93 / 108
第6章 精神世界
75. 部屋の中には……
しおりを挟む
ドサッ……
シオンとティレニアの感動の再会もつかの間、何かが床に倒れる音がしてそこに居合わせたみんなが一斉に音がした方を向くと、フィーネが自力では力が入らずその場に崩れ落ちるように倒れてしまっていた。
「えっ⁉」
「フィーネ‼」
慌てたアルヴィス達が急いでフィーネの身体を起こしてみるが、凄まじく身体に熱がこもり熱いのを通り越している現実、そしてこんな状態で三日三晩をやり遂げたフィーネに驚きを隠せなかった。
「あつっ! 何だこの異常な熱は! フィーネっ! おいっフィーネしっかりしろっ!」
アルヴィスはフィーネの頬を手のひらでパシパシと触って起こしてみるのだが……苦悶の表情を浮かべて……苦しむフィーネは目も開けられず、
「ゔぅぅ………ヒュー……ヒューっ……」
〘……むっ……これは!………〙
かろうじて呼吸をしているその状態をみたヴァルが即座にフィーネの危機を把握しヴァルが実体化すると翼をバッと広げフィーネに向かって魔力を帯びながら咆える!
〘ヴァァウゥゥ‼〙
パァァァァァァ………
「こ……これは? 温かい……身体が軽くなる?」
キラキラキラ……
ヴァルが咆哮をあげるとフィーネの周りにキラキラと光る粒子が降り注ぎアルヴィスごと包み込んでいる。そしてそれと同時に身体が浮き上がり空に浮いた状態で二人が光とともに漂っている。その光がフィーネの身体に少しずつ付着すると少しだけフィーネの負荷が和らいでいるようにも思う。
「うぅ……うぅ…………ヴァル………」
苦悶の表情を浮かべるフィーネは目を閉じていながらも大粒の涙が頬を伝いとめどなく流れ落ちている。シェリルがフィーネに近づき様子をジッと見ているとアルヴィスがキュッとフィーネを抱きしめてながら訴えている!
「なぁどうか! ……どうかフィーネを救ってくれ!シェリル!」
〘魔力欠乏症だけの症状ではない……シェリル……〙
【…………これは!……チッ!こんな時にヤツの仕業じゃな!……】
「ヤツって………」
【これは弱ったフィーネの精神に……蝕み巣食おうとしているやつがおるのじゃ!】
「なんだと!しっかりしろっフィーネ!」
必死にフィーネを助けようとしているアルヴィスのその様子を見ていた飛翼族の姫はフィーネの身体に触れると同時にアルヴィスに告げながらアルヴィスに触れる。
【アルヴィスよ……向こうの世界で……フィーネを探し出せ!】
「向こうの世界? それはどういう……⁉」
【フィーネを助けたくば見つけるのじゃ!助かるかどうかはお主しだいじゃ!】
そうアルヴィスに言い残しシェリルがフィーネに魔力を注ぎはじめた。
【……聖獣に愛されし愛し子よ……その身に降りかかる厄災に……救いの紅き者よ……いざ行かん!……】
ヒュッ…… シュパンッ!
