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第二話 Q&A【事件編】

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 坂田がスクロールする画面を改めて脇からのぞきこむと、確かに24時間どんな時でも【アキト】の書き込みは散見される。だからこそ、巌鉄は犯人が仕事をしていないのではないかと考えたのだが、どうやら坂田の見解は違うらしい。

「おそらく、犯人は不規則勤務の仕事をしてる。24時間ずっと掲示板にいるように見えるが、返信に対してのレスポンスには時間が空いてる時がある。これはきっと、返信があった時は仕事中で、レスポンスしたくともレスポンスできなかったのだと思われる」

 巌鉄の見解とはまるで逆の見解だった。たかだか掲示板への書き込み頻度。それこそ時間やら返信までの時間差から考察したにすぎないが、こうして犯人像を絞り込んでいくのがプロファイリングと呼ばれるものなのであろう。もちろん、プロファイリングそのものが統計学であるから、必ずしも毎回当てはまるというものではない。あくまでも捜査の補強材料にすぎない。

「とにかく、これだけ食いつきが良いってことは、もしかするとこの【アキト】で本当に当たりかもしれねぇなぁ」

 坂田はぽつりと漏らす。現状、あくまでも【アキト】は犯人の可能性がある人物というだけで、実際に犯人だとは限らない。ただ、被害者につきまとっていたことは間違いないようだが。

「後は実際に会ってみないことには――ね」

 舞香が呟くと、坂田がちらりと舞香のほうへと視線をやった。ここに到着するやいなや坂田が話を始めてしまったがゆえに、舞香と坂田は互いに相手のことを知らないまま話を進めてしまっている。坂田からすれば、囮役程度にしか思っていないのだろうが、せめて互いの名前くらい知っておくべきだろう。紹介するならこのタイミングしかない。

「坂田、こちら橋本舞香さん。この前の事件で殺害された加藤千秋さんの幼馴染で、囮役の話を快く引き受けてくれた方だ」

 舞香が会釈程度に頭を下げたにも関わらず、坂田は改めて横目でちらりと舞香を見ただけで「ふーん、物好きがいたもんだな」と、また携帯の画面に視線を落とした。気まずくなった空気をなんとかしようと、そのまま坂田のことも舞香に紹介してしまう。

「こいつは坂田仁っていう。まぁ、ちょっと変わっていて失礼なやつだが、こういった事件にはなぜか詳しくてな。今回協力してもらうことになった」

 誰もが避けて通るような人相に加えて、スカジャンを羽織るという格好もまたよろしくない。おそらく、彼が他人に与える第一印象というのは、そのほとんどが最悪だといえよう。
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