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第二章
十五話
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緊張した面持ちの店主から焼き鳥をもらい、一定区間ごとに設けられているイートインスペースに腰を下ろして串を頬張る。最初に口にしたのはネギまの塩で、肉本来の旨みと、ネギの甘みが口いっぱいに広がって、思わず頬に手を当ててしまうほど美味しかった。半分ほど食べたところでロセウスと串を交換し、タレの方も食べてみれば、こちらもタレがいい感じに絡み合っていて、タレのレシピを知りたくなるほどだった。アーテルとアルブスからも、ひな鳥のように一口ずつ食べさせてもらって、頬を緩ます。
ラヴィックたちも串を気に入ったのが、とても美味しそうに口にしていた。まさに当たりの店だったわけだ。もし王都のどこかで店を営業していて、ここで出店をしているのならば、次に王都へ来た時に寄って、夕食用に買って帰るのも手かもしれない。
皆が食べ終わった頃合いを見計らって、ベルたちのおかげで大盛況になっている焼き鳥店をあとにし、次の店へと向かう。イートインスペースが焼き鳥店から少しだけ歩いた位置にあったことと、護衛の騎士たちの壁もあって、店主が混乱するほど大盛況になっているとは知る由もなかった。
そうしてやってきた二つ目の店はルルとララが経営しているパステル。
出張出店であるため、街の店舗ほどの種類の豊富さはないが、それでも目を惹きつける雑貨ばかりだった。
「ルル! ララ!」
焼き鳥の出店の時と同じく、護衛騎士が先行してくれているおかげで、着いてすぐに二人に声をかけることができた。姉妹揃いの夕陽色の髪である二人は、ベルの姿に気がついて、パッと笑みを浮かべる。
「ベル、来てくれてありがとう!」
「来てくれて嬉しいわ。ゆっくり見ていってね」
「うん! でも王都に出張でお店出すなら、前に会った時に教えてくれてもよかったのに」
「だって教えたら、忙しくても絶対に来てくれるでしょう?」
「う……。確かに」
こればかりはルルの言う通りだった。店を出すからと言われれば、一目だけでも見ようと足を運んだことだろう。納得するとともに、二人なりの気遣いに思わずほっこりとしてしまう。
「でも、こうして来てくれて嬉しいことに変わりはないわ。ねぇ、ララ」
「もちろんよ! ベル、せっかく来てくれたから好きなもの一人一つずつプレゼントするわ。いいでしょ、ルル」
「ええ」
「そんな、悪いよ。お金ちゃんと払って買っていくよ?」
一つ、二つならともかくとして全員分となれば、それはさすがに申し訳なくなってくる。そう伝えるものの、ルルとララは顔を合わせると、にんまりとした表情で頷きあっていた。そして息ピッタリ、一言一句一緒の言葉でベルに言った。
「大丈夫。ベルたちがもらってくれれば、王都に持ってきた雑貨、全て完売させる自信があるから」
「……あー、そういうことか。さすがルルとララだわ」
二人で店を経営していることもあって、逞しい発想だ。ベルが買わずとも、輝人が買った物であると人伝いに噂が広がれば、人が押し寄せてくる。いわば広告塔という訳だ。人数分の雑貨代金で、持ってきた商品全部が売れるのなら安いものなのだろう。もちろんベルに気を遣わせないために言っている部分もあると思うが、そこには敢えて気づかないふりをした。
「んじゃ遠慮なく貰うことにする」
「そうしてちょうだいな」
ベルが来たことに純粋に喜び、こうして幼馴染として気兼ねなく会話ができるのは貴重な存在だ。権力ある者に媚びを売る者は少なくない。むしろこうして媚びを売るでもなく、普通に接してくれる存在の方が稀なのだから。そんな貴重な存在である二人だからこそ、ラヴィックたちを紹介することにした。
「皆、私の幼馴染のルルとララよ。二人ともセンスがいいし、輝人になってからも、こうして仲良くしてもらっているの」
ベルの紹介の仕方や、ベルたちの会話を聞いて、どんな人間なのかをある程度察したのだろう。ベルたちよりも輝人歴や召喚獣歴が長い人たちだ。それなりに見る目を養ってきている。だからなのだろう、ベルに二人との関係を大切にした方がいいと口々に言いながら、自分から名前を名乗っていた。
名乗り終わってからは、ルルとララに勧められ、各々気に入った雑貨を受け取っていた。
