3 / 3
亜章
探偵の仕事
しおりを挟む目当てのカニも取れたことだし潮干狩りと行こう。
貝採り。
ザクザク
ザクザク
傷つけないように慎重に掘る。
「お兄ちゃん! 」
リンがはしゃぎまわる。
教えるのも一苦労。
うん? 頭が! 頭が!
封印された思い出がよみがえる。
ザクザク
ザクザク
何だ? 何かを掘っている?
ここは建物の中。
山小屋ではないようだ。
だとしたらコテージ?
いや違う。違和感がある。
ここはどこだろう?
俺は一体何を?
土をかぶせる。
まさか死体?
フラッシュバック?
こちらを睨んでいる。
何を恨めしそうに見ていやがる!
俺が悪いんじゃない。
お前が悪いんだ! お前らが……
うおおお!
止めてくれ! もう思い出したくない。
「誰か助けてくれ! 」
「お兄ちゃん? お兄ちゃん? 大丈夫? 」
リンが心配そうにのぞき込む。
「俺は誰だ? 誰なんだ? 教えてくれ! 」
「お兄ちゃん…… 」
落ち着きを取り戻した。
何とか夕飯には足りそうだ。
間抜けにものこのこ歩いていたカニをキャッチ。
これで文句ないだろう。
戻る。
「ゲンジさん」
アイミと空蝉が戻っていた。
話は飯の時にでも。
リンゴとココナッツもある。
デザートが楽しみだ。
カニと貝のスープを味わう。
うん。出汁が効いている。
「うんうまい。うまい」
たまらずにお代わり。
さすがは空蝉だ。頼りになる。
続いて貝の残りを焼く。
満足満足。
本題に入るとするか。
「なあアイミ。PTって何か分かるか? 」
アイミがムーちゃんを見る。
ムーちゃんが頷き、促す。
「PTに特別な意味はないよ」
「嘘だ! そんなはずはない! 」
なぜ断定できる。なぜ知っているのか?
いくら俺が細かいことを気にしないからと言ってその違和感は払拭できない。
「ほら落ち着いてゲンジ」
「これが落ち着いてられるか! 」
「いい? これはあなたを混乱させるために仕掛けた罠。時間稼ぎの意味もある」
「どういうことだ? 」
「もうしょうがないなあ。本当はPTじゃなくてSTだったの」
「ST? 本当か? なぜ知っている? 」
「私もそう聞いております」
空蝉がデザートを持ってきた。
遠慮なくリンゴを丸かじり。
さほど大きくないミニリンゴなので食後にはもってこい。
「PTに意味はありません」
空蝉が言うと説得力がある。
「そんなことないよ! 意味はあるもん! 」
リンが反論する。
「PTは…… 」
アイミが睨む。
リンは下を向いてしまった。
「まあいいや。それでSTだと」
「はい」
「STってまさか? 」
「もうお分かりになりましたか? そうです。その通りです」
「やっぱり…… 」
「ですが今日はもう遅いですし明日にでも」
「それがいい。ゲンジそうしなよ」
財宝は逃げはしない。
大人しく言うことを聞くか。
楽しみは明日に取っておく。
翌日。
最後の総仕上げ。
ST
青空教室に全員を集める。
「それでは始めようか」
「どうしたのお兄ちゃん。真剣な顔しちゃって」
リンのおふざけが始まった。いちいち付き合ってられない。
無視を決め込む。
「まるで探偵みたいですね」
「そうそうムーちゃんの言う通り」
「誰が犯人なの? 」
「お前ら黙ってろ! 調子が狂う」
「では発表してもらいましょう。おっと失礼。披露してもらいましょうでしたね」
空蝉までふざける。
これでは収拾がつかない。
「犯人は? 探偵さん」
「犯人は俺かな? 」
「おおお! 」
歓声が上がる。
「違う違う。そんな単純なものか。と言うよりもジャンルが違う。
これは宝さがしではないか」
「早くしてよお兄ちゃん! 」
リンは我慢できない。
「では冗談はこれくらいで。STの意味が分かった者? 」
「はーい! 」
「はい! はい! 」
全員分かったようだ。
一晩あったのだ誰でも分かるか。
「では発表しよう」
皆の顔を順に見ていく。
「STとは…… STARTのことだ! 」
「お兄ちゃん凄い! 」
どうやらリンはまだ理解してなかったようだ。
それはそれで立派とも言える。
「STARTとはどこか?
始まりの場所。
振り出し。
出発地。
この島に当てはめるとそれはコテージになる」
「凄いよお兄ちゃん! 」
「何だ分かったんだ…… 」
「早くしましょう」
リンだけが褒めてくれる。
「よしコテージを掘り返すぞ! 」
「おう! 」
発掘開始。
ザクザク ザクザク
ザック ジャッブ
ザックザック ジャパン
事前に邪魔なベッドを退かしスペースができた。
そこに走り込んでシュート。
「ゴール! 」
リンの悪ふざけだ。
こんな大事な時に何をやらせようと言うのか。
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「もうすぐなんだから邪魔をするな! 」
「ええっ? つまんない! 」
地味な発掘作業に飽きたようだ。
リンらしいが笑ってはいられない。
ザクザク
ザクザク
掘り進めていく。
近い。もうすぐだ。
金銀がもう目の前だ。
オイルマネーで潤った?
莫大な金銀。
「お兄ちゃん? 」
「そこは危ないからどっかに行ってようね」
簡易式の床なので簡単に取り外すことができた。
まあ畳みたいなもの。
ボロ小屋にはお似合いだ。
「リン! 」
危険だから近寄るなと言っているのだが言うことを聞かない。
「手伝うよ」
「良いから! 大人しくしてろ! 」
「はーい」
渋々引き下がった。
リンはまだましだ。
他の奴らは姿を見せようともしない。
まあ穴掘りなんて疲れるだけなので楽しくもない。
リンが稀なのだ。
さあ最後の仕上げといこう。
【続】
貝採り。
ザクザク
ザクザク
傷つけないように慎重に掘る。
「お兄ちゃん! 」
リンがはしゃぎまわる。
教えるのも一苦労。
うん? 頭が! 頭が!
封印された思い出がよみがえる。
ザクザク
ザクザク
何だ? 何かを掘っている?
ここは建物の中。
山小屋ではないようだ。
だとしたらコテージ?
いや違う。違和感がある。
ここはどこだろう?
俺は一体何を?
土をかぶせる。
まさか死体?
フラッシュバック?
こちらを睨んでいる。
何を恨めしそうに見ていやがる!
俺が悪いんじゃない。
お前が悪いんだ! お前らが……
うおおお!
止めてくれ! もう思い出したくない。
「誰か助けてくれ! 」
「お兄ちゃん? お兄ちゃん? 大丈夫? 」
リンが心配そうにのぞき込む。
「俺は誰だ? 誰なんだ? 教えてくれ! 」
「お兄ちゃん…… 」
落ち着きを取り戻した。
何とか夕飯には足りそうだ。
間抜けにものこのこ歩いていたカニをキャッチ。
これで文句ないだろう。
戻る。
「ゲンジさん」
アイミと空蝉が戻っていた。
話は飯の時にでも。
リンゴとココナッツもある。
デザートが楽しみだ。
カニと貝のスープを味わう。
うん。出汁が効いている。
「うんうまい。うまい」
たまらずにお代わり。
さすがは空蝉だ。頼りになる。
続いて貝の残りを焼く。
満足満足。
本題に入るとするか。
「なあアイミ。PTって何か分かるか? 」
アイミがムーちゃんを見る。
ムーちゃんが頷き、促す。
「PTに特別な意味はないよ」
「嘘だ! そんなはずはない! 」
なぜ断定できる。なぜ知っているのか?
いくら俺が細かいことを気にしないからと言ってその違和感は払拭できない。
「ほら落ち着いてゲンジ」
「これが落ち着いてられるか! 」
「いい? これはあなたを混乱させるために仕掛けた罠。時間稼ぎの意味もある」
「どういうことだ? 」
「もうしょうがないなあ。本当はPTじゃなくてSTだったの」
「ST? 本当か? なぜ知っている? 」
「私もそう聞いております」
空蝉がデザートを持ってきた。
遠慮なくリンゴを丸かじり。
さほど大きくないミニリンゴなので食後にはもってこい。
「PTに意味はありません」
空蝉が言うと説得力がある。
「そんなことないよ! 意味はあるもん! 」
リンが反論する。
「PTは…… 」
アイミが睨む。
リンは下を向いてしまった。
「まあいいや。それでSTだと」
「はい」
「STってまさか? 」
「もうお分かりになりましたか? そうです。その通りです」
「やっぱり…… 」
「ですが今日はもう遅いですし明日にでも」
「それがいい。ゲンジそうしなよ」
財宝は逃げはしない。
大人しく言うことを聞くか。
楽しみは明日に取っておく。
翌日。
最後の総仕上げ。
ST
青空教室に全員を集める。
「それでは始めようか」
「どうしたのお兄ちゃん。真剣な顔しちゃって」
リンのおふざけが始まった。いちいち付き合ってられない。
無視を決め込む。
「まるで探偵みたいですね」
「そうそうムーちゃんの言う通り」
「誰が犯人なの? 」
「お前ら黙ってろ! 調子が狂う」
「では発表してもらいましょう。おっと失礼。披露してもらいましょうでしたね」
空蝉までふざける。
これでは収拾がつかない。
「犯人は? 探偵さん」
「犯人は俺かな? 」
「おおお! 」
歓声が上がる。
「違う違う。そんな単純なものか。と言うよりもジャンルが違う。
これは宝さがしではないか」
「早くしてよお兄ちゃん! 」
リンは我慢できない。
「では冗談はこれくらいで。STの意味が分かった者? 」
「はーい! 」
「はい! はい! 」
全員分かったようだ。
一晩あったのだ誰でも分かるか。
「では発表しよう」
皆の顔を順に見ていく。
「STとは…… STARTのことだ! 」
「お兄ちゃん凄い! 」
どうやらリンはまだ理解してなかったようだ。
それはそれで立派とも言える。
「STARTとはどこか?
始まりの場所。
振り出し。
出発地。
この島に当てはめるとそれはコテージになる」
「凄いよお兄ちゃん! 」
「何だ分かったんだ…… 」
「早くしましょう」
リンだけが褒めてくれる。
「よしコテージを掘り返すぞ! 」
「おう! 」
発掘開始。
ザクザク ザクザク
ザック ジャッブ
ザックザック ジャパン
事前に邪魔なベッドを退かしスペースができた。
そこに走り込んでシュート。
「ゴール! 」
リンの悪ふざけだ。
こんな大事な時に何をやらせようと言うのか。
「遊ぼうよお兄ちゃん」
「もうすぐなんだから邪魔をするな! 」
「ええっ? つまんない! 」
地味な発掘作業に飽きたようだ。
リンらしいが笑ってはいられない。
ザクザク
ザクザク
掘り進めていく。
近い。もうすぐだ。
金銀がもう目の前だ。
オイルマネーで潤った?
莫大な金銀。
「お兄ちゃん? 」
「そこは危ないからどっかに行ってようね」
簡易式の床なので簡単に取り外すことができた。
まあ畳みたいなもの。
ボロ小屋にはお似合いだ。
「リン! 」
危険だから近寄るなと言っているのだが言うことを聞かない。
「手伝うよ」
「良いから! 大人しくしてろ! 」
「はーい」
渋々引き下がった。
リンはまだましだ。
他の奴らは姿を見せようともしない。
まあ穴掘りなんて疲れるだけなので楽しくもない。
リンが稀なのだ。
さあ最後の仕上げといこう。
【続】
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
神暴き
黒幕横丁
ミステリー
――この祭りは、全員死ぬまで終われない。
神託を受けた”狩り手”が一日毎に一人の生贄を神に捧げる奇祭『神暴き』。そんな狂気の祭りへと招かれた弐沙(つぐさ)と怜。閉じ込められた廃村の中で、彼らはこの奇祭の真の姿を目撃することとなる……。
勿忘草 ~人形の涙~
夢華彩音
ミステリー
私、麻生明莉は村を治めている『麻生家』のお嬢様。
麻生家に生まれた者はその生涯を村に捧げなくてはならない。
“おきて”に縛り付けられている村。
「私は自由に生きたい。何も縛られずに、自分の心の向くまま。……それさえも許されないの?」
これは、抗うことの出来ない“役目”に振り回され続ける明莉の悲運な物語。
勿忘草(ワスレナグサ)シリーズ第2弾
<挿絵 : パラソルさんに描いて頂きました>
《面白いと感じてくださったら是非お気に入り登録 又はコメントしてくださると嬉しいです。今後の励みになります》
【完結】心打つ雨音、恋してもなお
crazy’s7@体調不良不定期更新中
ミステリー
主人公【高坂 戀】は秋のある夜、叔母が経営する珈琲店の軒下で【姫宮 陽菜】という女性に出逢う。その日はあいにくの雨。薄着で寒そうにしている様子が気になった戀は、彼女に声をかけ一緒にここ(珈琲店)で休んでいかないかと提案した。
数日後、珈琲店で二人は再会する。話をするうちに次第に打ち解け、陽菜があの日ここにいた理由を知った戀は……。
*読み 高坂戀:たかさかれん 姫宮陽菜:ひめみやはるな
*ある失踪事件を通し、主人公がヒロインと結ばれる物語
*この物語はフィクションです。
嘘つきカウンセラーの饒舌推理
真木ハヌイ
ミステリー
身近な心の問題をテーマにした連作短編。六章構成。狡猾で奇妙なカウンセラーの男が、カウンセリングを通じて相談者たちの心の悩みの正体を解き明かしていく。ただ、それで必ずしも相談者が満足する結果になるとは限らないようで……?(カクヨムにも掲載しています)


後宮生活困窮中
真魚
ミステリー
一、二年前に「祥雪華」名義でこちらのサイトに投降したものの、完結後に削除した『後宮生活絶賛困窮中 ―めざせ媽祖大祭』のリライト版です。ちなみに前回はジャンル「キャラ文芸」で投稿していました。
このリライト版は、「真魚」名義で「小説家になろう」にもすでに投稿してあります。
以下あらすじ
19世紀江南~ベトナムあたりをイメージした架空の王国「双樹下国」の後宮に、あるとき突然金髪の「法狼機人」の正后ジュヌヴィエーヴが嫁いできます。
一夫一妻制の文化圏からきたジュヌヴィエーヴは一夫多妻制の後宮になじめず、結局、後宮を出て新宮殿に映ってしまいます。
結果、困窮した旧後宮は、年末の祭の費用の捻出のため、経理を担う高位女官である主計判官の趙雪衣と、護衛の女性武官、武芸妓官の蕎月牙を、海辺の交易都市、海都へと派遣します。しかし、その最中に、新宮殿で正后ジュヌヴィエーヴが毒殺されかけ、月牙と雪衣に、身に覚えのない冤罪が着せられてしまいます。
逃亡女官コンビが冤罪を晴らすべく身を隠して奔走します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる