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第7章 ラッハザーク
87. アルヴィスのリストリング
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一方その頃……
アルヴィスはササラと共に地底湖や火山に関しての情報収集していたのだが、ラッドイーパー達の里から近い為に火山の事よりも地底湖の情報が多い気がする。
地底湖といえども火山がかなり近い湖……とはいえ地熱により湯に近いような温かさを保ち、そしてそんな過酷な環境下にもかかわらず湯の湖に住まう魚や動植物が多く生息する不思議な場所。
こんな熱気だった湖に生きているのが不思議な光景。湯の中に住まう魚など不思議な要素が多々あるこの光景を目の前にササラにキツく口止めをする。
「おいササラ! フィーネに言うと行きたいとか言い出しかねないからな……絶対に内緒にするんだぞ!」
「わかってるにゃ!こんなの絶対に見たいに決まってるにゃ!」
ササラはアルヴィスの提案に深く頷く。フィーネに話したら……やれキャンプだ!なんだあの魚は!と、この地底湖の中に入りかねない。それが容易に想像ができたのでコクコクと頷きながら情報として伏せることになる。
「でもこの地底湖はそこまで危険はなさそうにゃ……でもあそこから入る火山は危なそうだにゃ」
「火山が危なそう?だと?」
ササラが指差すのは固く封鎖されている火山入り口……ラッドイーパー達が口々に揃えていうのはやはり『炎帝フォースヴァルド』の存在が、いかに尊く……そして偉大なのかだ。
「フォースヴァルド様は炎王龍でありこの火山と全ての炎を司る龍と言う事。そして……地底の守り神でもあり絶大な力と影響力をもつ存在……か」
ラッドイーパー達はもとより地底での生活をしているものは地底湖の祭壇に供物を捧げることはあれど、火山の聖域に足を踏み入れることはない。
ましてやこの世界に現存する王龍のヴァルを含めた五龍のうちの一龍、炎王龍……
炎を司る王龍に力の源である相性のいい火山やマグマ、そして誰も踏み入れたことのない未開の地……こちらが戦闘に持ち込むには圧倒的に不利な条件が多々並ぶ状況。この状況を整理していくと……アルヴィスは頭に手を当てながらつぶやいていた。
「ふぅ……俺も新たな力が欲しいところだがやはり今の俺達だけで……フィーネ抜きでの探索だと厳しいな。力が足りなさすぎる……危険すぎる!今回は見送りが妥当だな。しかたない。いつか力をつけた時はぜひ手合わせを願いたいものだ……」
アルヴィスは状況把握と自分の立ち位置を見誤らない。それはバーティミアスで難しい立ち位置で長年選択を迫られ選択し、切磋琢磨した経験ゆえんであり引き際は見誤らない。かなりの情報を収集してから判断を下す。
そのさじ加減は目を見張るものがある。だからこそ……ササラには疑問が残る出来事が……。
「アルヴィスは状況把握がこんなに上手にゃのにグディリッツダンジョンではなぜ、あんな簡単な誘惑の香りにかかってしまったのにゃ?」
「(ドキっ……)それは…………」
そうササラは不思議だった。こんなにも状況把握に徹底していてダンジョンの怖さなども知っていたのにも関わらず、なぜあの罠にかかるのが不思議だったのだ。
ササラに問われて額に手を当てながらバツが悪そうにササラに話すアルヴィス。
「ササラ……フィーネには絶対に言うなよ。あの時はな……フィーネとはぐれてしまってたから早く合流する為に行き急いだのと……それとグランに対する焦りがあったからな。あの失態はかなりの反省事項だ」
「? はぐれたフィーネに早く合流したいはわかるにゃ。でもなぜグランに焦るにゃ?」
コテンと首を傾げている不思議そうなササラにアルヴィスは口を開く。
「アイツ……フィーネの事が好きだろ? 俺よりもフィーネとの付き合いも長いし。しかもサラディナーサを纏ったフィーネに似合うピッタリの髪飾りスカーフまで渡して。フィーネが初めての贈り物なのって喜びながらも頰を赤く染めて照れている姿を目の当たりにしたら……冷静になれなかったんだ。あの時は早く合流してフィーネに会いたかったんだ……」
我ながら情けないとため息をつきながらも、失態に対して反省するアルヴィスにササラは口を開く。
「フィーネの喜びはササラも嬉しいにゃ。でもササラからみるとフィーネはグランもアルヴィスもふたりとも大切な存在のように見えるにゃ。だからどっちが一番とかじゃなくてふたりとも大切な人なのにゃ」
「それはっ! ……本当にフィーネは少しは俺にもグランのような意識はしてくれているのか?」
いつになく珍しい表情のアルヴィスにコクコクと頷くササラ。
