復讐のナイトメア〜伝承

はれのいち

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ep5  転校生

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「おい……この外人の女、日本語しか話せないぞ」

「うるちぇ……ウチは日本人だ」

「じゃあ何だ! その金髪は……あっそうだ、この絵の具でお前の髪を黒くしてやる」

「ヤメテ――離して……」

「お前らぁ! しっかりとその娘を押さえろ」

「弱い者イジメはヤメロ!」

 天高く声を響かせ颯爽さっそうと登場したチビッコ。そのチビッコは、あっと言う間にイジメっ子を懲らしめたのであった。

「大丈夫……ケガないか?」

「ありがとう。名前は……」

「僕は、はれの幼稚園ひまわり組、春木甲馬だ」
と告げ、チビッコは去って行った。

『ピッピ、ピッピ、ピッピ』アラームが部屋中に鳴り響いた。

 ――もう朝か、何か……懐かしい夢を見たな。

『さぁ……今日も一日、学校生活を耐え忍ぶか!』

 甲馬は、ナイトメアの力を手に入れてから数日が経った。しかし……度胸がない甲馬は、いまだ能力を使って復讐をした事がなく、学校では相変わらず、机に俯き日之出らに制裁を下す妄想をしている。

 しばらくして担任が、ざわめく教室に入ってきたのだが、今日はいつもと違っていた。

 担任の後から、金色こんじきのサラサラした髪に赤のメッシュを入れた女子が入ってきた。

「え……転校生を紹介する。名は木本夏娘さんです。 どうする木本、自己紹介するか?」
 
「いや……別にいいです」

「じゃあ席は春木のとなりに座ってくれ……」

「こんにちは木本さん」

 木本夏娘は、甲馬の方へ近づき耳元て呟いた。
「お前……何かに取り憑かれているぞ」

「えっ……そうなの」

 甲馬は、得意の愛想笑いでやり過ごす。

 そう、この木本夏娘も幼き頃から霊感が、メチャクチャに強いのである。

 早速、行間に日之出達が、木本夏娘に質問攻めをしてきた。

「どうも熊虎貴士でーす。ねえ夏娘ちゃんて、もしかしてハーフ?」

「ああ……ハーフだ。だが日本生まれの日本育ち、英語は苦手だ。それと熊虎とやら、人を気安く名で呼ぶな。反吐が出る」

「なっなんだ。この転校生は! せっかく親切に話しかけたのによ……」

「私は、日之出美紅よろしく、このクラスのリーダーよ。そうそう春木甲馬とは、あまり関わらない方が良いわ。あんなクズと一緒にいたら、あなたも同類に見られるわよ」

 しばらく、木本は俯き、深いため息をついた。
「どうやらこの学校も低能な奴が多いみたいね。
特に、日之出さん、アンタが一番低能かしら」

「なにっ! 残念だわ木本さん。あなたの高校生活はお先真っ暗かもね。また転校した方がいいかもよ」

「そう、ご忠告ありがとう」

 隣で俯きになっていた甲馬が、夏娘の方をチラッと向きいた。

「何か、ようか春木甲馬とやら」

「いや……いや、あんまり、あの人達を刺激しない方がいいと思います」

「どうしてだ、アイツラはいじめっ子だろう。人目みただけでわかる。ろくでなしだ」

「いや……でも刺激しすぎると本当に学校にいられなくなるよ」

「お前は何をビビってる。やられたらやり返す、それだけだ」

「でもさ、あの人達の親も、かなり力を持っているしさ」

「だから、どうした春木とやら!」

「熊虎くんは、スーパーゼネコン熊虎組、社長の息子だし、日之出さんの母親は有名な霊媒師で、一〇万人を超える信者がいる。だから逆らわない方がいい」

「構わん、どうせ、ひよっこ霊媒師だろ!」

 その言葉に反応して日之出美紅の信者の目がキラリと光らせ、一斉にその眼差しを夏娘に向けた。

「随分と美紅様を侮辱するわね。あなたを呪い殺すわよ」

「もしかして脅迫……。それって罪よね。いいの謝らなくてウチが、被害届を出したら、あなたの人生終わりよ」

 その信者が、涙を浮かべ日之出に助けを乞う。
 
 日之出は、夏娘の前に立ち、握った拳を小刻みにふるわせ深々と頭をさげた。
 
「申し訳ありません。ウチの信者が、考えもせずに私が変わりに謝罪します」

「そう……今回だけ許すわ。以後気をつけなさい」

 甲馬は心の中で叫んだ。『夏娘かっこいいぜ』
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