童話の魔法使いの弟子

1.噂

「ねえねえ、聞いた？」
そうクラスメイトのえりが話しかけてくる。
いつもは私になんか、話しかけたりしない。
どうしても話したいことがあるが、教室に私しか残っていなかった、というところだろう。
「何を？」
「虹色の木の話！」
虹色の木はこの町では有名だ。
町と言ってもそんなに寂しいところじゃない。
市と言っても過言ではない。
「その虹色の木にね、隣の学校の男の子がね、行ったらしいの！」
「へー。そうなんだー。」
そう大げさなほど頷く。
正直言って興味がない。
見つけた人は幸せになれるというが、噓臭い。
でも、私は無理やりでも頷かないといけない。
えりはこのクラスの女王様だ。
いわゆるカースト上位？
美人で雑誌の読モとして、よく写真が載る。
美人だし、頭もいい。
どちらも兼ね備えていない自分からしてみれば、羨ましい話だ。
「それでねーそれでねー、確「おい、えり帰るぞ。」
「うん！分かった。明日ね！」
彼氏の登場に彼女は詳しい話も話さずに行ってしまった。
興味がないといえど、ここまで話すなら、最後まで話していけばいいものを……。
そう考えながら、荷物を整理して帰る準備をする。
本当は準備なんてもうとっくに済んでいるのだが、今帰れば、何処かであの二人と鉢合わせしてしまうかもしれない。
それだけは避けたかった。
ふっと眺めた空は綺麗な赤に染まった夕焼けだった。
綺麗だがとても不気味でもあるその空から目が離せなかった。