復讐のナイトメア〜伝承

ep19 制裁

「実況は、ハルキマが、お送りしています！　さあ残り時間も少なくなってきました。尚、敗者には罰ゲームがありますので皆さん、死に物狂いで頑張りましょう。ところでナッツ今の状況はどうなっていますか？」

「はいナッツです。只今の状況は、白組が三名と紅組が一名残っております。圧倒的に鬼側が有利ですね」

「おっと！　これは先ほど仲間割れをしていた熊虎率いる白組が和解しようとしています」



『乾山と山田、さっきは横柄な態度をとってすまなかった』と熊虎は謝りながら、ふたりに近づくが、乾山と山田は、素直に謝罪する熊虎の姿に違和感を覚える。


『頼む……許してくれ』と熊虎は階段通路と交差する丁字路の手前で立ち止まり頭を下げる。


『わかってくれれば、別にいいですけど……』とふたりは、警戒しながら熊虎に近づくが、中々近くまで来ない乾山と山田に対し熊虎は、ゆっくりと両手をあげる。

『武器は持ってない。これで信用してくれるか』と熊虎は、くるりと回り武器を持っていない事をアピールする。


それを見て乾山と山田は目で合図をとり、小さく頷いた。『わかりました熊虎君を信用します』と告げ、ふたりは熊虎に歩み寄った。

ふたりが丁字路中央付近に差し掛かったところで熊虎は片手を前に突き出し、手のひらを思い切り開き『乾山、山田そこで止まれ』と言い放った。

その瞬間、階段通路の死角からアーチェリーを構えた日乃出が現れ、乾山と山田のいる方向へアローを放った。

そのアローは山田をかわし、乾山の頭部に突き刺さる。

その場に大きな音を立て倒れる乾山。

それを見て腰を抜かしながらも逃げようとする山田。

だが熊虎は直ぐに山田に追いつき、ポケットからカッターナイフを取り出し、山田の首元にあて唱えた。『俺は、お前を殺らねえ、だから大人しくしろ』と告げ、山田の手足をガムテープで、ぐるぐる巻きにし、乾山の隣に山田を寝かせ、熊虎は半泣きの山田に押し殺した声で言放つ。


『裏切り者のには制裁だ』と高笑いを殺し、熊虎は、無造作に倒れているゾンビの口元から垂れている血と体液をハンカチでふき取り、そのハンカチを乾山の傷口にすり込んだ。

その後、熊虎は横たわる山田の耳元で囁いた。

『これで時間が経てば乾山もゾンビになるだろう。そしてお前はゾンビになった、その乾山に襲われるのさ』と告げ、熊虎と日乃出は、にやりと悪魔に取り憑かれたような笑みを浮かべながら、その場から去っていった。


その数分後、ゾンビ化した乾山に無惨にも咬み殺される山田の声が校舎に響き渡る。