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第1章 グランディール

17. 精霊召喚訓練

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 お茶会の一件からからしばらくたち……
 皇女リディリアのおかげで貴族令嬢達からの牽制のお茶のお誘いは一切なく、日々をのんびり過ごしていたフィーネ。だがフィーネはヴァルと契約してから毎日考えるだけでもウズウズしていることがあったのだった。
「ねぇーヴァルっこの間見た精霊さん達に以外にも他にもたくさんの精霊っているんだよね? 今はどこにいるんだろ? 逢ってみたいなぁ~」
 なんてことをボソッとフィーネが口にすると、肩にちょこんと乗っているヴァルが少し驚きながら口を開く。
〘フィーネ……フィーネが会いたいと願えば簡単に逢えるだろう……まぁ場所は選ぶとは思うが……〙
「えっ場所って大事なの? 何か条件があるの?」
 ヴァルによると精霊はその性質や相性、好む場所があり条件と使い手との精霊のシンクロ率で顕現しかつ術者との契約となる。
〘例えばだが……フィーネは今までで居心地が良いと思った場所はないのか? そういった場所が一番契約には適しているのだが……〙
 ヴァルに問われ今までで思い返してみると、グランディール以外で過ごした大樹のある新翼の大森林の話をする。すると静かに聞いていたヴァルが思わぬことをくちばしる。
〘行ってみないとわからないが……そこにも精霊はいるのではないのか?〙
 ヴァルが話している最中にその言葉でいてもたってもいられず、精霊への好奇心が勝りいそいそとフィーネが大森林に戻るための支度を始めている。支度中のフィーネの肩からパタパタと浮くヴァルは何をしているのかと覗き込んでいた。
「精霊が大森林にいるのなら、急いで大森林に戻らなきゃ。まだ大森林も一部でしか過ごしてないから見てないとこにいるのかも! それに私……いろんな精霊に出逢いたいもの!」
 新翼の大森林となると魔物との戦いもあるので自分が動きやすい服、アイテム……そんなものを次々と創造する。このグランディールで過ごした服とは大違いで探索や冒険者向きだ。
ポポンっ……
 あっという間に支度をし、肩にいるヴァルをなでる。ヴァルはどうやって新翼の大森林に向かうのか興味津々だ。
〘ん? フィーネは我の背に乗るのではないのか?〙
 ヴァルは龍属性。実体化をし大きくなれば乗れるらしい。新翼の大森林までなどひとっ飛びだ。
 だがフィーネはヴァルに頼るつもりはないらしい。
「んーん大丈夫。えーっと、こうしてっと……」
コトっ……
 アイテムバッグをゴソゴソしながらフィーネは部屋に何かを設置する。
〘なんだこれは?……〙
 なにやら光る石のついた小さな小箱を机に設置している。不思議そうに見るヴァルに説明してあげる。
「これは『ポイント』だよ。こうして壊されないように魔法かけて……」
ふわっ……
 一通り結界等の魔法を小箱にかけるとヴァルに微笑みかける。
「ヴァル捕まっててね。いくよ『新翼の大森林』!」
 フィーネが空に向かって指を指し『新翼の大森林』と言葉を発すると、一気に周りの風景がザザッと歪み……そして歪みが落ち着くとそこは緑と土の匂いがする。
 木々のざわめきににそよ風……あっという間にグランディール城から新翼の大森林へ瞬間移動したのだった。
「うん成功! イメージ通り大成功。ヴァルっ新翼の大森林ついたよー」
 一瞬の出来事にヴァルは少し驚きながらもその魔法に感心する。
〘フィーネは転移もできるのか?〙
 キョトンとしているフィーネ。全くもって魔法の認識はなかったからだ。
「えっ転移って? んーっ行ったことある場所で、さっきのポイントをあらかじめ設置したとこにはすぐに移動できると便利だなって創ったの。頭の中で場所を思い描いてヒョイって! 行きたい時にその場所に行けるっていいじゃない♪」
 簡単そうに楽しそうに語るフィーネだがヴァル忠告される。
〘やれやれ……フィーネ……ニンゲンはそんなに簡単に転移はできぬ……普通のニンゲンにはできないことだ……そなたは簡単にやってのけてはいるが稀有な存在というのを夢々忘れるな……〙
 ヴァルによると思い描いて場所移動というのは魔法ではないらしい。私特有の創造のようだが忠告は素直に受け止める。だが、ここは滅多に人が訪れない場所だ。
(グランやシオンがこの新翼の大森林の奥地には人はこないって行ってたから……今だけは好き勝手やらせてもらおう!)
