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第一話 コレクター【プロローグ】
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壁を蹴って飛ぶと、楠野が伸ばした手を掴む坂田。銀山を筆頭として、坂田の間近に追っ手が迫る。
「じゃあ誰が殺ったってんだよ!」
楠野の手を掴むと、反動を利用して壁を蹴り、さらに高く飛ぶ。引き上げる役割のはずの楠野が、やや坂田に振り回されるような形だ。坂田の意外な動きに翻弄された様子を見せながらも、その手は離さない楠野。銀山の言葉に対して首を傾げた。
「さぁ……誰なんでしょうね? でもまぁ、疑わしきは罰せずというか、勝手に坂田を悪者にして潰そうってのはよろしくないかと」
楠野が手引きをしてくれたおかげで、高い塀を飛び越えることができた坂田。塀の向こう側には、またしても入り組んだ路地裏が広がっている。ただ、回り込むにも時間がかかるから、実質的に危機を脱したことにはなるだろう。塀から眺める連中の姿は、まるでゾンビ映画で生きた人間に群がろうとするゾンビのようだった。
「くそっ! お前ら俺に楯突いたらどうなるのか分かってんだろうなぁ! 楠野、お前――俺を裏切んのか!」
銀山の脅し文句に楠野は小さく溜め息をついた。
「銀山さん。最近のあんた、ダサいですよ。前はもうちょっとイケてたのに。まぁ、勝手にこの界隈に入り込んだくせに、仲間引き連れて坂田のことを邪険にしてた時点で、どうかとは思ってましたけど」
楠野はそう言うと、中指を立ててみせた。
「これが俺の答えですよ。銀山さん。あんた、人の上に立てる器じゃないよ」
大勢の人間を引き連れていた銀山からすれば、これほどまでにプライドを揺さぶられる言葉はないだろう。
「楠野ぉぉ! てめぇぇぇぇぇ!」
銀山が顔を真っ赤にしたところで、聞き慣れたサイレン音が聞こえる。それは赤色灯を伴って街に近づいてきた。
「――俺が呼んだんだよ。どうせあいつらことだから、紫衣流ちゃんの件、警察に通報してねぇだろ? そこまで頭が回らねぇだろうし」
そう言うと塀から飛び降りる楠野。坂田も無言で銀山に対して中指を立ててやると、楠野に続いた。
「じきにこの辺りもサツだらけになる。これで、しばらくあいつらも自由に身動きはできなくなるだろうよ」
残酷な形で銀山の女が殺された。一般的な発想であれば、すぐにでも警察に通報するようなものだが、銀山達はむしろ警察のことを毛嫌いしているから、通報するという発想自体がなかったことだろう。
「……まぁ、サツもあてにできねぇがな」
警察に対する印象がよろしくないのは坂田も同じだった。だから警察に全てを任せてはおけない。いいや、正直なところ腹が立っていた。別に銀山の女と親しかったわけではないし、仲間意識があったからでもない。ただ純粋に、自分が疑われたという事実に対して腹が立っていた。
「じゃあ誰が殺ったってんだよ!」
楠野の手を掴むと、反動を利用して壁を蹴り、さらに高く飛ぶ。引き上げる役割のはずの楠野が、やや坂田に振り回されるような形だ。坂田の意外な動きに翻弄された様子を見せながらも、その手は離さない楠野。銀山の言葉に対して首を傾げた。
「さぁ……誰なんでしょうね? でもまぁ、疑わしきは罰せずというか、勝手に坂田を悪者にして潰そうってのはよろしくないかと」
楠野が手引きをしてくれたおかげで、高い塀を飛び越えることができた坂田。塀の向こう側には、またしても入り組んだ路地裏が広がっている。ただ、回り込むにも時間がかかるから、実質的に危機を脱したことにはなるだろう。塀から眺める連中の姿は、まるでゾンビ映画で生きた人間に群がろうとするゾンビのようだった。
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「銀山さん。最近のあんた、ダサいですよ。前はもうちょっとイケてたのに。まぁ、勝手にこの界隈に入り込んだくせに、仲間引き連れて坂田のことを邪険にしてた時点で、どうかとは思ってましたけど」
楠野はそう言うと、中指を立ててみせた。
「これが俺の答えですよ。銀山さん。あんた、人の上に立てる器じゃないよ」
大勢の人間を引き連れていた銀山からすれば、これほどまでにプライドを揺さぶられる言葉はないだろう。
「楠野ぉぉ! てめぇぇぇぇぇ!」
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「――俺が呼んだんだよ。どうせあいつらことだから、紫衣流ちゃんの件、警察に通報してねぇだろ? そこまで頭が回らねぇだろうし」
そう言うと塀から飛び降りる楠野。坂田も無言で銀山に対して中指を立ててやると、楠野に続いた。
「じきにこの辺りもサツだらけになる。これで、しばらくあいつらも自由に身動きはできなくなるだろうよ」
残酷な形で銀山の女が殺された。一般的な発想であれば、すぐにでも警察に通報するようなものだが、銀山達はむしろ警察のことを毛嫌いしているから、通報するという発想自体がなかったことだろう。
「……まぁ、サツもあてにできねぇがな」
警察に対する印象がよろしくないのは坂田も同じだった。だから警察に全てを任せてはおけない。いいや、正直なところ腹が立っていた。別に銀山の女と親しかったわけではないし、仲間意識があったからでもない。ただ純粋に、自分が疑われたという事実に対して腹が立っていた。
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