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第二話 Q&A【事件編】

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 巌鉄は自分でもかなりいいところを突いたのではないかと思っていた。しかしながら、どうやら事情が多少異なるようだ。舞香は苦笑いを浮かべると「当たらずとも遠からずってところかな」と前置きをしてから続けた。

「あの子、実は今でも援交まがいのことをしててさ。働き始めたはいいけど、やっぱり高校の時に援交してたせいで金銭感覚がどこかおかしくて。仕事の給料じゃ全然足りなかったみたい」

 千秋の近況までは知らないが、高校時代に援交へと走ってしまった弊害が、更生されたと思われた現在まで尾を引いていたらしい。いや、同じ過ちを繰り返していたということは、更生できていなかったということか。そもそも、何をもってして更生したと言えるのか。独り立ちして、自分の力だけで生活できるようになった時だろうか。

「それで、足りない分は援交でか――もう高校生でもなんでもねぇから、売春って言ったほうがいいか。まぁ、援助交際も売春に変わりないんだが、呼び方をライトにするだけで印象が変わる。そのうち、売春までライトな呼ばれ方をしないだろうかと心配だよ」

 ようやく葬式が始まったのか、坊主の読経が聞こえ始めた。お経に合わせて叩かれる木魚の音。あれがなんだか間抜けなような聞こえるのは、多分巌鉄だけなのであろう。

「あぁ、すまん。話がそれたな」

 舞香が返答に困っているように見えた巌鉄は、ようやく自分の話が脱線しかけていることに気づき、進路の修正をした。舞香が口を開く。

「それで、最近知り合った客に気に入られちゃったみたいでさ。家の前で待ち伏せされたりしていたみたい」

 舞香の言葉に「家の前?」と、ほぼほぼ無意識に辺りを見回す。現在、巌鉄達がいるところこそ、家の前というやつだが、怪しげな人影は見当たらない。というか、葬儀が始まっても家の中に入れないでいるのは、巌鉄と舞香だけだった。

「あ、家の前っていっても、千秋が住んでたアパートの部屋の前ね。それと、職場にまで姿を現していたみたい」

 色恋沙汰からの付きまとい。それが発展して、最終的に殺人事件にまで発展したケースがある。最近になって世に認識されはじめたが、ストーカー殺人と呼ばれるものだ。

「それ、完全なストーカーってやつだな。現状、捜査が難しいケースでもある。まさか、そのストーカーが彼女を?」

 舞香はゆるく首を横に振った。

「断言はできないけど、千秋が付きまとわれていたのは事実だし、もしかすると、その男の仕業かもしれないって思って」
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