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第二話 Q&A【事件編】

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「いきなりだと驚くだろうから、簡単にこれまでの経緯を説明しておく」

 ずっと駆け足というのも体力が削られるし、何よりも人の目を引いてしまう。嫌でも目立ってしまうのだ。ゆえに、駆け足をやめても不自然にならないように経緯を話し始めた。さすがに倉科も駆け足をやめて、巌鉄の言葉に耳を傾けてくれた。

「――というわけなんだ。やってることが違法ってことは百も承知だが、現在の情報量じゃ組織は動かせない。まぁ、よろしくない結果を招いたのは事実だが」

 全くの無関係者だった倉科を巻き込むのだ。包み隠さずに話すのが、せめてもの誠意であろう。なぜだか巌鉄に崇高なものを抱いている様子の倉科も、こんな話を聞かされて幻滅してしまったかもしれない。

「組織に縛られずに、下手をすれば懲戒だってあり得たのに、事件を解決するために――。さすがは先輩、刑事の鑑です!」

 しかしながら、それは巌鉄の杞憂に終わったらしい。倉科の反応はありがたいことなのであるが、キャリアとして彼の将来には、いささかの不安がある。頑なに正しいと思えることをしてきたのに、こうして生活安全課にいる人間もいるわけだし、気をつけて欲しいところだ。

「そう言ってもらえるのはありがたいが、俺はそんなに褒められた人間じゃねぇんだよ。ほどほどにしといてくれよ」

 倉科に悪影響を与えたくない。その一心でつぶやいた言葉だったが、逆に倉科からすれば自らを卑下するように聞こえてしまったらしい。

「そんなことありません! 組織に囚われずに行動できる人なんて、そうそういませんから」

 だからこうして、結果的に生活安全課の刑事をやってる。組織に必要なのはスタンドプレイができる有能な人間ではない。能力は平均的――いや、それ以下だとしても、組織の歯車になれる人間なのだ。

「俺はお前さんが思ってるような人間じゃねぇよ。警察って組織にいれば、いずれ嫌でも分かることだろうけどな」

 人の少ない通りに入る。おそらく、通行人がいたから話を控えていたのだろう。倉科が口を開いた。

「それはそうと――人が亡くなれてるんですよね?」

 その言葉は実に重たく、巌鉄の身勝手な行動が招いてしまった最悪の結果だ。それだけは紛うことなき事実であり、肝に命じねばならないだろう。

「あぁ、少し前に起きたホテルでの殺人事件――あれの被疑者だと思われる人物だ。ホテルにおびき寄せるまでは良かったが、色々とあってな」
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