「ササラ嘘つかないにゃ。アルヴィスと話すフィーネはいい匂いするにゃ。あれは慈しみ……愛しているニンゲンがだす匂いにゃ。アルヴィスにもグランにも話してる時はフィーネ同じ匂いがするにゃ。アルヴィスは好かれてるにゃ。それはグランにも共通してるにゃ。」
はぁ……アルヴィスはササラの言葉に少し安堵しながらその場でしゃがみ込む。ササラは心配するがしゃがみこんでいるアルヴィスは顔に手を当てながらも少し笑顔が垣間見える。
そこにササラはしっかりと忠告するのだった。
「アルヴィスもフィーネにもう少し余裕もつにゃ。あまりにも心配ばかりされると、される方は疲れるし嫌になるにゃ? 信じてあげることも時には大事にゃ」
「!……ササラにもそう見えるのか?」
「最近のアルヴィスはあれこれ注文がフィーネに多いにゃ。あまり求めすぎると嫌われちゃうにゃ」
ササラの言葉にハッとするアルヴィス。
確かに……最近は出来事が出来事だった為に、フィーネに対して心配や注意ばかりして……そして説教ばかりでなんとも……フィーネにとって煩わしい存在になっていた。
……そうなのかと不安になりながらも反省する。自由が好きでやりたいようにやりたいフィーネの足枷にはなりたくない……
もう少し気持ちに余裕を持ちながら言葉を選ぶことを再認識させてくれるササラに礼を言いながらフィーネ達の元へ戻るのだった。
カチャリ……
アルヴィスとササラが探索を終了させフィーネが休んでいる部屋に戻るとフィーネがおかえりと優しく迎えてくれる。
するとフィーネが戻ってきたアルヴィスを呼び近くに座らせるとアルヴィスの手にリストリングを手渡す。不思議なリストリングに興味を示すアルヴィスは顔の近くまでリストリングを持ち上げて眺めている。
「フィーこれはなんだ?」
「アル。これはね、精霊の加護が使えるリストリングなの。以前話した精霊人の店で譲ってもらったものでね……この玉にはリースとサラディナーサの一部の魔法と私の魔法が込められているの」
「すごい道具じゃないか⁉どうしてこれを俺に?」
「これを左腕に……」
アルヴィスに左腕に装備してみてというフィーネの言葉に受け取ったリストリングを左腕に装着するとその瞬間……リストリングが呼応する!
カッッ! ドクン……
「うぁっ⁉熱い!」
リストリングの少し揺らめいていた赤い光は、力強く赤い氣となり揺らめきながら光をたたえている。まるでアルヴィスに呼応するかのように。
「まず……この精霊の加護が使えるリストリングは……リースとサラディナーサの玉はある程度の魔力が切れるまでは使用可能なの。その他は……私の魔力と引き換えに使える一回限りの珠よ。回復の玉と防御の玉。最後の一つは切り札だから秘密。本当に……本当に困った時に使ってみてほしいわ」
アルヴィスに輝聖玉と創造珠の内容を少しずつ説明していく。
まずリースの玉は時間を加速したりゆっくりさせたり、止めたりする力がある事。
サラディナーサの玉は微睡みで目眩ましや少しの間何かを封印する事ができる事。
フィーネの珠は傷の回復をする珠とあらゆる魔法や攻撃を防ぐ珠。そして一つは困った時に使用する珠。但しフィーネの珠は一度限りの使用できる珠である事。
フィーネが用意してくれたリストリング。フィーネからの贈り物はすごくありがたいが……なぜ急にこれを? と戸惑いながらも不思議そうな顔をするアルヴィスにフィーネは声をかける。
「アルヴィスは『炎帝フォースヴァルド』に挑戦したいのでしょう? マントピンに付与してたお守りは今はないし私は行けないけど……リストリングをお守りとして……私の代わりに連れて行ってもらいたいの」
「フィー知っていたのか⁉ 俺が炎帝に興味を持って火山に行きたいという事を……」
コクンと頷くフィーネ。フィーネはアルヴィスが諦めてしまっていた火山の『炎帝フォースヴァルド』への挑戦をなんとなく知っていたのだ。そしてアルヴィスの肩にはパタパタと飛んできたヴァルが寄り添う。
フィーネの言葉にヴァルがアルヴィスを見つめながら答える。
「私は行けないけど……みんなアルヴィスを支えてね。でも無理なら強制的に戻ること!」
〘フィーネ……我らもついている……主の願いだ……フォースヴァルドに会って……無事にみんなで帰ってくるぞ……〙
「おい!ヴァルまでついてきてくれるのか?みんなも?」
ヴァルの言葉に続き後ろに控えるシェリルやティレニア、ササラが同調する。
次にフィーネはササラを近くに呼び今度はササラに杖を渡す。
「これは何なのにゃ?」
「ササラにはこれを。あなたの調薬技術とそしてこれはあなたの……あなただけの魔法が役立つわ。これで身を守ってね」
「フィーネ嬉しいけど……ササラは魔法使えないにゃ? それでも……もらっても大丈夫にゃ?」
魔法が使えないササラだったのだが不思議とフィーネから受け取る杖。清められた空気を纏った杖の先についた石を不思議そうにササラが眺める。
キラッ!
