131 / 136
第二章
六十九話
しおりを挟む
――異界の湖の向こう側。
そこは召喚獣や契約獣になる存在たちが住む世界。ロセウスやアルブス、アーテルらが住んでいた場所だ。どういった場所なのか。行ったことがないから、ロセウスたちに聞く話から想像することしかできないが、ここよりもさらにファンタジーな世界のようだ。
「生まれ変わり……」
「ありえない話じゃない。だって僕もこうして生まれ変わったんだから。この世界の端から端までずっと旅をしてきた。それでもリリーは見つからなかった。だったらこの世界にリリーはもういないんじゃないか。そう思ったんだ」
クライシスの話は非現実的に見えて、その実そうでもない。クライシスはこの世界に転生を果たし、鈴もベルへと生まれ変わった。実例が二つもあるのだから、その可能性を信じてしまうのも無理はない。ベルだって、もし大切な三人が命を落としてしまうようなことがあれば、その可能性へ真っ先に辿り着くだろう。
「けれど異界の湖には番人がいる。番人の目を盗んで向こう側へはいけない。だからこうして番人を倒して向こう側に行こうと思ったんだ。でも君たちにこの計画を気づかれたらその時点で失敗となる。だから君に毒を盛って、異界の湖から注意を逸らしたんだ」
たしかにクライシスの目論見通り、ベルたちの意識は王都に持っていかれていた。ヴァイオレットやムースがいなければ、異界の湖にクライシスがいることに気づきもしなかっただろう。
事情を把握し、ベルは気持ちを落ち着かせるために深呼吸を一つする。
「ねぇ、クライシス。こうしてリーディルの無事を確認できた今、貴方はもう誰にも刃を向けないと誓える?」
「リリーが僕の隣にいてくれるのなら」
「そう、わかった。なら私は貴方のために協力をするよ」
「……あっそう」
つっけんどうな返事なのは、恥ずかしからなのか、素なのか。
それでもベルからの協力を拒まなかったのは、確実な前進である。
「日本でのことは、私はもう気にしていない。だからクライシスは反省や償いもをしなくてもいい。けれどここでクライシスがしたことは別。それくらいは分かるよね?」
クライシスがいくら子どものような性格をしていたとしても、ベルよりも数百年も前にこの世界に転生を果たしたのだ。数百年も人生の先輩なのだから、分かってもらわなければ困る。
「まあ、それくらいは」
分かってくれなかったら、と少し心配をしていたのだが、どうやら大丈夫なようだ。内心息をつき、なら、と話を続ける。
「反省をして、償いをしてほしい。出来るよね?」
ロゼリアで遊んだこと。
ベルに毒を盛ったこと。
そして自分本位な考えてヴィータに危害を加えたこと。
細かなことをあげたらキリが無くなるので、この三点のみに絞ることにする。
「…………わかった。でも償いってどうすればいいんだよ」
そこは自分で考えて、と口にしようとしたが、その言葉を直前で飲み込む。本来なら自分で考え行動を起こすことこそ自分のためになるのだが、今回ばかりはそこまで悠長なことを言ってられない。
(リーディルに会えなかったってまた暴れられても困るし)
それに好転するかも、と先に口にしたのはベル自身だ。自身で考え行動する云々は後々リーディルに任せるしかない。リーディルもクライシスのために体を張っているのだ。それくらいは何も言わなくても、請け負ってくれるだろう。
「まずは反省。これは私が言わなくてもわかるよね?」
「まあ大体は」
「なら今のところはよし……とする」
(していいのかはわからないけど)
心の中で自身にツッコミを入れつつ、償いの話にいく。
「クライシスがこれから行うことは幾つかある。まず一つ目はロゼリアたちに謝ること。大体ではあれど、反省をしているのであればできるよね。そして二つ目はこの場所の修復。自分で壊したんだからこれくらいは当然。そして最後に――」
ベルが最後に示した言葉に、クライシスだけでなくロセウスたちも驚きの声と反対の声をあげた。しかしそのことについては元々覚悟していたので、総無視を決め込む。肝心なのはクライシスの気持ちだ。
クライシスは数十秒間を空けたのち、了承を示した。
