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第二話 Q&A【事件編】

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【4】

 時刻は平日の夕方。通りには少しずつ人が増えつつあった。

「いいか? 姿を現してすぐにとっ捕まえたところで、相手に言い逃れされて終わりだ。俺達が出ていくのは、相手が例の殺人犯だと確信できた時だ」

 電柱の陰に隠れる――という、昭和の刑事ドラマも裸足で逃げ出すような手段を使い、待ち合わせ場所で相手を待つ舞香を見張る。

 待ち合わせ場所に指定したのは、雨立街の外にあるオフィス街。さらにオフィス街の一角にある飲食店が集まるところにした。ここには、申し訳程度にホテルもあるが、そんなに軒数が多くない。巌鉄達が尾行しやすい立地だった。誘い込んだのは坂田であるが、中々に考えられた待ち合わせ場所だ。

「前も話したが、犯人が事前に犯行の準備をしている可能性はかなり高い。犯行に使う凶器なんかも持ち歩いていることだろう。まぁ、最初のコンタクトは致すことを致すだけなんだろうが、もし相手の荷物にそれらしきものがあれば、なんとでもなる。怪しげな荷物があったら、そのまま捕まえたほうがいいかもしれねぇな」

 電柱の陰から舞香のほうを眺めながら呟く坂田。舞香はいかにもそれっぽい格好。ミニスカートにチューブトップ、ヒールの高いミュールと露出もかなりのものだ。本人いわく、滅多にこのような格好をしないから加減が分からないとのこと。通り過ぎる男は大抵振り返るし、明らかに目立っている。件の【アキト】の心を掴むという意味では、舞香のファッションセンスは間違っていない。本人が長身で、目を引くスタイルということもあるのだろうが。

「とにかく、相手の出方を見ながら慎重にやるぞ。この手のやつは一度警戒されると面倒だ。下手を踏まないようにしないと、二度と接触できなくなるかもしれない」

 こちらが遠くから見ているのは、もちろん舞香も分かっている。時折、こちらのほうに彼女の視線が向けられるのも、不安のあらわれであろう。彼女の髪につけられた、薔薇を模した髪飾りが嫌でも目立つ。坂田が指示した目印だった。そのせいで、さらに舞香の格好が派手に見え、目立ってしまっている。人の目を引くのは結構なことだが、目立ちすぎてしまうと、相手が警戒して接触してこないという可能性もある。件の犯人はもう人を殺している。その負い目がある以上、警戒心も強くなっていることだろう。

「――どうやら来たみたいだぞ。ようやくお出ましだ」

 坂田の言葉に改めて舞香のほうに視線をやると、背の高い20代くらいの男が、舞香に声をかけているようだった。肩から大きめのショルダーバッグをかけている。
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