すると少しキラッと光ったような気がする。その瞬間、シュルルッと杖はササラに合うサイズまで小さく伸縮し丁度いいサイズに収まる。それを見ていたヴァルがササラにつぶやく。
シュルッ……
「わっ! 小さくなったにゃ!」
〘ほぅ……杖はササラが使用者と認めたようだな……その杖はササラの望むように使うがいい……魔法は今は使えずとも……いずれ必要な時にふいに魔法とは覚えるものだ……〙
「ヴァル様……ササラも魔法が使えるようになるにゃ?」
ササラに呼応しながら主をササラと認めた杖を大事に握りしめる。ヴァルの言葉を受け止めてアルヴィスのサポートにまわるように決意しているササラ。フィーネはニコッと笑いながらも皆に顔を向けて……
「無茶はしないでねみんな……コホッ……私はここで待っているわ。ヴァルお願い……皆を護ってね」
「必ず戻るから……もうそんなに心配をするなフィー」
アルヴィスはフィーネの頭を撫でて五人で部屋を出ていった。ササラは調合素材をラッドイーパー達から分けてもらい、そして地底湖に向かう為の荷物を用意し……そして皆に改めて話をするアルヴィス。
「みんなここから地底湖、そして火山に向かう。ただし……判断により帰還が望ましいときは退却する。みんな無茶してくれるな」
【ふふふっフィーネ抜きの旅じゃが……わしらだけでも協力すればなんとかなるじゃろう……気を引き締めていくんじゃ!】
その言葉を胸に刻みそして地底湖に向かって歩み始める。
地底湖には何が待ち受けているのだろうか……
アルヴィスはササラと共に地底湖や火山に関しての情報収集していたのだが、ラッドイーパー達の里から近い為に火山の事よりも地底湖の情報が多い気がする。
地底湖といえども火山がかなり近い湖……とはいえ地熱により湯に近いような温かさを保ち、そしてそんな過酷な環境下にもかかわらず湯の湖に住まう魚や動植物が多く生息する不思議な場所。
こんな熱気だった湖に生きているのが不思議な光景。湯の中に住まう魚など不思議な要素が多々あるこの光景を目の前にササラにキツく口止めをする。
「おいササラ! フィーネに言うと行きたいとか言い出しかねないからな……絶対に内緒にするんだぞ!」
「わかってるにゃ!こんなの絶対に見たいに決まってるにゃ!」
ササラはアルヴィスの提案に深く頷く。フィーネに話したら……やれキャンプだ!なんだあの魚は!と、この地底湖の中に入りかねない。それが容易に想像ができたのでコクコクと頷きながら情報として伏せることになる。
「でもこの地底湖はそこまで危険はなさそうにゃ……でもあそこから入る火山は危なそうだにゃ」
「火山が危なそう?だと?」
ササラが指差すのは固く封鎖されている火山入り口……ラッドイーパー達が口々に揃えていうのはやはり『炎帝フォースヴァルド』の存在が、いかに尊く……そして偉大なのかだ。
「フォースヴァルド様は炎王龍でありこの火山と全ての炎を司る龍と言う事。そして……地底の守り神でもあり絶大な力と影響力をもつ存在……か」
ラッドイーパー達はもとより地底での生活をしているものは地底湖の祭壇に供物を捧げることはあれど、火山の聖域に足を踏み入れることはない。
ましてやこの世界に現存する王龍のヴァルを含めた五龍のうちの一龍、炎王龍……
炎を司る王龍に力の源である相性のいい火山やマグマ、そして誰も踏み入れたことのない未開の地……こちらが戦闘に持ち込むには圧倒的に不利な条件が多々並ぶ状況。この状況を整理していくと……アルヴィスは頭に手を当てながらつぶやいていた。
「ふぅ……俺も新たな力が欲しいところだがやはり今の俺達だけで……フィーネ抜きでの探索だと厳しいな。力が足りなさすぎる……危険すぎる!今回は見送りが妥当だな。しかたない。いつか力をつけた時はぜひ手合わせを願いたいものだ……」
アルヴィスは状況把握と自分の立ち位置を見誤らない。それはバーティミアスで難しい立ち位置で長年選択を迫られ選択し、切磋琢磨した経験ゆえんであり引き際は見誤らない。かなりの情報を収集してから判断を下す。