「人目につくところではやめとくねヴァル。そっかぁみんなはこんなのは使えないのかぁ。ねぇみんなが使ってそうな魔法から少しずつ教えてもらえるかな?」
 ヴァルにいろいろ魔法の基礎を教えてもらいながら、はじめて大森林で暮らした時のテント等をだし休憩することに。
ポンっポポンっ……
 テントやベッド、火やベンチ一式がでてくる。もちろん結界が張ってあるのでフィーネに危険はない。
 一通り必要なものを設置し休憩地点を作ったら、キャンプより西に歩き出す。森の奥にある木々に囲まれつつも開けた場所に向かうと、ヴァルが修行に適した場所はここだなと決める。
〘ふむ……フィーネこちらで召喚士としての基礎訓練を行う……『召喚士』とは精霊を契約にて召喚できるいにしえの者……というのは理解してるな?〙
 ヴァルの話に静かに頷く。
「うん精霊と契約して力を貸してもらえる……の話だよね。ヴァルと契約した時みたいにお互いが納得して契約すると、魔力を分け与える代わりに召喚できるんだよね?」
 一般の魔術師や司祭、魔女、聖女と呼ばれる者は契約こそはできるが、精霊の一部魔力を分け与えてもらい魔法を具現化しているだけ。
 召喚士は契約を元に精霊を使役し様々な事ができるらしい。
〘魔力で攻撃や回復補助するだけが魔術師や司祭達にできる事……『召喚士』は精霊を取り込み自分の力にと思いのまますることができる……〙
 精霊を取り込んで自分の力にする⁉ 何それ合体しちゃうわけ? 驚いているフィーネ。
「えっ! ヴァルも取り込みができるの⁉」
 説明するよりは手っ取り早くまずは体験してみるとわかるとヴァルに実装してみるように促される。
〘まぁ……実際にやってみたらわかるし早いな……我が名をフルネームで喚んでみるがいい……〙
 フィーネは深呼吸をし……ヴァルの名前を喚ぶ。
「『ヴァルガルムート』」
カッ‼……
 名前を呼んだその瞬間カッ! と光が走り目を閉じる。フィーネの体がほんのり温かい……ゆっくりと温かさが落ち着いたので目を開いてみると体に変化がおとずれる。
「あれっ? 何これ私じゃないみたい⁇」
 フィーネが驚くのにも無理はない。亜麻色の髪色は真っ白? 白銀のシルバーに輝き、髪の毛もサイドは前下りボブで後ろは腰くらいまでのロングヘア。
 服は薄い青色で光に当たるとキラキラとひかり、柔らかい素材だが見た目に反して丈夫だ。恐らく防御力は高いのだろう。
 スカートにロングブーツの衣装になる。髪の色はもとより長さまで変わるとは……終始自分の姿に興味津々だ。
〘ニンゲンは忘れたかもしれないが……『召喚士』は精霊を喚び……身体に取り込み自身を強化、スキルアップする『精霊術士』と言うことだ……我は色がないクラスゆえシルバーな色になってしまうが……喚ぶ精霊により髪の色はもとより服の色などもすべて変わってしまう……だが召喚を解いてしまうと……〙
シュンっ……
「元の私だ……」
 そう喚びだす精霊の属性やクラスによって服装はもちろん、髪型や色までその精霊に染まるということ。ただ精霊の相性によっては倍増、半減の能力となってしまうのが難点だ。
〘フィーネは創造のスキルもあるから……相反する精霊を取り込んでも魔法は半減することはないだろう……〙
 なんとも不思議な魔法……もとより『召喚士』。
 精霊の種類と属性で衣装や髪まで変わってしまうなんて……
〘ちなみに……精霊は魔術師と契約する際には髪の色を見てフィーリングをみている……例えば赤色系だと火の精霊……水色系だと水の精霊みたいに……〙
 ヴァルの話にわくわくしながら目を輝かせて聞き入っているフィーネ。確かに炎の精霊を契約していたレベッカの髪色は真っ赤だった。
「火と上位の炎……水と上位の氷……風と上位の霧……土と上位の岩……それにヴァルみたいに龍属性がいる。じゃあまだ見つけられてない属性も?」
 期待の眼差しでヴァルを見つめるフィーネ。
〘ないわけではなく……あるにはあるが……〙
 ヴァルが言葉を詰まらせる。
〘あるが……ニンゲンに知られていない属性となると……数千年以上ニンゲンと契約がなされていない者……おいそれとは簡単に契約はできぬだろうな……ニンゲンに使役されないプライドもそのグラスの精霊や聖獣は持ち合わせてあるだろう……〙
 精霊はそれぞれ信念がある。ニンゲンと寄り添うもの、ニンゲンに使役されないプライドの持ち主までいろいろだ。特にヴァルクラスの聖獣は気難しく契約に至るには己の力を納得させる必要があるという。
 ふふふっ。フィーネが期待を込めて笑う。
「そうでないと! そう簡単にいかないからいいんだよね。ヴァルが知ってる精霊にこれからたくさん逢えるといいなぁ!」
 楽観しているフィーネに寄り添うヴァル。
〘さぁ……この大森林にいる精霊と対話……その前に我を意のままに使いこなしてみよ! まずは我を己の身体になじませるのだ! 使いこなせてこその召喚士……ここには幸い魔物が山程現れ……練習出来る場は整っている……我を使いこなせてみせよ!〙
シュンッ‼
 フィーネはヴァルを纏い、弓を具現化し大森林の奥でひたすらに修行をするのであった。
 そして二人の精霊修行の時が流れる……
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