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第二話 Q&A【事件編】

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 巌鉄に煙草を奪われたからなのか、それともダシに使われたような気がして面白くないのか、こちらにも聞こえるように舌打ちをする坂田。例の事件以来しばらく会っていなかったが、どうやら元気らしい。

「……そう言えばよ、鐘のやつはどうなった? やっぱり死刑か?」

 舌打ちの後、やや寂しげな表情を見せる坂田。仲の良かった友人が猟奇殺人鬼であり、その友人が逮捕されたのだ。さすがの坂田でも気落ちするらしい。

「そんな簡単に刑は決まらねぇんだよ。まぁ、実刑は免れないだろうが、辛うじてまだ未成年だからな。いきなり死刑ってわけにはいかねぇだろ。殺してる人数が人数だから、いつ出て来れるかは分からないが、一生刑務所ってこともないだろう」

 坂田を元気づけてやる意味も込めたつもりだったが、どうやら巌鉄は坂田の性格というものを、いまいち掴み切れていなかったようだ。友人の刑が軽くなるであろうことを聞いた坂田は、先ほどよりも大きな舌打ちをした。

「あいつ、出てきたらまたやるぞ。残念ながら、あいつなら絶対にやる。更生なんてしねぇよ。ムショに入れるなら絶対に出さないほうがいい」

 その真剣かつ、凄みのある表情に、巌鉄は一瞬言葉を失った。何を根拠に言っているだろうか。巌鉄の心を読んだかのごとく、坂田はさらに続ける。

「世の中にはぶっ壊れた人間ってのが混じってるんだよ。そのぶっ壊れた人間には、他人の感情が分からない。自分が取った行動に対して、相手がどんなふうに感じるかなんて考えてもいねぇんだ。そもそも、自分以外の人間を人間扱いしない。良くて自分が都合良く生きるための道具としか考えていない――そんな生き物がよ、この世界には混じってるんだ。サイコパスっていうらしい」

 どう見てもインテリではないタイプなのに、たまに小難しいことを口にする坂田。その知識を一体どこから仕入れているのか知りたいものである。もちろんいきなり小難しい話をされても困る巌鉄は「学のない俺にも分かるように話せよ」と返す。

「同じ殺人にも、秩序と無秩序があるってことだ。例えば、相手が憎いから殺す――これは、妙な話になるが動機がしっかりとあって、そこに至るプロセスが健全だ。だが、中には動機なんてなくても人を殺すやつがいるんだよ。いや、正確には動機自体はあると言える。人を殺してみたかった……とか、目立ちたかった、とかな。鐘の場合は女の眼球に固執した結果、面識さえない女を殺すことになった。あいつの場合は、女の眼球が食いたかったから女を殺したのであって、その相手自体には殺害する動機がない。この、動機が外付け的な殺人は、ほぼサイコパスの仕業だと俺は思ってる」
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