そのさじ加減は目を見張るものがある。だからこそ……ササラには疑問が残る出来事が……。
「アルヴィスは状況把握がこんなに上手にゃのにグディリッツダンジョンではなぜ、あんな簡単な誘惑の香りにかかってしまったのにゃ?」
「(ドキっ……)それは…………」
そうササラは不思議だった。こんなにも状況把握に徹底していてダンジョンの怖さなども知っていたのにも関わらず、なぜあの罠にかかるのが不思議だったのだ。
ササラに問われて額に手を当てながらバツが悪そうにササラに話すアルヴィス。
「ササラ……フィーネには絶対に言うなよ。あの時はな……フィーネとはぐれてしまってたから早く合流する為に行き急いだのと……それとグランに対する焦りがあったからな。あの失態はかなりの反省事項だ」
「? はぐれたフィーネに早く合流したいはわかるにゃ。でもなぜグランに焦るにゃ?」
コテンと首を傾げている不思議そうなササラにアルヴィスは口を開く。
「アイツ……フィーネの事が好きだろ? 俺よりもフィーネとの付き合いも長いし。しかもサラディナーサを纏ったフィーネに似合うピッタリの髪飾りスカーフまで渡して。フィーネが初めての贈り物なのって喜びながらも頰を赤く染めて照れている姿を目の当たりにしたら……冷静になれなかったんだ。あの時は早く合流してフィーネに会いたかったんだ……」
我ながら情けないとため息をつきながらも、失態に対して反省するアルヴィスにササラは口を開く。
「フィーネの喜びはササラも嬉しいにゃ。でもササラからみるとフィーネはグランもアルヴィスもふたりとも大切な存在のように見えるにゃ。だからどっちが一番とかじゃなくてふたりとも大切な人なのにゃ」
「それはっ! ……本当にフィーネは少しは俺にもグランのような意識はしてくれているのか?」
いつになく珍しい表情のアルヴィスにコクコクと頷くササラ。
「ササラ嘘つかないにゃ。アルヴィスと話すフィーネはいい匂いするにゃ。あれは慈しみ……愛しているニンゲンがだす匂いにゃ。アルヴィスにもグランにも話してる時はフィーネ同じ匂いがするにゃ。アルヴィスは好かれてるにゃ。それはグランにも共通してるにゃ。」
はぁ……アルヴィスはササラの言葉に少し安堵しながらその場でしゃがみ込む。ササラは心配するがしゃがみこんでいるアルヴィスは顔に手を当てながらも少し笑顔が垣間見える。
そこにササラはしっかりと忠告するのだった。
「アルヴィスもフィーネにもう少し余裕もつにゃ。あまりにも心配ばかりされると、される方は疲れるし嫌になるにゃ? 信じてあげることも時には大事にゃ」
「!……ササラにもそう見えるのか?」
「最近のアルヴィスはあれこれ注文がフィーネに多いにゃ。あまり求めすぎると嫌われちゃうにゃ」
ササラの言葉にハッとするアルヴィス。
確かに……最近は出来事が出来事だった為に、フィーネに対して心配や注意ばかりして……そして説教ばかりでなんとも……フィーネにとって煩わしい存在になっていた。
……そうなのかと不安になりながらも反省する。自由が好きでやりたいようにやりたいフィーネの足枷にはなりたくない……
もう少し気持ちに余裕を持ちながら言葉を選ぶことを再認識させてくれるササラに礼を言いながらフィーネ達の元へ戻るのだった。
カチャリ……
アルヴィスとササラが探索を終了させフィーネが休んでいる部屋に戻るとフィーネがおかえりと優しく迎えてくれる。
するとフィーネが戻ってきたアルヴィスを呼び近くに座らせるとアルヴィスの手にリストリングを手渡す。不思議なリストリングに興味を示すアルヴィスは顔の近くまでリストリングを持ち上げて眺めている。
「フィーこれはなんだ?」
「アル。これはね、精霊の加護が使えるリストリングなの。以前話した精霊人の店で譲ってもらったものでね……この玉にはリースとサラディナーサの一部の魔法と私の魔法が込められているの」
「すごい道具じゃないか⁉どうしてこれを俺に?」
「これを左腕に……」
アルヴィスに左腕に装備してみてというフィーネの言葉に受け取ったリストリングを左腕に装着するとその瞬間……リストリングが呼応する!
