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第二章
六十一話
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リーディルの提案に納得し、ここはこうした方がいいじゃないかと話し合いをした上で、ベルたちは作戦を実行することにした。しかし作戦を実行するには、ここまで来るのに邪魔をした幻惑魔法と結界魔法をどうにかしなければならない。それを説明すると、リーディルが無効化の魔法をかけてくれた。
これは本来リーディルが使える魔法ではない、ヴィータの魔法らしい。それをなぜリーディルが使えるかといえば、ヴィータから異界の湖の代理を頼まれる際に、無効化の魔法などを一度だけ行使できる魔法をかけてもらったかららしい。異界の番人は誰にでも務められる役割ではない。ヴィータだからこそ、務められる役割なのだ。その役割を代理で誰かにしてもらうためには、信頼できる者がこういった非常事態に対応できる魔法を使えるようにしなければならない。そのため、前回ヴィータが異界の湖を離れてベルたちの元へ来た時も、この魔法をかけてもらったらしい。
「これで、森全体にかけられた幻惑魔法と結界魔法が効かなくなっているはずです。……どうですか?」
ただ、無効化の魔法を使用するのは初めてらしく、リーディル自身も不安なところがあるようだ。
トトーの歌魔法は異界の湖に到着した時点で解いてもらっているため、まだ継続してロセウスにかけてもらっている結界魔法だけ解いてもらう。
「……何かに阻害されている感覚も、惑わされている感覚もないし、大丈夫だと思う」
先程までは、結界魔法と歌魔法に守られていても、どこか違和感を感じずにはいられずにいた。
しかし今は違う。
いつも通りの感覚が戻ってきたように思える。
それはベルだけでなく、他の者たちも同じようだったようで、各々大丈夫だと頷いていた。
「よかったです。私はここから離れることができないので、これくらいしかできませんが……。どうか、クライシスをよろしくお願いいたします」
「うん、任せて」
深く頭を下げるリーディルに声をかけ、異界の湖に背を向けた。
リーディルに魔法を無効化してもらった今、ベルたちが進む道を妨げる魔法は何もない。そのため三手に分かれてヴィータとクライシスを探しても良かったのだが、獣化をすればどこにいるかの方向や距離など、ある程度正確な状況を把握することができる。そうなれば別れて捜索することが無意味な行動になってくる。だからある程度クライシスたちに近づくまではまとまって行動することにした。
獣化した召喚獣の背にそれぞれが乗り込み、音をなるべく立てないように慎重に前へと進む。そしてヴィータとクライシスが戦闘している音をベルたちでも聞き取れるような距離まで来たところで、半獣化になり三手に別れて行動することにした。
エリオットとコーディリア、ラヴィックとトトーの二つのペアとは別のルートをベルたちは進む。エリオットやラヴィックと同じようにベルも自身の足で走ろうとしたのだが、二人は同じ召喚術師ではあるが、その前に男性であり体力をつける鍛錬をしている。それに比べてベルの体力は一般市民の女性とそう変わらない。それではロセウスたちの足を引っ張ってしまう形になってしまうため、優しく三人に諭されロセウスの腕に抱かれることになった。
三手に別れてから数分。戦闘の音は次第に激しさを増していき、耳を澄まさなくても聞こえるほど大きな音になっていた。
「ここからは降りるよ」
ベルがロセウスの腕を占拠していることによって、戦力が三分の一減少してしまう。そうならないよう、ギリギリのラインで降ろしてもらうことにした。
「わかった。なら、ベルに一番強力な結界魔法をかけておくよ」
「ありがとう」
しかし司令塔の役割を持つベルに、戦闘能力は皆無だ。そのため地面に足をつけると同時にロセウスが強力な結界をかけてくれた。
「ただ、ロセウスの結界があるといっても、相手はあのクライシスだ。油断のないようにな」
「誰かしらがお嬢の傍にいるとは思うが、それができない状況も出てくるかもしれない。その時は俺らのことを気にせず逃げてくれ。それだけは約束してほしい」
アーテルとアルブスの脳裏には、初めてクライシスと会って戦った時のことが浮かんでいるのだろう。
「……わかった、約束する」
三人を置いて逃げるのは絶対に嫌だが、ベルが頷かない限りベルを戦いの場へと行かせてくれないに違いない。
