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第一話 コレクター【事件編】
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しかし、ねじり放った拳は、がっしりと掴まれてしまった。拳を鷲掴みにして止めたのは銀山ではない。巌鉄だった。
「おっと、俺の目の前で喧嘩とか、ふざけたことしてくれんなよ?」
巌鉄は喧嘩を制裁したつもりでいるのかもしれないが、今の一撃を叩き込めなかったことは致命傷に等しい。
「おっさん。馬鹿な真似してくれたな。おかげさんで喧嘩で済んだかもしれねぇところが、下手すりゃリンチだ」
多分、巌鉄は知らない。銀山という男がどんな男なのかを。獅子はうさぎを狩るのに全力を尽くすというが、銀山はそれよりも酷い。ゴキブリ一匹を潰すためなら、群を率いて徹底的に潰そうとしてくる。それを象徴するかのごとく、楠野達のテーブルはあっという間に囲まれてしまう。
昼時のファミレスに、物騒な様相な連中が入ってきて、ひとつのテーブルを取り囲む。これほど気味の悪い光景はなく、他のお客達も騒ぎ始めた。店側の人間はどうしていいのか分からないようで、騒然とする店内を眺めるばかりだった。
「坂田ぁ、それに楠野ぉ。お前らはさ、どれだけ俺をおちょくれば気が済むんだぁ?」
テーブルを取り囲んだ人数は、銀山を含めてざっと10人程度。いや、もしかすると10人より少ないかもしれない。いくら腕っぷしに自信があっても、これだけの人数を相手に勝てる気はしない。まだ、初撃で銀山のボディーにお見舞いして、銀山がひるんだところを狙って逃げ出すほうが現実的だった。
「お取り込み中申し訳ないが警察の者だ。お前達の町で起きた事件のことを調べてる。喧嘩なんかしないで、俺に話を訊かせてくれないか?」
もはや一触触発。辛うじて睨み合いで保っている均衡。そこに巌鉄が提案するが、銀山は首を緩く降ると、坂田のことを指さした。
「あの事件の犯人はこいつ――坂田だよ。おっさん、警察の人間なら、まずこいつを逮捕しろよ。凶悪犯だぞ。凶悪犯」
銀山の言葉を受け、近くにいた取り巻きの男が巌鉄の側まで歩み寄る。
「おら、さっさと仕事しろよ。おっさん。銀山さんが捕まえろって言ってんだろ?」
そう言って手を巌鉄の頭に振り下ろすモーションを見せた男。きっと、巌鉄のことを小突こうと思ったのであろう。しかし、そこで巌鉄は予想外の行動を取った。男の手首を捕まえると、明らかに曲がってはいけない方向へと捻り出す。
「随分と舐められたもんだなぁ……。どうしてこうも日本の警察ってのは舐められるのか?」
「おっと、俺の目の前で喧嘩とか、ふざけたことしてくれんなよ?」
巌鉄は喧嘩を制裁したつもりでいるのかもしれないが、今の一撃を叩き込めなかったことは致命傷に等しい。
「おっさん。馬鹿な真似してくれたな。おかげさんで喧嘩で済んだかもしれねぇところが、下手すりゃリンチだ」
多分、巌鉄は知らない。銀山という男がどんな男なのかを。獅子はうさぎを狩るのに全力を尽くすというが、銀山はそれよりも酷い。ゴキブリ一匹を潰すためなら、群を率いて徹底的に潰そうとしてくる。それを象徴するかのごとく、楠野達のテーブルはあっという間に囲まれてしまう。
昼時のファミレスに、物騒な様相な連中が入ってきて、ひとつのテーブルを取り囲む。これほど気味の悪い光景はなく、他のお客達も騒ぎ始めた。店側の人間はどうしていいのか分からないようで、騒然とする店内を眺めるばかりだった。
「坂田ぁ、それに楠野ぉ。お前らはさ、どれだけ俺をおちょくれば気が済むんだぁ?」
テーブルを取り囲んだ人数は、銀山を含めてざっと10人程度。いや、もしかすると10人より少ないかもしれない。いくら腕っぷしに自信があっても、これだけの人数を相手に勝てる気はしない。まだ、初撃で銀山のボディーにお見舞いして、銀山がひるんだところを狙って逃げ出すほうが現実的だった。
「お取り込み中申し訳ないが警察の者だ。お前達の町で起きた事件のことを調べてる。喧嘩なんかしないで、俺に話を訊かせてくれないか?」
もはや一触触発。辛うじて睨み合いで保っている均衡。そこに巌鉄が提案するが、銀山は首を緩く降ると、坂田のことを指さした。
「あの事件の犯人はこいつ――坂田だよ。おっさん、警察の人間なら、まずこいつを逮捕しろよ。凶悪犯だぞ。凶悪犯」
銀山の言葉を受け、近くにいた取り巻きの男が巌鉄の側まで歩み寄る。
「おら、さっさと仕事しろよ。おっさん。銀山さんが捕まえろって言ってんだろ?」
そう言って手を巌鉄の頭に振り下ろすモーションを見せた男。きっと、巌鉄のことを小突こうと思ったのであろう。しかし、そこで巌鉄は予想外の行動を取った。男の手首を捕まえると、明らかに曲がってはいけない方向へと捻り出す。
「随分と舐められたもんだなぁ……。どうしてこうも日本の警察ってのは舐められるのか?」
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