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第二話 Q&A【事件編】

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 坂田が続けようとするのを遮るかのごとく、服を着た舞香が戻ってきた。まだいささか顔が白いような気がする。本当に彼女が犯人なのだろうか。

「お、調子はどうだ」

 なんとなく坂田との密談に引け目を感じていた巌鉄。舞香に対する反応も、自分で分かるほどぎこちなかった。

「うん、少しは落ち着いたと思う……」

 そう言いながら巌鉄へと向けてきた舞香の表情には、明らかな怯えが見てとれた。その怯えは、果たして何に対する怯えなのか。本当ならば懸念してやるべきことさえも、坂田が妙なことを言ってくれたおかげで、どうにもうがった見方をしてしまう。

「そうか。なら今日はとりあえず解散としよう。ここは俺に任せてくれていいから」

 まるで、舞香がいない間に、坂田と今度のことを協議したかのごとく、さりげなく嘘をつく。巌鉄1人がいたところでどうにもならないし、応援を呼ぶわけにもいかない。結果的にこのままにして現場を離れるしかないわけだが、それだと舞香が納得してくれないかもしれない。彼女の前ですでに協議を始めていた話ではあったが、しばらく離れていた彼女になら、充分に通用する嘘だと思った。

「このまま何もせずに帰ったりしない?」

 まるで心を見透かされているかのごとく問われる。巌鉄は内心で冷や汗をかいていたが、しかし一度簡単についてしまった嘘を撤回するわけにはいかない。彼女との信頼関係に関わってくる。

「あぁ、君が着替えている間に坂田と話し合ったんだよ。このままにしていても、遅かれ早かれ俺達が関わっていることが明らかになる。そうなってから俺に話を投げられても、俺にも立場的なものがあってな――。ここでうまい具合にしのぐことにしたんだ」

 これを何というか。口から出まかせという。しかしながら、極力彼女を納得させる形で、心残りなく現場を離れてもらうには、これくらいのことを言ったほうが良かった。

「そう。それじゃ後でまた連絡が欲しい。もつ少し落ち着けば、今よりも詳しい話ができるようになっていると思うから」

 男勝りの勝ち気な彼女は、すっかりとなりをひそめてしまっていた。彼女が進んでやってくれたとはいえ、やはり囮役は危険すぎたようだ。そもそも違法捜査であるし、もっと慎重になるべきだったと反省する。

「あぁ、分かった。坂田、悪いが彼女を送ってやってくれ」

「あ? なんで俺が?」

 巌鉄が放った言葉に被せるようにして返してくる坂田。

「お前、こういう時はスマートに送ってやるのが男ってもんだろ? さてはお前、モテないだろ?」

 この状況下において、場を和ませるための会心の冗談。坂田が無視をしてくれたおかげで、なんとも気まずい空気が漂った。
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