上 下
51 / 139
第一話 コレクター【エピローグ】

第一話 コレクター【エピローグ】1

しおりを挟む
【1】

 海岸線を走る大型のバイクは、それこそ楠野と共有していたものだった。記憶が正しければ、間違いなく楠野のほうが多く支払いをしているし、名義上は楠野のものになっていたはずだ。

 電車があるから不便はしないのだが、しかし満員電車は柄に合わない。かといって、車は場所をとるし、維持費も馬鹿にならない。様々な条件が揃った結果、一応共同でバイクを購入するということになったのは、果たしていつだったのか。気がつけば、楠野との付き合いも長くなったものだ。

 巌鉄にきつく言われたがゆえに、飾り程度のハーフヘルメットは被っている。これもまた楠野が使っていたものだった。巌鉄にばれたら間違いなく怒られるだろうが、坂田は滅多にヘルメットを被らない。あんなものは邪魔なものだとしか思っていなかった。

 楠野は新山が呼んでくれた警察官が対応してくれて、その場で逮捕ということになった。巌鉄がやればいいと思ったのだが、どうやら彼には逮捕権というものがないらしい。ちらっと聞いた話だと、かつて逮捕する直前の犯人を半殺しにしてしまい、捜査一課から追い出されたとか――。あまり詮索はしないでおいてやるが、巌鉄も巌鉄で警察の問題児なのだろう。一撃で楠野を床に沈めた巌鉄の姿は、今思い返しても笑える。まさか一発で決めるとは思わなかった。

「確か、この辺りって話だがなぁ」

 車が行き交う国道から脇道へとそれ、坂田を乗せたバイクは閑静な住宅街へと入った。バイクの排気音がうるさいくらい、静かなところだったが、もちろん坂田が気にかけるわけがない。

 坂田が探しているのは、ある女性だった。反対する巌鉄をなんとか説得し、警察の情報網をフル活用して探し出してもらった人物だ。その人物は、雨立街から離れた場所で暮らしているらしい。もちろん、何食わぬ顔でだ。

 この時代、ナビなんて便利なものはなかった。あったとしても、ごくごく一部の車が装備しているだけであり、誰でも手軽に道を調べることができ、案内通りに走らせれば目的地へと到着できるなんてのは、それこそSFレベルの話だった。

 バイクを降り、ポケットに突っ込んであった住宅地図を広げる。巌鉄が調べてくれた通りならば、この近くのアパートに、その女は住んでいるはずだ。インターネットがまだ未発達であり、調べる――という、ごく当たり前のことができない時代から考えると、人を1人探し出すというのは難儀だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

設計士 建山

如月 睦月
ミステリー
一級建築士 建山斗偉志(たてやま といし)小さいながらも事務所を構える彼のもとに、今日も変な依頼が迷い込む。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

黄昏の暁は密室に戯れるか

鬼霧宗作
ミステリー
【お詫び】 第10話の内容が、こちらの手違いにより怪文書となっておりました。すでに修正済みですので、いまちど10話からお読みいただくと幸いです。 申し訳ありませんでした。 これは、よくある物語。 ある空間に集められた8人の男女が、正体不明の殺人鬼に次々と殺害され、お互いに疑心暗鬼に陥っていく。 これは、よくある物語。 果たして犯人は誰なのか。 人が死ぬたびに与えられるヒントを頼りに、突きつけられた現実へと立ち向かうのであるが――。 その結末は果たして。 ルールその1 犯人は1人である。複数ということはない。 ルールその2 犯人は地下室の人間の中にいる。 ルールその3 犯人が解った人間は解答室で解答する。解答権は1人に付き一回。正解なら賞金一億。間違えた場合は死ぬ。 ルールその4 タイムリミットは48時間。タイムリミットまでに犯人を特定できない場合は全員死ぬ。 ルールその5 1人死ぬ度に真実に関するヒントを与える。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

処理中です...