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本編
家族会議とその行方【1】
しおりを挟むおれが生まれたこの国は、絶倫で女好きでサディスト趣味のクソ皇帝が治めている。
正妃の他に100人以上愛妾を囲うのは当たり前。上は50代、下は10代前半とストライクゾーンも幅広く、時には愛妾では物足りず街の娼館に降りることもあるらしい。熟女好きなのかロリコンなのか、どっちかにしろよ。ド変態。
だが意外なことに、この種馬皇帝には子供がたった2人しかいない。
その子供というのが、おれとルクスである。
本名はシレノスとルペルクス。その後ろに無駄に長い名を持っている。
おれと弟のルクスは、生まれた日が3日しか違わない。もちろん母親が同じはずもなく、ルクスは正妃から、おれは身分の低い愛妾から産まれた。
おれたちは超絶仲の悪い母親たちによって、それぞれ競い合うように、敵対する運命として育てられたが───何故かその仲の悪さは、息子のおれ達には受け継がれなかったらしい。
4才の頃偶然庭で遭遇してからつるみはじめ、今ではすっかり仲良し兄弟だ。
だがおれたちには、どちらかがあのド変態皇帝の跡を継ぐという屈辱的な使命がある。
10歳になり世間が少し見えてくると、流石のおれたちもその件を重要視するようになった。
「なあ、どっちが皇帝なる?」
「俺は嫌だ。お前がなれよ」
「いやお前が」
「いやいやお前が」
第1皇子のおれと第2皇子のルクスでは長子相続制にのっとればおれが後を継ぐのが自然だが、その血の純度の話をするならば間違いなくルクスの方に分があるだろう。
正妃であるルクスの母親は、様々な国の王族の血を引いているお姫様の中のお姫様だ。そしておれの母親は高級娼館でぶっちぎりの人気を誇っていた娼婦の中の娼婦である。
しかも母は変態の目を盗んで複数の王侯貴族とも関係を持っているクソビッチなので、正直変態の血を引いているかすら疑わしい。それがおれである。おかげで皇帝のおれを見る目は人が汚物を見た時のソレだ。おれ自身変態にもクソビッチにも似ていない自覚があるので、皇帝になれるとは全く思っていない。
ルクスが優勢なのはそれだけではない。
これは本人に言うとめちゃくちゃ呆れられるのだが───ルクスはめちゃくちゃ、顔がいい。
いや、大事だろ。顔。
だって将来、きんぴかの玉座にふんぞり返る奴だぞ?男前の方がいいに決まってる。
初夏の麦畑のような黄金の髪は皇帝と呼ばれるのにぴったりだし、涼やかなアイスブルーの瞳は男女問わず視線を引きつける底知れない魅力がある。控えめにいって超イケメン。羨ましい。爆発しろ。
まあこの18年間、『まあおれが皇帝になることはないだろうな』と思い生きてきた。
皇帝もおれと同じ意見だと。
おれたちの意見を聞くまでもなく、立太子の儀ではルペルを指名すると。
───だがおれ達は、完全に忘れていた。
「お前ら二人で殺し合いをしてもらう。生き残った方が皇太子だ」
おれ達の父親がド変態で、絶倫で、種馬で、サディストで、最高に頭がイカれているということを。
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