「また街の方のお店にも来てね」
「待ってるわ」
「もちろん! またね!!」
もっと長居をしていたかったが、これ以上居据わってしまうとパステルが目当てで来た人たちに申し訳が立たなくなるので、また店に行くと約束をして、二人に手を振りながらパステルをあとにした。
ラヴィックたちも串を気に入ったのが、とても美味しそうに口にしていた。まさに当たりの店だったわけだ。もし王都のどこかで店を営業していて、ここで出店をしているのならば、次に王都へ来た時に寄って、夕食用に買って帰るのも手かもしれない。
皆が食べ終わった頃合いを見計らって、ベルたちのおかげで大盛況になっている焼き鳥店をあとにし、次の店へと向かう。イートインスペースが焼き鳥店から少しだけ歩いた位置にあったことと、護衛の騎士たちの壁もあって、店主が混乱するほど大盛況になっているとは知る由もなかった。
そうしてやってきた二つ目の店はルルとララが経営しているパステル。
出張出店であるため、街の店舗ほどの種類の豊富さはないが、それでも目を惹きつける雑貨ばかりだった。
「ルル! ララ!」
焼き鳥の出店の時と同じく、護衛騎士が先行してくれているおかげで、着いてすぐに二人に声をかけることができた。姉妹揃いの夕陽色の髪である二人は、ベルの姿に気がついて、パッと笑みを浮かべる。
「ベル、来てくれてありがとう!」
「来てくれて嬉しいわ。ゆっくり見ていってね」
「うん! でも王都に出張でお店出すなら、前に会った時に教えてくれてもよかったのに」
「だって教えたら、忙しくても絶対に来てくれるでしょう?」
「う……。確かに」
こればかりはルルの言う通りだった。店を出すからと言われれば、一目だけでも見ようと足を運んだことだろう。納得するとともに、二人なりの気遣いに思わずほっこりとしてしまう。
「でも、こうして来てくれて嬉しいことに変わりはないわ。ねぇ、ララ」
「もちろんよ! ベル、せっかく来てくれたから好きなもの一人一つずつプレゼントするわ。いいでしょ、ルル」
「ええ」
「そんな、悪いよ。お金ちゃんと払って買っていくよ?」
一つ、二つならともかくとして全員分となれば、それはさすがに申し訳なくなってくる。そう伝えるものの、ルルとララは顔を合わせると、にんまりとした表情で頷きあっていた。そして息ピッタリ、一言一句一緒の言葉でベルに言った。
「大丈夫。ベルたちがもらってくれれば、王都に持ってきた雑貨、全て完売させる自信があるから」
「……あー、そういうことか。さすがルルとララだわ」
二人で店を経営していることもあって、逞しい発想だ。ベルが買わずとも、輝人が買った物であると人伝いに噂が広がれば、人が押し寄せてくる。いわば広告塔という訳だ。人数分の雑貨代金で、持ってきた商品全部が売れるのなら安いものなのだろう。もちろんベルに気を遣わせないために言っている部分もあると思うが、そこには敢えて気づかないふりをした。
「んじゃ遠慮なく貰うことにする」
「そうしてちょうだいな」
ベルが来たことに純粋に喜び、こうして幼馴染として気兼ねなく会話ができるのは貴重な存在だ。権力ある者に媚びを売る者は少なくない。むしろこうして媚びを売るでもなく、普通に接してくれる存在の方が稀なのだから。そんな貴重な存在である二人だからこそ、ラヴィックたちを紹介することにした。
「皆、私の幼馴染のルルとララよ。二人ともセンスがいいし、輝人になってからも、こうして仲良くしてもらっているの」
ベルの紹介の仕方や、ベルたちの会話を聞いて、どんな人間なのかをある程度察したのだろう。ベルたちよりも輝人歴や召喚獣歴が長い人たちだ。それなりに見る目を養ってきている。だからなのだろう、ベルに二人との関係を大切にした方がいいと口々に言いながら、自分から名前を名乗っていた。
名乗り終わってからは、ルルとララに勧められ、各々気に入った雑貨を受け取っていた。
「また街の方のお店にも来てね」
「待ってるわ」
「もちろん! またね!!」
もっと長居をしていたかったが、これ以上居据わってしまうとパステルが目当てで来た人たちに申し訳が立たなくなるので、また店に行くと約束をして、二人に手を振りながらパステルをあとにした。
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