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第一話 コレクター【解決編】

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 世の中ではマスコミが勝手に話を拡大解釈してくれている。現場に目玉が見つからないことから、犯人は目玉を戦利品として持ち帰り、それをコレクションしている――なんて勘違いを垂れ流してくれた。それは、捕まりたくない楠野からすれば、見えざるアシストのようなものだった。このまま世の中が勘違いを続けてくれれば、もう少し目玉を食い漁る余裕ができる。

 紫衣流の目玉は思った以上の極上品だった。しかし、何度か咀嚼しているうちに、奇妙な食感が混じっていることに気づいた。砂を喰んだ時のような歯触り。いや、砂よりも明確に大きな異物を噛んだ感覚があった。

 目玉の組織がひとつも口からこぼれないようにして、それを取り出した。バキバキに割れ曲がってしまっていたが、どうやらレンズのようなものらしかった。そのレンズがコンタクトレンズと呼ばれるものだと気づくのには多少の時間がかかった。単純に自分の周囲でコンタクトレンズをしている人間がいなかったからなのかもしれないが。

 これではせっかくの目玉が台無しだ。楠野はまだ口にしていなかった、もう片方の目玉から、コンタクトレンズを引き剥がすと、貴重な残りを存分に楽しんだ。もう、自分では止められなかった。欲望のままに目玉をむさぼり、そして次の獲物を求めたがる。すでに、紫衣流の目玉を食い終える頃には、次は誰を狙おうかとさえ考え始めていた。

 面倒なことが起きてしまったのは、この直後のことだ。犯行を終えた楠野は、坂田と同じように寝ていた体裁を保つため、狸寝入りをしていた。計画ではマスターが紫衣流の遺体を発見して事件が発覚。何食わぬ顔で、今起きたとばかりに、すっとぼけるつもりだった。しかし、ここで銀山が珍しく開店前に来店。帰ってこない紫衣流を探してやって来たのかどうかは知らないが、普段ならば訪れることがないような時間に、店へとやって来たのだ。もしかすると、虫の知らせみたいなものがあったのかもしれない。とにかく、店に銀山がやって来て、対応しようとしたマスターが遺体を発見し、そこからは銀山も混じって騒動した。少なくとも真相を知っていた楠野は、それに混じって演じていただけだが。

 幸いなことに、銀山は自分の手で犯人を捕まえることに躍起になり、警察への通報はしばらく待つようにとマスターに命じた。これは楠野にとって意外すぎる展開だった。銀山の発想は予想できたが、それにマスターが従うとは思わなかった。察するに、マスターもかなり動揺していたのであろう。

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