そこは召喚獣や契約獣になる存在たちが住む世界。ロセウスやアルブス、アーテルらが住んでいた場所だ。どういった場所なのか。行ったことがないから、ロセウスたちに聞く話から想像することしかできないが、ここよりもさらにファンタジーな世界のようだ。
「生まれ変わり……」
「ありえない話じゃない。だって僕もこうして生まれ変わったんだから。この世界の端から端までずっと旅をしてきた。それでもリリーは見つからなかった。だったらこの世界にリリーはもういないんじゃないか。そう思ったんだ」
クライシスの話は非現実的に見えて、その実そうでもない。クライシスはこの世界に転生を果たし、鈴もベルへと生まれ変わった。実例が二つもあるのだから、その可能性を信じてしまうのも無理はない。ベルだって、もし大切な三人が命を落としてしまうようなことがあれば、その可能性へ真っ先に辿り着くだろう。
「けれど異界の湖には番人がいる。番人の目を盗んで向こう側へはいけない。だからこうして番人を倒して向こう側に行こうと思ったんだ。でも君たちにこの計画を気づかれたらその時点で失敗となる。だから君に毒を盛って、異界の湖から注意を逸らしたんだ」
たしかにクライシスの目論見通り、ベルたちの意識は王都に持っていかれていた。ヴァイオレットやムースがいなければ、異界の湖にクライシスがいることに気づきもしなかっただろう。
事情を把握し、ベルは気持ちを落ち着かせるために深呼吸を一つする。
「ねぇ、クライシス。こうしてリーディルの無事を確認できた今、貴方はもう誰にも刃を向けないと誓える?」
「リリーが僕の隣にいてくれるのなら」
「そう、わかった。なら私は貴方のために協力をするよ」
「……あっそう」
つっけんどうな返事なのは、恥ずかしからなのか、素なのか。
それでもベルからの協力を拒まなかったのは、確実な前進である。
「日本でのことは、私はもう気にしていない。だからクライシスは反省や償いもをしなくてもいい。けれどここでクライシスがしたことは別。それくらいは分かるよね?」
クライシスがいくら子どものような性格をしていたとしても、ベルよりも数百年も前にこの世界に転生を果たしたのだ。数百年も人生の先輩なのだから、分かってもらわなければ困る。
「まあ、それくらいは」
分かってくれなかったら、と少し心配をしていたのだが、どうやら大丈夫なようだ。内心息をつき、なら、と話を続ける。
「反省をして、償いをしてほしい。出来るよね?」
ロゼリアで遊んだこと。
ベルに毒を盛ったこと。
そして自分本位な考えてヴィータに危害を加えたこと。
細かなことをあげたらキリが無くなるので、この三点のみに絞ることにする。
「…………わかった。でも償いってどうすればいいんだよ」
そこは自分で考えて、と口にしようとしたが、その言葉を直前で飲み込む。本来なら自分で考え行動を起こすことこそ自分のためになるのだが、今回ばかりはそこまで悠長なことを言ってられない。
(リーディルに会えなかったってまた暴れられても困るし)
それに好転するかも、と先に口にしたのはベル自身だ。自身で考え行動する云々は後々リーディルに任せるしかない。リーディルもクライシスのために体を張っているのだ。それくらいは何も言わなくても、請け負ってくれるだろう。
「まずは反省。これは私が言わなくてもわかるよね?」
「まあ大体は」
「なら今のところはよし……とする」
(していいのかはわからないけど)
心の中で自身にツッコミを入れつつ、償いの話にいく。
「クライシスがこれから行うことは幾つかある。まず一つ目はロゼリアたちに謝ること。大体ではあれど、反省をしているのであればできるよね。そして二つ目はこの場所の修復。自分で壊したんだからこれくらいは当然。そして最後に――」
ベルが最後に示した言葉に、クライシスだけでなくロセウスたちも驚きの声と反対の声をあげた。しかしそのことについては元々覚悟していたので、総無視を決め込む。肝心なのはクライシスの気持ちだ。
クライシスは数十秒間を空けたのち、了承を示した。
0
あなたにおすすめの小説
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる