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第一話 コレクター【事件編】
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坂田と楠野はアイコンタクトを取る。別に口裏を合わせようとか、そういう意図はない。互いにどちらが口を開くべきか迷ったのだと思う。
「先に発見したのは鐘だよ。俺は後から叩き起こされた口だ。紫衣流は俺達が寝る前と同じ格好で寝てたんだが、声をかけても返事はねぇし、何よりも目玉が綺麗にくり抜かれていてな。死んでるのは誰が見ても明らかだった」
楠野は坂田の言葉に同意して頷く。巌鉄は相変わらず煙草を短いところまで吸いつつ「この場合、どっちが先に起きたとかは問題じゃねぇか。互いに寝てたってことは、どっちにも犯行は可能だからな」と漏らす。
「なに? 仁ちゃんと鐘ちゃんを疑っているわけ? 悪いけどね、仁ちゃんも鐘ちゃんも、あんな酷いことができるような人間じゃないわ! しかも、殺されたのはお友達だった紫衣流ちゃんよ!」
楠野達の交友関係までは、巌鉄だって把握していない。新山が庇ってくれるのはありがたいが、客観的に見て、紫衣流を殺害した人間として怪しくなるのは、やはり坂田と楠野ということになる。その状況と普段からの素行のせいで、坂田が銀山に追いかけ回されることになってしまったわけだ。
「ま、まぁ……形式的なものというか、状況から考えると、その可能性が高いというだけの話であって、俺だってこいつらが犯人だとは思いたくはない。ただ、そうだとしたら誰が?」
第三の事件については、これまでの事件と違って容疑者が極端に絞られてしまう。犯行が可能だったのは、状況から考えて新山、坂田、楠野だけだ。事件のことをあまり知らない人間でも、そう考えることだろう。
「誰かが密室だった店に侵入して紫衣流を殺した――そうとしか考えられませんね」
楠野の言葉に巌鉄は腕を組みつつ唸った。どうにも納得できないらしい。
「マスター。申し訳ないんだが、店のほうを少し見せてもらえないだろうか? ちょっと調べたいことがあるんだ」
巌鉄の申し出に「私は構わないけど……」と、坂田と楠野の間に視線を往復させる新山。すなわち、雨立街に戻ると、坂田達の身に危険が迫るのではないかと考えているようだ。
「心配いらねぇよ。さっき、このおっさんが銀山達を追い払ったんだ。雨立街から離れているより、このおっさんと一緒にいたほうが今は安全だ」
坂田が言うと「だから、おっさんは余計だって言ってるだろうが」と苦笑いを浮かべつつ立ち上がる巌鉄。
「先に発見したのは鐘だよ。俺は後から叩き起こされた口だ。紫衣流は俺達が寝る前と同じ格好で寝てたんだが、声をかけても返事はねぇし、何よりも目玉が綺麗にくり抜かれていてな。死んでるのは誰が見ても明らかだった」
楠野は坂田の言葉に同意して頷く。巌鉄は相変わらず煙草を短いところまで吸いつつ「この場合、どっちが先に起きたとかは問題じゃねぇか。互いに寝てたってことは、どっちにも犯行は可能だからな」と漏らす。
「なに? 仁ちゃんと鐘ちゃんを疑っているわけ? 悪いけどね、仁ちゃんも鐘ちゃんも、あんな酷いことができるような人間じゃないわ! しかも、殺されたのはお友達だった紫衣流ちゃんよ!」
楠野達の交友関係までは、巌鉄だって把握していない。新山が庇ってくれるのはありがたいが、客観的に見て、紫衣流を殺害した人間として怪しくなるのは、やはり坂田と楠野ということになる。その状況と普段からの素行のせいで、坂田が銀山に追いかけ回されることになってしまったわけだ。
「ま、まぁ……形式的なものというか、状況から考えると、その可能性が高いというだけの話であって、俺だってこいつらが犯人だとは思いたくはない。ただ、そうだとしたら誰が?」
第三の事件については、これまでの事件と違って容疑者が極端に絞られてしまう。犯行が可能だったのは、状況から考えて新山、坂田、楠野だけだ。事件のことをあまり知らない人間でも、そう考えることだろう。
「誰かが密室だった店に侵入して紫衣流を殺した――そうとしか考えられませんね」
楠野の言葉に巌鉄は腕を組みつつ唸った。どうにも納得できないらしい。
「マスター。申し訳ないんだが、店のほうを少し見せてもらえないだろうか? ちょっと調べたいことがあるんだ」
巌鉄の申し出に「私は構わないけど……」と、坂田と楠野の間に視線を往復させる新山。すなわち、雨立街に戻ると、坂田達の身に危険が迫るのではないかと考えているようだ。
「心配いらねぇよ。さっき、このおっさんが銀山達を追い払ったんだ。雨立街から離れているより、このおっさんと一緒にいたほうが今は安全だ」
坂田が言うと「だから、おっさんは余計だって言ってるだろうが」と苦笑いを浮かべつつ立ち上がる巌鉄。
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