ジンクス【ZINKUSU】 ―エンジン エピソードゼロ―

第二話 Ｑ&Ａ【事件編】

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　外はもう薄暗くなりつつある。これからいよいよ夜が訪れ、まるで蛍光灯に虫が集まるかのごとく、人々はネオンの明かりの中へと飛び込んで行く。まさしく、舞香達もそうだった。それを見逃してしまわぬように追いかける巌鉄達。

　しばらく進むと、２人は人通りの少ない路地へと入る。この辺りは事前に調査済みだから、どんなところなのかは知っている。それこそ、坂田と巌鉄が２人で歩いているほうが不自然な場所。いわゆるラブホ街と呼ばれる場所だ。もっとも、オフィス街の飲食店周辺にあるホテルなど数軒であり、事前にどんなところがあるのかは調べてあった。

「俺の考えが正しければ、あいつらは【ホワイトコスモス】に入る。あそこは値段もリーズナブルだし、会計も室内の精算機で済むからな」

　坂田も事前のリサーチは済んでいるらしい。これはこれで心強い。

「坂田、どうやらお前の読みが当たったみたいだな。あいつら【ホワイトコスモス】に入っていくぞ」

　ホテルに入る寸前に、舞香がこちらのほうをちらりと見た。ここから先は残念ながら彼女任せとなり、巌鉄達が踏み込める領域ではない。

「それにしても、あの子は大した度胸だよな。かつての幼馴染のためとはいえ、自分の体を張ることまでするなんて。俺だったら真似できねぇよ」

　ホテルの中へと入る２人を見送ると、立て看板の後ろに隠れて煙草をくわえる巌鉄。世の中、徐々にお行儀が良くなっているが、まだくわえ煙草は当たり前。路上で立ち止まり、立て看板の後ろに隠れて煙草を吸うなんて素行が良いほうだ。

「まぁ、本人がやるって言ったんだ。どこまでやるつもりかは分からねぇが、犯人を炙り出すためなら仕方ねぁな。それに乗っかってる俺達は、あいつを信じてる待つしかねぇ」

　いくら舞香のことが心配だとしても、さすがに部屋の前まで行って待機するなんてことはできない。だから、こうして外で待機することしかできないわけだが、どうにも落ち着かない。

「なぁ、随分と遅くないか？」

　舞香達がホテルの中へと姿を消してから、実のところ、まだ10分も経っていない。しかしながら、どうにも気分が落ち着かないのだ。もっと簡単にいえば嫌な予感がする。

「10分じゃさすがに終わらねぇだろ。相手がどんだけ早漏なんだって話になるだろうが……」

　当たり前のように坂田も煙草に火を点ける。げんこつのひとつでもくれてやろうかと思ったが、今は目立つような真似はしたくないから我慢する。人通りは少ないが、まるでないというわけでもないから。

　いよいよ足元が煙草の吸い殻だらけになる頃になって、坂田のポケットから無機質な呼び出し音が鳴り響いた。まだ携帯電話の呼び出し音に慣れていないから、無機質に聞こえてしまうのかもしれない。