「うわっ!!」
シェリルがフィーネに魔力を注ぐとその瞬間に何処かに飛ばされてしまったアルヴィス。
「フィーネ⁉ ここはどこだ!」
先程まで抱きしめていたフィーネがふっと居なくなりはぐれてしまった事に慌てるが、周りを見渡すと一面真っ暗な空間が広がっている。何もない、ただただ暗闇が支配する空間だ。音もなく暗闇のみが続くこの場所……
「ここは……一体何処なんだ?」
アルヴィスがひたすら続く真っ暗な静寂の闇を歩き進んでいくと光がいくつか照らされた部屋が目の前に出現する。いや……正確に言うと光に照らされた扉があるのだ。アルヴィスが気になった一つの扉に手を触れてみると……
カチャリ……
「開いた! 一体この部屋はなんなんだ?」
扉が開きこの中に入れるようだ。アルヴィスは扉の中に足を踏み入れると……そこには一面の草原が現れ、先程の闇とは違い明るく風に草がなびきそよそよと揺れている。この爽やかな部屋の奥には、日が差し込む場所にたくさんの精霊達と戯れている女の子がいる。女の子は狼の背に乗っているが、急にこちらに気づいた女の子は突然現れたアルヴィスを警戒し、キッと睨みつけている。
「お前誰だ? なぜここにいる!」
「いや………まぁこの場合俺が悪いわな……」
殺気を放っている女の子がアルヴィスを睨みつけると、周りの精霊達も殺気立ってこちらを見ている。
「(オィオィ……物騒だな)俺はアルヴィス。戦うつもりはない。フィーネと言う女性を探してるんだが知らないか?」
「………………」
アルヴィスは尋ねたのだが返答に不思議な顔をする女の子。だが警戒していた女の子は大きな声で叫びながら口を開く。
「…ろろフィーネは私だ!だが……お前など私は知らぬ! 不届き者はここから立ち去れ!」
そう言いながら手を上げると一気にアルヴィスの身体が宙に浮く。
「うわっ!なにするっ!」
ゴゥゥゥ!
「去れ!」
「嘘だろっ⁉」
フィーネと名乗る女の子が立ち去れ! と言い放つと突然風が巻き起こり突風ごとアルヴィスは部屋から追い出されてしまった。
バタンッ! ……カチャリ……
どうやら先程の部屋には鍵がかかってしまったようだ。部屋の外に強制的に追い出されてしまったアルヴィスは真っ暗なフロアに転がるように床に放り出されていた。
「痛たっ……何なんだよ? ここは……。それにあれがフィーネなのか?」
吹き飛ばされたと思えばまた真っ暗な静寂な闇の空間に戻される。先程の部屋に戻ろうとしたのだが、その扉にはもう鍵がかかっていて入れないようだ。フィーネとは似つかぬ風貌……
少し悩んでいると、ふと先程とは違い肩がほんのり温かいのに気づくアルヴィス。この温かさはいきもの?
「何か……いるのか?」
そうアルヴィスが呟き右肩に触れると……小さな光と共にハッキリと肩に現れたのは小さなドラゴンだった。
「ピィィィ…… ピィィ…… 」
「ドラゴン?しかしお前弱ってるな大丈夫か?」
小さな体のドラゴンが肩にちょこんと乗っている。先程の草原から着いてきたのか? ヒョイッと肩にいるドラゴンを片手で掴んでアルヴィスの目の前に持ってくると、それはただただ弱りきっているようでフラフラっとしている様に見えた。
「絶対に大丈夫じゃないな……」
見兼ねたアルヴィスがふぅっとため息をつきながら胸の内側の服との間にそっと迎えてやる。
「肩なんて不安定で危ないぞ? 俺について来るならここにいろ。ここが一番安全だからな……」
「キュィィィ……」
ドラゴンの頭を軽く撫でてやると安心しながらアルヴィスの胸に収まっている。なぜだか放っておけないドラゴンも一緒に連れて行くことにしたようだ。
あてもなくあれからまた暗闇を彷徨い歩き続けていると、アルヴィスの前にはまた次の違う扉が光っている。入れと言わんばかりの扉にドアノブに手を触れてみると……
カチャリ……
鍵は開いており扉が開き中にアルヴィスは入っていく。すると次に現れたのは……
「えっ……ここは、バーティミアス城?」
そうアルヴィスの前に現れたのはバーティミアス城だ。なぜ城に? と不思議そうなアルヴィスだったが現れた風景は見なれた玉座の間。そしてヴァレリーが結晶と化している。これは今の現在とは違った風景だ。
「これは……過去の描写なのか? 今はヴァレリー様は封印から解き放たれているはずだが……ここはまるで昔のままのようだな……」
そう現在ではない今、それを目の当たりにしている状況……すると突然何処からともなく現れた白い服を着た女性がひたひたと裸足であるきながらクリスタルに近づきペタペタと触れている。
何やら女性は何かを調べているようだ。不思議な行為に声をかけずにはいられない。アルヴィスの問いかけに返ってきたのは意外な言葉だった。
「何やってるんだ? それは邪悪などない。害はないものだぞ?バーティミアスの守り神なんだが……」
「えっ? あなた何を言ってるの?これは魔物を呼ぶクリスタルだから急いで破壊しないと!」
バキバキッ!
そう言い放つと触れている結晶にありったけの悪意の籠もった魔力がどんどんクリスタルへと注がれていく!
バキンっ! ……ビキビキビキッ!
「なっ! お前ヴァレリー様に何しやがる!」
ヴァレリーのクリスタルに魔力が流れ込むと次々にヒビが入り、今にも砕けそうになる!アルヴィスは慌てて女性に駆け寄りクリスタルから無理矢理に引き剥がしそばの床に転げ落ちる女性。
「バカっお前何やってるんだ! これは邪悪なものじゃないって言ってるだろ! バーティミアスの人間なら誰でも知ってるはずだ!」
「破壊………しなくちゃ……」
そう言いながらまたアルヴィスに引き剥がされ勢い余った女性は床に叩きつけられながらもユラリと立ち上がり、次はクリスタルではなくアルヴィス目がけて手に魔法を帯びながら、魔法を発動し叫び飛びかかってくる。
「これは悪い者!……お前は邪悪な者!」
「何だお前。これは私の大切な家族だ! 立ちはだかるなら女でも容赦はしない!」
チャキッッ……
アルヴィスは剣をスッと抜き力を込めて女性を正面から斬り捨てる!
ザシュッ!
「ギャァァァ!」
ドシャッ……と倒れた女性からは何かキラキラとした光が斬り口から溢れ出している。砂のようなものが現れた。その様子を不思議そうに見ているアルヴィスがキラキラした何かに触れて見る。
「何だコレは? サラサラの砂?」
アルヴィスが金色のサラサラの砂に触れていると、その瞬間胸から首をシュッと出しているドラゴンが鳴いている。
「キュィィィ……」
「なんだ?どうしたんだ?」
(何だ? これが欲しいのか?)
アルヴィスはサラサラの砂に反応しているドラゴンをそっと手のひらに乗せて倒れている女性に近づけると砂がドラゴンのまわりにまとわりついていく。
「なんだ⁉」
ブワワワッ………
スゥゥゥ…… フワッ…… シュウゥゥ……
ドラゴンの体にキラキラとした砂が取り込まれていく。すると弱りきった体のドラゴンが少し回復しているように思えた。
「お前……この砂でさっきよりは元気になったのか?」
「キュイ! キュイッ! キュッ…………ゥゥ……」
光を吸収すると動きが活発になるドラゴン。だが全快には程遠く無茶をしそうな状況に慌てて胸の内側にしまってやる。
「ったく……無茶するなよ。はぁ…まったく…俺の周りはなぜこんなに無理をするやつばかりなんだよ。はぁ……お前も俺の大切な人みたいなやつだな」
「キュィィィィ………」
「砂が欲しけりゃまた手に入れた時にだしてやるからゆっくり休んでな」
どうやらアルヴィスはドラゴンを心配しているようだが……同時に今の自分の境遇も思い返しているようだった。
光が消えてなくなった女性の側からすっと立ち上がりヒビ割れているクリスタルに近寄る。
魔力によりひび割れしたクリスタルに手を触れようとすると、カッと封印されているヴァレリーが目を見開いた!
ビクッ!
「うわっ!ヴァレリー様?……生き返ったのか?」
突然目が開いたヴァレリーに驚いたアルヴィスだったが、そのヴァレリーと目が合った瞬間、光が迸り眩い光から目を逸らす。
そして次に目を開けると……また違う場所に立っていた。ここは………
「今度は……森?」
鬱蒼とした森には見覚えがある。これは……
シオンとティレニアの感動の再会もつかの間、何かが床に倒れる音がしてそこに居合わせたみんなが一斉に音がした方を向くと、フィーネが自力では力が入らずその場に崩れ落ちるように倒れてしまっていた。
「えっ⁉」
「フィーネ‼」
慌てたアルヴィス達が急いでフィーネの身体を起こしてみるが、凄まじく身体に熱がこもり熱いのを通り越している現実、そしてこんな状態で三日三晩をやり遂げたフィーネに驚きを隠せなかった。
「あつっ! 何だこの異常な熱は! フィーネっ! おいっフィーネしっかりしろっ!」
アルヴィスはフィーネの頬を手のひらでパシパシと触って起こしてみるのだが……苦悶の表情を浮かべて……苦しむフィーネは目も開けられず、
「ゔぅぅ………ヒュー……ヒューっ……」
〘……むっ……これは!………〙
かろうじて呼吸をしているその状態をみたヴァルが即座にフィーネの危機を把握しヴァルが実体化すると翼をバッと広げフィーネに向かって魔力を帯びながら咆える!
〘ヴァァウゥゥ‼〙
パァァァァァァ………
「こ……これは? 温かい……身体が軽くなる?」
キラキラキラ……
ヴァルが咆哮をあげるとフィーネの周りにキラキラと光る粒子が降り注ぎアルヴィスごと包み込んでいる。そしてそれと同時に身体が浮き上がり空に浮いた状態で二人が光とともに漂っている。その光がフィーネの身体に少しずつ付着すると少しだけフィーネの負荷が和らいでいるようにも思う。
「うぅ……うぅ…………ヴァル………」
苦悶の表情を浮かべるフィーネは目を閉じていながらも大粒の涙が頬を伝いとめどなく流れ落ちている。シェリルがフィーネに近づき様子をジッと見ているとアルヴィスがキュッとフィーネを抱きしめてながら訴えている!
「なぁどうか! ……どうかフィーネを救ってくれ!シェリル!」
〘魔力欠乏症だけの症状ではない……シェリル……〙
【…………これは!……チッ!こんな時にヤツの仕業じゃな!……】
「ヤツって………」
【これは弱ったフィーネの精神に……蝕み巣食おうとしているやつがおるのじゃ!】
「なんだと!しっかりしろっフィーネ!」
必死にフィーネを助けようとしているアルヴィスのその様子を見ていた飛翼族の姫はフィーネの身体に触れると同時にアルヴィスに告げながらアルヴィスに触れる。
【アルヴィスよ……向こうの世界で……フィーネを探し出せ!】
「向こうの世界? それはどういう……⁉」
【フィーネを助けたくば見つけるのじゃ!助かるかどうかはお主しだいじゃ!】
そうアルヴィスに言い残しシェリルがフィーネに魔力を注ぎはじめた。
【……聖獣に愛されし愛し子よ……その身に降りかかる厄災に……救いの紅き者よ……いざ行かん!……】
ヒュッ…… シュパンッ!
