はどこにもないじゃん。それに、もしそんなことができたとして、本物の【アキト】に見つかったらどうするの? 本物の【アキト】が騒ぎ出してしまうかもしれないのに」
時は当たり前のように流れ行くし、通り過ぎて行く人々は、まるで坂田達の存在など興味がないかのごとく素通りする。
「だから、その【アキト】がそもそも存在していなかったとしたら?」
舞香の唇が、やや赤みを失っているように見えた。それどころか小刻みに震えているようにも見える。正直なところ、自分の推測が正しいかは確証が持てぬが、少なくとも舞香を追い詰めていることだけは間違いなかった。言葉をすっかり失ってしまったようだから、舞香に代わってさらに追撃してやる坂田。
「その【アキト】の存在を巌鉄のおっさんが聞いたのは、あんたからだろ? もし、本当は被害者に付きまとっていた男なんていなかったら? 俺達が認識した時点で【アキト】はお前が演じていたとしたら?」
掲示板は匿名性が強いがゆえに、書き込んだ人物が特定しにくい。その特性を逆手に取れば、坂田がウリを希望する女性を演じたかのように、本人のキャラクターとは別のキャラクターを演じることが可能だ。そして、舞香が【アキト】を演じていたとすれば、坂田の推測に筋が通る。
「ただ、分からねぇこともあるんだ。もしそうだったとして、どうしてお前がそんなことをしなければならなかったのか。それでいて、どうしてわざわざ巌鉄のおっさんに、独自に事件を追うように仕向けたのか。話せる範囲で許してやるから、喋ってみろや」
舞香の行動には、不自然な点があるのだ。事件を混乱させるようなことをやっておきながら、巌鉄に助けを求めたりしている。もし、仮に全てが舞香の仕業だったとすれば、そこに整合性がないのだ。
「俺は別に犯人を警察に突きつけてやりてぇとか、犯罪者はどうしても許せねぇとか、一文の足しにもならない正義感は持ち合わせてねぇ。ただ、知りてぇんだよ。誰がなにを考えてこんなことをしてんのかよ……」
「そんな証拠はどこにもないじゃん。それに、もしそんなことができたとして、本物の【アキト】に見つかったらどうするの? 本物の【アキト】が騒ぎ出してしまうかもしれないのに」
時は当たり前のように流れ行くし、通り過ぎて行く人々は、まるで坂田達の存在など興味がないかのごとく素通りする。
「だから、その【アキト】がそもそも存在していなかったとしたら?」
舞香の唇が、やや赤みを失っているように見えた。それどころか小刻みに震えているようにも見える。正直なところ、自分の推測が正しいかは確証が持てぬが、少なくとも舞香を追い詰めていることだけは間違いなかった。言葉をすっかり失ってしまったようだから、舞香に代わってさらに追撃してやる坂田。
「その【アキト】の存在を巌鉄のおっさんが聞いたのは、あんたからだろ? もし、本当は被害者に付きまとっていた男なんていなかったら? 俺達が認識した時点で【アキト】はお前が演じていたとしたら?」
掲示板は匿名性が強いがゆえに、書き込んだ人物が特定しにくい。その特性を逆手に取れば、坂田がウリを希望する女性を演じたかのように、本人のキャラクターとは別のキャラクターを演じることが可能だ。そして、舞香が【アキト】を演じていたとすれば、坂田の推測に筋が通る。
「ただ、分からねぇこともあるんだ。もしそうだったとして、どうしてお前がそんなことをしなければならなかったのか。それでいて、どうしてわざわざ巌鉄のおっさんに、独自に事件を追うように仕向けたのか。話せる範囲で許してやるから、喋ってみろや」
舞香の行動には、不自然な点があるのだ。事件を混乱させるようなことをやっておきながら、巌鉄に助けを求めたりしている。もし、仮に全てが舞香の仕業だったとすれば、そこに整合性がないのだ。
「俺は別に犯人を警察に突きつけてやりてぇとか、犯罪者はどうしても許せねぇとか、一文の足しにもならない正義感は持ち合わせてねぇ。ただ、知りてぇんだよ。誰がなにを考えてこんなことをしてんのかよ……」
1
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる