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第一話 コレクター【事件編】
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「あんた、よくやってくれた! すっきりしたよ!」
「あぁいう連中は迷惑でしかないからね。前からこの店にも居座って迷惑していたんだ」
どのような事情で銀山達と揉めているのか。そんなことは店にいる他の客には分からない。ただ、以前から迷惑に思っていた連中――それが銀山達だかどうだかは不明だが、その連中を撃退したという事実だけが賞賛されたらしい。比較的、雨立街に近いファミレスだから、柄の悪い連中がたむろするのは目に見えている。
「――離れよう。ここで【グラウンドゼロ】のマスターに話を訊くにしても目立ちすぎる。それに、なんとなくだが居心地が悪い」
周囲に照れくさそうに頭を何度か下げた巌鉄。伝票を片手に立ち上がる。坂田と楠野長時間居座った分も含まれている伝票だ。
「さすが巌鉄のおっさん。ごちそうさん」
それを見た坂田も立ち上がり、楠野もつられて立ち上がった。
「お前らのことだから、下手すると食い逃げとかしそうだからな。そうなるくらいなら俺が払ったほうがマシだ」
周囲からは、賞賛というか、むしろ好奇の目が向けられていた。あの連中を撃退したのはどんな人達なのか、どんな会話をして、なんのためにここにいるのか。なるほど、適当な記事を載せる週刊誌が売れる世の中ということか。
「あ、すいません。俺達、これで失礼するんで」
さっさと歩き出した巌鉄と坂田に続いて、周囲にそう言いながら頭を下げる楠野。この状況で黙って店を出て行くというのも気が引けるのだが、巌鉄や坂田はなにも思わないのだろうか。
巌鉄が会計をしようとすると、店員が「お代は結構です」と、店側の誠意を見せてくれるが、しかし巌鉄も「そうはいかない」と軽く一悶着。結局、しっかりと会計をして店を出ることになった。店を後にする際、見送りの拍手が巻き起こったのは、それだけこの近辺の治安が悪い証拠なのであろう。
天気は曇りであったが、しかし外はじっとりと空気がまとわりつくように暑かった。いつ雨が降ってきてもおかしくないが、年を追うごとに梅雨時期が過ごしにくくなっているような気がする。
「さて、勢いで出てきたわけだが、どうする? もう一度【グラウンドゼロ】のマスターに連絡取れるか?」
坂田が【グラウンドゼロ】のマスターに連絡を入れているが、しかし集合場所は先ほどのファミレスに指定していたことだろう。また改めて連絡をしなければならないが、見渡す限り電話ボックスは見当たらない。ファミレスの中に引き返すのも変な話だ。
「あぁいう連中は迷惑でしかないからね。前からこの店にも居座って迷惑していたんだ」
どのような事情で銀山達と揉めているのか。そんなことは店にいる他の客には分からない。ただ、以前から迷惑に思っていた連中――それが銀山達だかどうだかは不明だが、その連中を撃退したという事実だけが賞賛されたらしい。比較的、雨立街に近いファミレスだから、柄の悪い連中がたむろするのは目に見えている。
「――離れよう。ここで【グラウンドゼロ】のマスターに話を訊くにしても目立ちすぎる。それに、なんとなくだが居心地が悪い」
周囲に照れくさそうに頭を何度か下げた巌鉄。伝票を片手に立ち上がる。坂田と楠野長時間居座った分も含まれている伝票だ。
「さすが巌鉄のおっさん。ごちそうさん」
それを見た坂田も立ち上がり、楠野もつられて立ち上がった。
「お前らのことだから、下手すると食い逃げとかしそうだからな。そうなるくらいなら俺が払ったほうがマシだ」
周囲からは、賞賛というか、むしろ好奇の目が向けられていた。あの連中を撃退したのはどんな人達なのか、どんな会話をして、なんのためにここにいるのか。なるほど、適当な記事を載せる週刊誌が売れる世の中ということか。
「あ、すいません。俺達、これで失礼するんで」
さっさと歩き出した巌鉄と坂田に続いて、周囲にそう言いながら頭を下げる楠野。この状況で黙って店を出て行くというのも気が引けるのだが、巌鉄や坂田はなにも思わないのだろうか。
巌鉄が会計をしようとすると、店員が「お代は結構です」と、店側の誠意を見せてくれるが、しかし巌鉄も「そうはいかない」と軽く一悶着。結局、しっかりと会計をして店を出ることになった。店を後にする際、見送りの拍手が巻き起こったのは、それだけこの近辺の治安が悪い証拠なのであろう。
天気は曇りであったが、しかし外はじっとりと空気がまとわりつくように暑かった。いつ雨が降ってきてもおかしくないが、年を追うごとに梅雨時期が過ごしにくくなっているような気がする。
「さて、勢いで出てきたわけだが、どうする? もう一度【グラウンドゼロ】のマスターに連絡取れるか?」
坂田が【グラウンドゼロ】のマスターに連絡を入れているが、しかし集合場所は先ほどのファミレスに指定していたことだろう。また改めて連絡をしなければならないが、見渡す限り電話ボックスは見当たらない。ファミレスの中に引き返すのも変な話だ。
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