カッッ! ドクン……
「うぁっ⁉熱い!」
リストリングの少し揺らめいていた赤い光は、力強く赤い氣となり揺らめきながら光をたたえている。まるでアルヴィスに呼応するかのように。
「まず……この精霊の加護が使えるリストリングは……リースとサラディナーサの玉はある程度の魔力が切れるまでは使用可能なの。その他は……私の魔力と引き換えに使える一回限りの珠よ。回復の玉と防御の玉。最後の一つは切り札だから秘密。本当に……本当に困った時に使ってみてほしいわ」
アルヴィスに輝聖玉と創造珠の内容を少しずつ説明していく。
まずリースの玉は時間を加速したりゆっくりさせたり、止めたりする力がある事。
サラディナーサの玉は微睡みで目眩ましや少しの間何かを封印する事ができる事。
フィーネの珠は傷の回復をする珠とあらゆる魔法や攻撃を防ぐ珠。そして一つは困った時に使用する珠。但しフィーネの珠は一度限りの使用できる珠である事。
フィーネが用意してくれたリストリング。フィーネからの贈り物はすごくありがたいが……なぜ急にこれを? と戸惑いながらも不思議そうな顔をするアルヴィスにフィーネは声をかける。
「アルヴィスは『炎帝フォースヴァルド』に挑戦したいのでしょう? マントピンに付与してたお守りは今はないし私は行けないけど……リストリングをお守りとして……私の代わりに連れて行ってもらいたいの」
「フィー知っていたのか⁉ 俺が炎帝に興味を持って火山に行きたいという事を……」
コクンと頷くフィーネ。フィーネはアルヴィスが諦めてしまっていた火山の『炎帝フォースヴァルド』への挑戦をなんとなく知っていたのだ。そしてアルヴィスの肩にはパタパタと飛んできたヴァルが寄り添う。
フィーネの言葉にヴァルがアルヴィスを見つめながら答える。
「私は行けないけど……みんなアルヴィスを支えてね。でも無理なら強制的に戻ること!」
〘フィーネ……我らもついている……主の願いだ……フォースヴァルドに会って……無事にみんなで帰ってくるぞ……〙
「おい!ヴァルまでついてきてくれるのか?みんなも?」
ヴァルの言葉に続き後ろに控えるシェリルやティレニア、ササラが同調する。
次にフィーネはササラを近くに呼び今度はササラに杖を渡す。
「これは何なのにゃ?」
「ササラにはこれを。あなたの調薬技術とそしてこれはあなたの……あなただけの魔法が役立つわ。これで身を守ってね」
「フィーネ嬉しいけど……ササラは魔法使えないにゃ? それでも……もらっても大丈夫にゃ?」
魔法が使えないササラだったのだが不思議とフィーネから受け取る杖。清められた空気を纏った杖の先についた石を不思議そうにササラが眺める。
キラッ!
すると少しキラッと光ったような気がする。その瞬間、シュルルッと杖はササラに合うサイズまで小さく伸縮し丁度いいサイズに収まる。それを見ていたヴァルがササラにつぶやく。
シュルッ……
「わっ! 小さくなったにゃ!」
〘ほぅ……杖はササラが使用者と認めたようだな……その杖はササラの望むように使うがいい……魔法は今は使えずとも……いずれ必要な時にふいに魔法とは覚えるものだ……〙
「ヴァル様……ササラも魔法が使えるようになるにゃ?」
ササラに呼応しながら主をササラと認めた杖を大事に握りしめる。ヴァルの言葉を受け止めてアルヴィスのサポートにまわるように決意しているササラ。フィーネはニコッと笑いながらも皆に顔を向けて……
「無茶はしないでねみんな……コホッ……私はここで待っているわ。ヴァルお願い……皆を護ってね」
「必ず戻るから……もうそんなに心配をするなフィー」
アルヴィスはフィーネの頭を撫でて五人で部屋を出ていった。ササラは調合素材をラッドイーパー達から分けてもらい、そして地底湖に向かう為の荷物を用意し……そして皆に改めて話をするアルヴィス。
「みんなここから地底湖、そして火山に向かう。ただし……判断により帰還が望ましいときは退却する。みんな無茶してくれるな」
【ふふふっフィーネ抜きの旅じゃが……わしらだけでも協力すればなんとかなるじゃろう……気を引き締めていくんじゃ!】
その言葉を胸に刻みそして地底湖に向かって歩み始める。
地底湖には何が待ち受けているのだろうか……
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