「うわっ!!」
シェリルがフィーネに魔力を注ぐとその瞬間に何処かに飛ばされてしまったアルヴィス。
「フィーネ⁉ ここはどこだ!」
先程まで抱きしめていたフィーネがふっと居なくなりはぐれてしまった事に慌てるが、周りを見渡すと一面真っ暗な空間が広がっている。何もない、ただただ暗闇が支配する空間だ。音もなく暗闇のみが続くこの場所……
「ここは……一体何処なんだ?」
アルヴィスがひたすら続く真っ暗な静寂の闇を歩き進んでいくと光がいくつか照らされた部屋が目の前に出現する。いや……正確に言うと光に照らされた扉があるのだ。アルヴィスが気になった一つの扉に手を触れてみると……
カチャリ……
「開いた! 一体この部屋はなんなんだ?」
扉が開きこの中に入れるようだ。アルヴィスは扉の中に足を踏み入れると……そこには一面の草原が現れ、先程の闇とは違い明るく風に草がなびきそよそよと揺れている。この爽やかな部屋の奥には、日が差し込む場所にたくさんの精霊達と戯れている女の子がいる。女の子は狼の背に乗っているが、急にこちらに気づいた女の子は突然現れたアルヴィスを警戒し、キッと睨みつけている。
「お前誰だ? なぜここにいる!」
「いや………まぁこの場合俺が悪いわな……」
殺気を放っている女の子がアルヴィスを睨みつけると、周りの精霊達も殺気立ってこちらを見ている。
「(オィオィ……物騒だな)俺はアルヴィス。戦うつもりはない。フィーネと言う女性を探してるんだが知らないか?」
「………………」
アルヴィスは尋ねたのだが返答に不思議な顔をする女の子。だが警戒していた女の子は大きな声で叫びながら口を開く。
「…ろろフィーネは私だ!だが……お前など私は知らぬ! 不届き者はここから立ち去れ!」
そう言いながら手を上げると一気にアルヴィスの身体が宙に浮く。
「うわっ!なにするっ!」
ゴゥゥゥ!
「去れ!」
「嘘だろっ⁉」
フィーネと名乗る女の子が立ち去れ! と言い放つと突然風が巻き起こり突風ごとアルヴィスは部屋から追い出されてしまった。
バタンッ! ……カチャリ……
どうやら先程の部屋には鍵がかかってしまったようだ。部屋の外に強制的に追い出されてしまったアルヴィスは真っ暗なフロアに転がるように床に放り出されていた。
「痛たっ……何なんだよ? ここは……。それにあれがフィーネなのか?」
吹き飛ばされたと思えばまた真っ暗な静寂な闇の空間に戻される。先程の部屋に戻ろうとしたのだが、その扉にはもう鍵がかかっていて入れないようだ。フィーネとは似つかぬ風貌……
少し悩んでいると、ふと先程とは違い肩がほんのり温かいのに気づくアルヴィス。この温かさはいきもの?
「何か……いるのか?」
そうアルヴィスが呟き右肩に触れると……小さな光と共にハッキリと肩に現れたのは小さなドラゴンだった。
「ピィィィ…… ピィィ…… 」
「ドラゴン?しかしお前弱ってるな大丈夫か?」
小さな体のドラゴンが肩にちょこんと乗っている。先程の草原から着いてきたのか? ヒョイッと肩にいるドラゴンを片手で掴んでアルヴィスの目の前に持ってくると、それはただただ弱りきっているようでフラフラっとしている様に見えた。
「絶対に大丈夫じゃないな……」
見兼ねたアルヴィスがふぅっとため息をつきながら胸の内側の服との間にそっと迎えてやる。
「肩なんて不安定で危ないぞ? 俺について来るならここにいろ。ここが一番安全だからな……」
「キュィィィ……」
ドラゴンの頭を軽く撫でてやると安心しながらアルヴィスの胸に収まっている。なぜだか放っておけないドラゴンも一緒に連れて行くことにしたようだ。
あてもなくあれからまた暗闇を彷徨い歩き続けていると、アルヴィスの前にはまた次の違う扉が光っている。入れと言わんばかりの扉にドアノブに手を触れてみると……
カチャリ……
鍵は開いており扉が開き中にアルヴィスは入っていく。すると次に現れたのは……
「えっ……ここは、バーティミアス城?」
そうアルヴィスの前に現れたのはバーティミアス城だ。なぜ城に? と不思議そうなアルヴィスだったが現れた風景は見なれた玉座の間。そしてヴァレリーが結晶と化している。これは今の現在とは違った風景だ。
「これは……過去の描写なのか? 今はヴァレリー様は封印から解き放たれているはずだが……ここはまるで昔のままのようだな……」
そう現在ではない今、それを目の当たりにしている状況……すると突然何処からともなく現れた白い服を着た女性がひたひたと裸足であるきながらクリスタルに近づきペタペタと触れている。
何やら女性は何かを調べているようだ。不思議な行為に声をかけずにはいられない。アルヴィスの問いかけに返ってきたのは意外な言葉だった。
「何やってるんだ? それは邪悪などない。害はないものだぞ?バーティミアスの守り神なんだが……」
「えっ? あなた何を言ってるの?これは魔物を呼ぶクリスタルだから急いで破壊しないと!」
バキバキッ!
