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第一話 コレクター【事件編】
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さながら本当の取調べを受けているように感じた楠野は、自然と身構えてしまう。それを見られたのか坂田に「何ビビってんだよ?」とからかわれた。馬鹿にされては堪らない。楠野は口を開く。
「俺達は夜通し遊んだ後、店に寄りました」
楠野が口を開くと、そこに被せるようにして坂田が続く。
「まぁ、オールした後は、店で仮眠をとらせてもらうのが当たり前になってたんだよ。外は雨も降ってたし、マスターなら顔馴染みの俺達のことを邪険にはできないしな。で、鐘と2人で店に寄ったら、案の定マスターが店に入れてくれてよ。でも、先客がいたんだよ」
普段、夜通し遊んだあと、宿場代わりに【グラウンドゼロ】を使わせてもらうことがあった。あくまでも開店するまでの間だし、マスターに迷惑をかけないようにしていたつもりだ。昨日だって、いつもと変わらないはずだった。そう――先客がいる以外は。
「それが殺された穂積紫衣流ってことか――。彼女はなぜ1人で店に?」
巌鉄の問いかけに新山は苦笑いを浮かべる。
「まぁ、あの子……割と1人で飲みに出ちゃう子でね。散々飲んで、酔い潰れる直前くらいになると、うちに来るのよ。昨日も大分飲んでたみたいでね、店に入れたらすぐにカウンターで眠り出したのよ。で、その後に仁ちゃん達が来たわけ」
マスターの喋り方に慣れてしまったのか、新山とのやり取りにいちいち戸惑った様子を見せていた巌鉄も、今はスムーズにやり取りを続ける。
「なるほど――3人が店に集まったのはたまたまってことか」
短くなった煙草を灰皿の中に放り投げる巌鉄。また新たに煙草をくわえようとしたのであろうが、ソフトケースはくしゃくしゃになるだけで、巌鉄の欲求を満たせなかったらしい。無言で煙草を差し出すと「未成年から煙草を恵んでもらうとか――まぁ、いいか。悪いな」と巌鉄はケースから煙草を一本抜き取った。この場において、未成年の喫煙が合法的に認められた瞬間ともいえよう。もっとも、楠野と坂田にいたっては、あと数ヶ月もすれば成人なのだが。
「それで、お前達も店に着くなり寝ちまったのか?」
巌鉄からの問いかけに、自然と坂田と目が合った。
「あぁ、そもそも俺達はそれが目的で店に入れてもらったんだよ。まぁ、さすがに紫衣流のそばってのも気が引けたからよ。あいつからは離れたテーブルで寝たわ」
坂田の言葉に同意を込めて頷く楠野。巌鉄相手に生意気にならないように意識する。
「万が一、銀山から変な言いがかりをつけられたら堪ったもんじゃありませんから。かと言って、男同士でくっついて寝るのも妙な話です。俺は俺で、坂田とは別のテーブルに座って寝ましたよ」
「俺達は夜通し遊んだ後、店に寄りました」
楠野が口を開くと、そこに被せるようにして坂田が続く。
「まぁ、オールした後は、店で仮眠をとらせてもらうのが当たり前になってたんだよ。外は雨も降ってたし、マスターなら顔馴染みの俺達のことを邪険にはできないしな。で、鐘と2人で店に寄ったら、案の定マスターが店に入れてくれてよ。でも、先客がいたんだよ」
普段、夜通し遊んだあと、宿場代わりに【グラウンドゼロ】を使わせてもらうことがあった。あくまでも開店するまでの間だし、マスターに迷惑をかけないようにしていたつもりだ。昨日だって、いつもと変わらないはずだった。そう――先客がいる以外は。
「それが殺された穂積紫衣流ってことか――。彼女はなぜ1人で店に?」
巌鉄の問いかけに新山は苦笑いを浮かべる。
「まぁ、あの子……割と1人で飲みに出ちゃう子でね。散々飲んで、酔い潰れる直前くらいになると、うちに来るのよ。昨日も大分飲んでたみたいでね、店に入れたらすぐにカウンターで眠り出したのよ。で、その後に仁ちゃん達が来たわけ」
マスターの喋り方に慣れてしまったのか、新山とのやり取りにいちいち戸惑った様子を見せていた巌鉄も、今はスムーズにやり取りを続ける。
「なるほど――3人が店に集まったのはたまたまってことか」
短くなった煙草を灰皿の中に放り投げる巌鉄。また新たに煙草をくわえようとしたのであろうが、ソフトケースはくしゃくしゃになるだけで、巌鉄の欲求を満たせなかったらしい。無言で煙草を差し出すと「未成年から煙草を恵んでもらうとか――まぁ、いいか。悪いな」と巌鉄はケースから煙草を一本抜き取った。この場において、未成年の喫煙が合法的に認められた瞬間ともいえよう。もっとも、楠野と坂田にいたっては、あと数ヶ月もすれば成人なのだが。
「それで、お前達も店に着くなり寝ちまったのか?」
巌鉄からの問いかけに、自然と坂田と目が合った。
「あぁ、そもそも俺達はそれが目的で店に入れてもらったんだよ。まぁ、さすがに紫衣流のそばってのも気が引けたからよ。あいつからは離れたテーブルで寝たわ」
坂田の言葉に同意を込めて頷く楠野。巌鉄相手に生意気にならないように意識する。
「万が一、銀山から変な言いがかりをつけられたら堪ったもんじゃありませんから。かと言って、男同士でくっついて寝るのも妙な話です。俺は俺で、坂田とは別のテーブルに座って寝ましたよ」
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