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第一話 コレクター【事件編】
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無理矢理に話を元の路線に戻す。ここしばらくで立て続けに起きている殺人事件。これ以上、犠牲者が増えなければいいが。
「えっと、3人目の犠牲者となったのは穂積紫衣流 年齢は19歳――」
「穂積紫衣流って――やっぱり、あの紫衣流なのか」
捜査会議の時点で、一通り被害者の名前は並べ立てられていたはずだった。しかし、きっと巌鉄は聞かなかったふりをしたのである。その事実は巌鉄からすると、簡単に受け止めることができなかったから。
「あの、知ってる方なんですか?」
「あぁ、あの街にはいくつか不良共のグループがあってな。仕事柄、顔見知りが何人かいるんだよ。特にその子が所属していたグループってのは、最近になってできた割に、雨立街じゃ大規模なグループでな。まぁ、人数が多いだけで、お世辞にも統率が取れてるとは言えないが」
雨立街ほど治安の悪い場所には、居場所のない若い連中を惹きつける何かがある。言葉では上手く例えることができないが、そういう磁場になっているのである。
「その紫衣流って子は、そのグループのヘッドの女だったはずだ。本人はそこまで悪さはしねぇが、万引きで何度かしょっぴいた記憶がある。手グセは悪いけど、素直な子だったんだがなぁ」
他の連中に比べれば――という一言がそこに続くのであるが、あえてそこは言わなかった。巌鉄からのせめてもの手向だ。
「それで、彼女が見つかったのは?」
「遺体が見つかったのは昨日。例の【グラウンドゼロ】の店中だったみたいです。昨日遅くに匿名の通報があり、警察官か現場に向かった結果、遺体を発見しました。こちらも腹部を鋭利なものでひと突き。これが致命傷となり、ガイシャは出血多量で死亡。もちろん、両目ともくり抜かれています」
またしても出てきた【グラウンドゼロ】という名前。3人目の事件にも関与しているかもしれないとなると、いよいよマスターが怪しくなってくるのではないか。
「第一発見者は? 今回も【グラウンドゼロ】のマスターなのか?」
第一、第二の事件と、共通して遺体の第一発見者となっているのは【グラウンドゼロ】のマスター。事件が雨立街で起きているとはいえ、あまりにも偶然がすぎる。しかも、第三の事件は【グラウンドゼロ】そのものが現場となっているようだ。
「いえ、今回は違うみたいなんです。通報者が匿名ですからなんとも言えませんが、遺体を見つけたのは坂田仁という人物のようです」
その名前が出た途端。持病でもなんでもないのに偏頭痛が発症。大きく溜め息を漏らした。
「あの馬鹿……」
「えっと、3人目の犠牲者となったのは穂積紫衣流 年齢は19歳――」
「穂積紫衣流って――やっぱり、あの紫衣流なのか」
捜査会議の時点で、一通り被害者の名前は並べ立てられていたはずだった。しかし、きっと巌鉄は聞かなかったふりをしたのである。その事実は巌鉄からすると、簡単に受け止めることができなかったから。
「あの、知ってる方なんですか?」
「あぁ、あの街にはいくつか不良共のグループがあってな。仕事柄、顔見知りが何人かいるんだよ。特にその子が所属していたグループってのは、最近になってできた割に、雨立街じゃ大規模なグループでな。まぁ、人数が多いだけで、お世辞にも統率が取れてるとは言えないが」
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「その紫衣流って子は、そのグループのヘッドの女だったはずだ。本人はそこまで悪さはしねぇが、万引きで何度かしょっぴいた記憶がある。手グセは悪いけど、素直な子だったんだがなぁ」
他の連中に比べれば――という一言がそこに続くのであるが、あえてそこは言わなかった。巌鉄からのせめてもの手向だ。
「それで、彼女が見つかったのは?」
「遺体が見つかったのは昨日。例の【グラウンドゼロ】の店中だったみたいです。昨日遅くに匿名の通報があり、警察官か現場に向かった結果、遺体を発見しました。こちらも腹部を鋭利なものでひと突き。これが致命傷となり、ガイシャは出血多量で死亡。もちろん、両目ともくり抜かれています」
またしても出てきた【グラウンドゼロ】という名前。3人目の事件にも関与しているかもしれないとなると、いよいよマスターが怪しくなってくるのではないか。
「第一発見者は? 今回も【グラウンドゼロ】のマスターなのか?」
第一、第二の事件と、共通して遺体の第一発見者となっているのは【グラウンドゼロ】のマスター。事件が雨立街で起きているとはいえ、あまりにも偶然がすぎる。しかも、第三の事件は【グラウンドゼロ】そのものが現場となっているようだ。
「いえ、今回は違うみたいなんです。通報者が匿名ですからなんとも言えませんが、遺体を見つけたのは坂田仁という人物のようです」
その名前が出た途端。持病でもなんでもないのに偏頭痛が発症。大きく溜め息を漏らした。
「あの馬鹿……」
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