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第二話 Q&A【事件編】

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「おう、どうだ? とりあえずやることはやった――」

 この状況で坂田にかかってきた電話。相手が誰なのかは簡単に察しがついた。携帯電話は相手の携帯番号が登録でき、しかも着信があった時は、誰からの電話なのか分かるらしい。だから、相手が舞香であることも分かったのであろう。会話の文脈からしても、相手が舞香でまず間違いない。

「あ? はぁ? 何だって? 分かった。すぐに行く! 部屋番号だけ教えろ!」

 相手を茶化すような感じで電話に出た坂田であったが、みるみるうちにその表情が険しくなる。最終的に舌打ちをすると、乱暴に携帯をスカジャンのポケットに捩じ込んだ。

「おっさん、警察の力でよ、使用中のラブホの部屋に踏み込めたりしねぇか?」

 そう聞いてきた坂田は鬼気迫るものがあった。一体、何があったのか。なんとなく巌鉄が分かるのは、決して良くないことが起こったのであろうということだけ。

「警察は万能じゃねぇ。特に、ラブホテルなぞというデリケートな場所じゃ、誰だって簡単に踏み込めるもんじゃない。俺だったら令状があっても嫌だな」

 大体、巌鉄には警察組織を動かせるほどの権限がない。いいや、仮にそんな権限があったとしても、簡単にラブホテルの中には踏み込めないだろう。面倒かもしれないが、世の中にはさまざまなしがらみがあり、また暗黙のルールもある。警察が捜査に対する絶対的な権限を持っていたとしても、まずホテルの一室に踏み込むなんて馬鹿な真似はできない。

「となると、あんまりやりたくねぇけど仕方ねぇか。おっさん、尻拭いは任せたぜ」

 坂田は実に不穏な言葉を残すと、力強く地面を蹴った。状況を把握できているのは坂田のみ。まだ事情が飲み込めていない巌鉄は、とにもかくにも坂田に続くしかない。

 舞香達の入ったホテルは、各部屋に自動精算機があるタイプ。場所によってさまざまな形態ではあるが、入室から清算までが部屋の中で済んでしまうホテルというのは、基本的に管理人というものを置かない。これは、巌鉄の中に残っている古い記憶でしかないのだが、それが間違っていなければ、おそらく誰にも止められることなく、部屋の前までは向かうことができるだろう。ならば最初から部屋の前で待機しておけばいいという話になるのだが、囮という役割を舞香にお願いしている以上、扉を隔てた向こう側で、舞香があられもない姿になっているというのは耐えられなかった。単なる老婆心なのかもしれないが。
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