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第一話 コレクター【事件編】

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 坂田は笑みを浮かべると続ける。

「まぁ、あんまり事件には関係ないと思うけどなぁ――」

 警察の鑑識ですら取りこぼしてしまった洗浄機。たまたま紫衣流の忘れ物だったというだけで、事件にはあまり関与していないようだ。

「だったら、次にするべきことは、銀山とかいう奴に話を聞くことだな。お前達、連絡取れたりしないのか?」

 紫衣流を殺害したのは、限りなく紫衣流と親しい人間だ。それは間違いない。だからこそ、巌鉄は銀山から話を聞くべきだと思ったのであろう。

「――連絡は取れなくはない。ただ、ひとつだけ、はっきりさせておきたいことがあるんだよ」

 坂田はそう漏らすと、楠野と巌鉄の双方に問うかのごとく、宙へと疑問を放った。

「目ん玉をくり抜いた後、コレクターはどうやって目玉を持ち帰ってんだろうなぁ……」

 そもそも、コレクターという名称は、遺体から目玉がくり抜かれているという点から、マスコミが勝手に想像を膨らませてつけた名前だ。必ずしもコレクションのために持ち帰っているとは限らない。

「タッパー……は言い過ぎかもしれないが、何か保管できるようなものは必要だよな。だとしたら、できる限りコンパクトで、簡単に保管できるようなものが――」

 その時、巌鉄の言葉を遮るかのごとく、外から聞き覚えのある声が飛んできた。どうやら手間が省けたらしい。

「マスター! もしかして坂田かくまったりしてない? まぁ、なんにせよさ、ちょっと店で休ませてくれない?」

 銀山の声だった。もう、この店にいることを嗅ぎつけたらしい。多分、インターフォンも鳴らしているのだろうが、呼び出し音は店まで聞こえなかった。新山と顔を見合わせる巌鉄。

「ちょうどいい。事件について色々と聞かせてもらおう。マスター、開店前で申し訳ないが、もう少し使わせてもらうぞ」

「え、えぇ。構わないけど」

 銀山から話を訊くのはいいが、ここに坂田と楠野が同席してもいいのだろうか。そう考えた楠野は「俺達は厨房にでもいたほうが良くないか?」と坂田に提案する。坂田は首を横に振って不敵な笑みを浮かべた。正直、身内の楠野が見ても気味の悪い笑みだった。

「いいや、俺も銀山から訊きたいことがひとつだけある。そいつが確認できれば――多分、誰が犯人なのか分かるぜ」

「――坂田。まさか、お前分かったのか? 誰が犯人なのか」

 巌鉄の言葉に自信に満ちた表情で坂田は頷いた。その表情があまりにも人間らしくないというか、恐ろしいものに見えてしまった楠野は、思わず身震いした。
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