そう言い放つと触れている結晶にありったけの悪意の籠もった魔力がどんどんクリスタルへと注がれていく!
バキンっ! ……ビキビキビキッ!
「なっ! お前ヴァレリー様に何しやがる!」
ヴァレリーのクリスタルに魔力が流れ込むと次々にヒビが入り、今にも砕けそうになる!アルヴィスは慌てて女性に駆け寄りクリスタルから無理矢理に引き剥がしそばの床に転げ落ちる女性。
「バカっお前何やってるんだ! これは邪悪なものじゃないって言ってるだろ! バーティミアスの人間なら誰でも知ってるはずだ!」
「破壊………しなくちゃ……」
そう言いながらまたアルヴィスに引き剥がされ勢い余った女性は床に叩きつけられながらもユラリと立ち上がり、次はクリスタルではなくアルヴィス目がけて手に魔法を帯びながら、魔法を発動し叫び飛びかかってくる。
「これは悪い者!……お前は邪悪な者!」
「何だお前。これは私の大切な家族だ! 立ちはだかるなら女でも容赦はしない!」
チャキッッ……
アルヴィスは剣をスッと抜き力を込めて女性を正面から斬り捨てる!
ザシュッ!
「ギャァァァ!」
ドシャッ……と倒れた女性からは何かキラキラとした光が斬り口から溢れ出している。砂のようなものが現れた。その様子を不思議そうに見ているアルヴィスがキラキラした何かに触れて見る。
「何だコレは? サラサラの砂?」
アルヴィスが金色のサラサラの砂に触れていると、その瞬間胸から首をシュッと出しているドラゴンが鳴いている。
「キュィィィ……」
「なんだ?どうしたんだ?」
(何だ? これが欲しいのか?)
アルヴィスはサラサラの砂に反応しているドラゴンをそっと手のひらに乗せて倒れている女性に近づけると砂がドラゴンのまわりにまとわりついていく。
「なんだ⁉」
ブワワワッ………
スゥゥゥ…… フワッ…… シュウゥゥ……
ドラゴンの体にキラキラとした砂が取り込まれていく。すると弱りきった体のドラゴンが少し回復しているように思えた。
「お前……この砂でさっきよりは元気になったのか?」
「キュイ! キュイッ! キュッ…………ゥゥ……」
光を吸収すると動きが活発になるドラゴン。だが全快には程遠く無茶をしそうな状況に慌てて胸の内側にしまってやる。
「ったく……無茶するなよ。はぁ…まったく…俺の周りはなぜこんなに無理をするやつばかりなんだよ。はぁ……お前も俺の大切な人みたいなやつだな」
「キュィィィィ………」
「砂が欲しけりゃまた手に入れた時にだしてやるからゆっくり休んでな」
どうやらアルヴィスはドラゴンを心配しているようだが……同時に今の自分の境遇も思い返しているようだった。
光が消えてなくなった女性の側からすっと立ち上がりヒビ割れているクリスタルに近寄る。
魔力によりひび割れしたクリスタルに手を触れようとすると、カッと封印されているヴァレリーが目を見開いた!
ビクッ!
「うわっ!ヴァレリー様?……生き返ったのか?」
突然目が開いたヴァレリーに驚いたアルヴィスだったが、そのヴァレリーと目が合った瞬間、光が迸り眩い光から目を逸らす。
そして次に目を開けると……また違う場所に立っていた。ここは………
「今度は……森?」
鬱蒼とした森には見覚えがある。これは……
0
お気に入りに追加
1,517
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる