ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

第二話 Ｑ&Ａ【事件編】

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　この状況、果たしてどう説明すべきなのだろうか。そもそも、倉科を呼んだところで、どうしてもらうのが最適なのか分からない。事件として公にしたいのであれば、倉科ではなく普通に応援を呼べば良かった。すなわち、倉科を呼んだ時点で、巌鉄の考えは決まっていた。

「ですが、だとしたら自分だけでは――」

　基本的に刑事が単独で行動することはない。ある程度組織立って動くのが普通だ。呼び出された時点で、何か事情があるだろうことは倉科だって分かっていただろう。

「あのな、少し言いにくいんだが……しばらく時間稼ぎをして欲しいんだ。このまま放っておけば、いずれは誰かが死体を発見することになる。そうなれば、当たり前だが警察にも通報が行くだろうし、そうなったら俺が独自で囮捜査したこともごまかせなくなる。いや、別に俺はどうなろうといいんだがな、一緒に動いていた連中に疑いがかかるのは避けたいんだ。１日、いや半日でもいい。時間を稼いで欲しいんだよ」

　自分でも言っていることがめちゃくちゃなのは分かっていた。しかしながら、今避けたいのは、事件がすぐさま発覚してしまうことだった。むろん、ならば巌鉄自身が事件の発覚を遅らせるために動けばいいわけだが、しかしそれだと例の事件を追いかけることができない。

「事件の発覚を遅らせる――ってことですか？」

　いくら巌鉄の頼みとはいえ、それを引き受けるかどうかは倉科次第である。こんな訳の分からないことを頼まれて、引き受けるほうが物好きだといえよう。

「あぁ、もちろんこんなことが公になったら、お前さんのキャリアに傷がつくことになる。いや、キャリアどころか、下手したら事件の被疑者として疑いまでかけられるかもしれない。だからな――そうだ。お前さんが選んでくれないか？」

　行き当たりばったりで、とりあえず倉科に助けを求めた巌鉄。こちらからの提案をしていく過程で、ふと思いついてしまう。倉科なら信頼ができる。ならば、自分の代わりとして捜査に乗り出してもらってもいいのではないか。

「俺が事件を追うために、現場で時間稼ぎをするか。それとも、俺が現場で時間稼ぎをしている間に、事件を追うかだ。囮捜査の責任は俺にあるから、お前さんは何も知らずに捜査を受け継いだことにすればいい。例の事件に関しては、捜査一課も動いているみたいだし、それに紛れて少しくらい単独行動をしても、そこまで問題にはならんだろう。そうだな。そのほうがいい」