上 下
22 / 139
第一話 コレクター【事件編】

15

しおりを挟む
「悪いことに憧れんのも一時的なもんで、はたから見ればダセェってことだろ?」

 巌鉄が代弁するかのごとく言うと、坂田は満足がに頷いた。

「分かってるじゃねぇか。煙草、酒、薬――後、集団の暴走行為か。あんなのだって、はたから見たらダセェだけだろ? 煙草、酒、薬はどれも依存しているだけだし、暴走行為のどこがイケてんだ? 人様に迷惑をかけてるだけじゃねぇか」

 坂田の熱弁を巌鉄が鼻で笑い飛ばした。

「そう言ってる手前で、堂々と煙草を吸われてもなぁ。それに、お前だって何度も傷害でしょっぴかれてるだろうが。説得力がねぇんだよ」

 坂田が煙を吐き出してながら「うるせぇ、おっさんが」と言い放った直後のことだった。坂田が急にテーブルのかげに身を隠す。

「鐘、テーブルの下に隠れろ。銀山達だ――」

 言われるままにテーブルのかげに隠れるが、どこに銀山の姿を見たのだろうか。通りを映す窓ガラス越しであれば、まだなんとかなりそうだが、もし店内に入っているとなると面倒だ。

 何やら店の入り口で店員と客らしき相手が揉めているような声が聞こえる。満席だから席が空くまで待ってくれと訴える店側と、とりあえず店の中に入れろという客。客のほうの声には聞き覚えがある。間違いない。銀山だ。

「巌鉄のおっさん。銀山に見つかると面倒だからよ、適当にあしらってくれ」

 適当にあしらえと言われても、テーブルのかげに坂田と楠野が隠れているのは明白だ。他のテーブルの客から、あいつらは何をやっているのか――という視線すら向けられている。

 店の入り口側で客が激昂し、とうとう店員の制止を振り切って店内に入ってきたらしい。おそらく、外から楠野達の姿を見つけたのであろう。店に入ってくるなり、荒々しい足音が近づいてくる。

「適当にあしらう? いやいや、事件の参考人だろ? ちゃんと話を訊かせてもらわないとな」

 足音は当然のように楠野達のテーブルの前までやって来て止まった。テーブルのかげからも見える見慣れたスニーカー。間違いなく銀山のものだった。

「見つけたぜぇ、坂田ちゃーん。こんなところで昼飯とは、いい度胸だなぁ」

 先にテーブルのかげから姿を見せていたのだろう。坂田のほうに向かって銀山から言葉が投げかけられる。自分ばかり隠れているような形になっていることを察した楠野は、大人しく体を起こした。と同時に上半身をひねり、銀山の横っ腹にボディーブロウをくらわせた――つもりだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

黄昏の暁は密室に戯れるか

鬼霧宗作
ミステリー
【お詫び】 第10話の内容が、こちらの手違いにより怪文書となっておりました。すでに修正済みですので、いまちど10話からお読みいただくと幸いです。 申し訳ありませんでした。 これは、よくある物語。 ある空間に集められた8人の男女が、正体不明の殺人鬼に次々と殺害され、お互いに疑心暗鬼に陥っていく。 これは、よくある物語。 果たして犯人は誰なのか。 人が死ぬたびに与えられるヒントを頼りに、突きつけられた現実へと立ち向かうのであるが――。 その結末は果たして。 ルールその1 犯人は1人である。複数ということはない。 ルールその2 犯人は地下室の人間の中にいる。 ルールその3 犯人が解った人間は解答室で解答する。解答権は1人に付き一回。正解なら賞金一億。間違えた場合は死ぬ。 ルールその4 タイムリミットは48時間。タイムリミットまでに犯人を特定できない場合は全員死ぬ。 ルールその5 1人死ぬ度に真実に関するヒントを与える。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話

赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。 前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜アソコ編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとエッチなショートショートつめあわせ♡

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

お悔やみ様は悪鬼に祟る

鬼霧宗作
ミステリー
【作品紹介】  たっちん、かぁこ、しょーやん、さおりん――。この四人は幼い頃からずっと一緒の超腐れ縁だった。  このまま腐れ縁がどこまで続くものなのか……。そんなことを考えながらも、たっちんこと葛西匡は高校生活最後の一年をかみしめるように過ごしていた。  ――さおりんが死んだ。  日本のいたるところで梅雨入りが宣言された寝苦しい夜のこと。幼馴染の一人である浦沢沙織――さおりんが首を吊って自殺した。  しめやかに行われる葬儀に参列し、悲しみも明けぬ間に、今度は練習試合へと向かっていた野球部のバスが崖から転落して、多くの生徒が命を落とす惨事が起きてしまう。  これは偶然か、それとも必然か。日常を壊す連続的な死、三年一組全員の携帯電話へと一斉に届いたメール。  送信主は――死んだはずの沙織だった。  三年一組に降りかかる死の連鎖と、町に土着した【お悔やみ様】なるオカルト話。  ロジカルとオカルト。これらは連続殺人事件なのか、それとも死者に成り代わるといわれる【お悔やみ様】の祟りなのか。  向こう見ずなヤンキーのしょーやん、誰もが認める天然娘のかぁこ、そして超現実主義のたっちんの三人組は、幼馴染にかけれらた不名誉を挽回するため、独自に調査を始めることになる。その先に待っている結末とは――。  ――お悔やみ様は悪鬼に祟る。 ※次回作との兼ね合いにより、ジャンルをホラーからミステリーに変更させて頂きました。

処理中です...