(そうならないように、きちんと司令塔と召喚術師としての役割をこなそう)
気合いを入れるために、両方を叩く。
「行こう」
そうしてベルたちは、数百メートル先にいるクライシスたちの元へと向かった。
これは本来リーディルが使える魔法ではない、ヴィータの魔法らしい。それをなぜリーディルが使えるかといえば、ヴィータから異界の湖の代理を頼まれる際に、無効化の魔法などを一度だけ行使できる魔法をかけてもらったかららしい。異界の番人は誰にでも務められる役割ではない。ヴィータだからこそ、務められる役割なのだ。その役割を代理で誰かにしてもらうためには、信頼できる者がこういった非常事態に対応できる魔法を使えるようにしなければならない。そのため、前回ヴィータが異界の湖を離れてベルたちの元へ来た時も、この魔法をかけてもらったらしい。
「これで、森全体にかけられた幻惑魔法と結界魔法が効かなくなっているはずです。……どうですか?」
ただ、無効化の魔法を使用するのは初めてらしく、リーディル自身も不安なところがあるようだ。
トトーの歌魔法は異界の湖に到着した時点で解いてもらっているため、まだ継続してロセウスにかけてもらっている結界魔法だけ解いてもらう。
「……何かに阻害されている感覚も、惑わされている感覚もないし、大丈夫だと思う」
先程までは、結界魔法と歌魔法に守られていても、どこか違和感を感じずにはいられずにいた。
しかし今は違う。
いつも通りの感覚が戻ってきたように思える。
それはベルだけでなく、他の者たちも同じようだったようで、各々大丈夫だと頷いていた。
「よかったです。私はここから離れることができないので、これくらいしかできませんが……。どうか、クライシスをよろしくお願いいたします」
「うん、任せて」
深く頭を下げるリーディルに声をかけ、異界の湖に背を向けた。
リーディルに魔法を無効化してもらった今、ベルたちが進む道を妨げる魔法は何もない。そのため三手に分かれてヴィータとクライシスを探しても良かったのだが、獣化をすればどこにいるかの方向や距離など、ある程度正確な状況を把握することができる。そうなれば別れて捜索することが無意味な行動になってくる。だからある程度クライシスたちに近づくまではまとまって行動することにした。
獣化した召喚獣の背にそれぞれが乗り込み、音をなるべく立てないように慎重に前へと進む。そしてヴィータとクライシスが戦闘している音をベルたちでも聞き取れるような距離まで来たところで、半獣化になり三手に別れて行動することにした。
エリオットとコーディリア、ラヴィックとトトーの二つのペアとは別のルートをベルたちは進む。エリオットやラヴィックと同じようにベルも自身の足で走ろうとしたのだが、二人は同じ召喚術師ではあるが、その前に男性であり体力をつける鍛錬をしている。それに比べてベルの体力は一般市民の女性とそう変わらない。それではロセウスたちの足を引っ張ってしまう形になってしまうため、優しく三人に諭されロセウスの腕に抱かれることになった。
三手に別れてから数分。戦闘の音は次第に激しさを増していき、耳を澄まさなくても聞こえるほど大きな音になっていた。
「ここからは降りるよ」
ベルがロセウスの腕を占拠していることによって、戦力が三分の一減少してしまう。そうならないよう、ギリギリのラインで降ろしてもらうことにした。
「わかった。なら、ベルに一番強力な結界魔法をかけておくよ」
「ありがとう」
しかし司令塔の役割を持つベルに、戦闘能力は皆無だ。そのため地面に足をつけると同時にロセウスが強力な結界をかけてくれた。
「ただ、ロセウスの結界があるといっても、相手はあのクライシスだ。油断のないようにな」
「誰かしらがお嬢の傍にいるとは思うが、それができない状況も出てくるかもしれない。その時は俺らのことを気にせず逃げてくれ。それだけは約束してほしい」
アーテルとアルブスの脳裏には、初めてクライシスと会って戦った時のことが浮かんでいるのだろう。
「……わかった、約束する」
三人を置いて逃げるのは絶対に嫌だが、ベルが頷かない限りベルを戦いの場へと行かせてくれないに違いない。
(そうならないように、きちんと司令塔と召喚術師としての役割をこなそう)
気合いを入れるために、両方を叩く。
「行こう」
そうしてベルたちは、数百メートル先にいるクライシスたちの元へと向かった。
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