25 / 33
ルートF(フェアリー) ※十話から分岐
二十話 決戦、不幸の妖精メカ! 後
しおりを挟む
「「オーバークロック!」」
ボクとメカは同時に加速する。
深い森の中を流れる風は動きを止め、世界は音を鈍らせる。
落ちる木の葉はその速度を落とし、無重力の中を泳ぐようにゆっくりと宙を泳ぐ。
これがオーバークロック……か。
これはすごい。
世界がよく見える。
一つ一つの事象に落ち着いてゆっくりと対処できる。
でも今に限ってはそうはいかない。
メカは真正面から全速力で距離を詰め魔剣でボクを斬りつける。
ボクは右手の籠手でその攻撃を受け止め、左手でフレイムスフィアを出してメカへ押し込む。
メカは背後に木がない事を確認しながら後方へ飛ぶ。
(クソっ、鎧が硬い)
(我の刀身で切れぬとは……宝石類を使っているな。それも魔力で強化されている)
(だが鎧が硬いのはこっちも同じはず。条件は同じだ! 何度も攻撃するだけだ!)
メカがボクに向かってきた途端。
ボクはメカに向けてフレイムブラスターを放つ。
(何っ!?)
メカはフレイムブラスターを避ける。
でもボクはメカを執拗にフレイムブラスターで追いかけ続ける。
(火炎放射器かよチクショウ! さっきまでこんな魔法使わなかったろ! どうして今になって……)
焦るメカ。
徐々にフレイムブラスターの炎はメカの体を捉え始める。
(熱っ……こいつ、僕をこのまま燃やす気か? いや、これは……)
気がつくと周囲は火の海になっていた。
スローモーションの中で燃え始めた木々。
これまでのボクはこの深い森が火事になる事を懸念していた。
だからわざわざフレイムブラスターではなくフレイムスフィアを手に出した状態で近距離で戦っていた。
でももう躊躇ったりはしない。
目の前の敵を倒すためならどんな手段でも使う。
メカはここに来るまでにオーバークロックを使っている。
つまりフル充電ではない。
対してボクは使い方を知らなかったので一度も鎧を出さなかったしオーバークロックなんてしていない。
メカの指輪のバッテリー……魔力が完全に尽きればボクの勝ち。
オーバークロックから投げ出されたメカは大量の熱エネルギーに晒される。
逃げ場なんてない。
ボクはこれまでフレイムスフィアを使い続けた。
この深い森がいかに湿気ていようと、高温になれば水分は飛ぶ。
この森は今、よく燃える。
ボクの狙いは二つ。
一つは完全にメカを燃やし尽くす事。
いくら再生出来ると言っても原型がなければ再生はできない。
そしてもう一つの狙いは、高熱によってメカの機能を完全に停止させる事。
いくら高性能でも機械は熱に弱い。
メカの動きが止まった。
正確には止まったかのようにゆっくりになった。
それと同時に鎧が光の粒子となって空気中に溶けていく。
ボクは格好の的となったメカ目掛けてフレイムブラスターを放ち続ける。
ボクの体感での三十秒、現実の時間にしてみれば三秒程度、メカは炙られ続けた。
ボクはオーバークロックを解除し、メカの様子を見る。
「うあああああああああああああああっ!!!」
メカの体はドロドロに溶け、地面と同化していった。
その場に残ったのは魔剣のみだった。
魔剣には興味がない。もうメカは死んだ。
ならこの魔剣が戦う意味もないのだろう。
「思い知ったかボク」
ボクは捨て台詞を吐き、その場から去ろうとする。
その時、ドロドロの地面から光の針のようなものが飛び出し、ボクの頭を貫いた。
痛みは無い。
だが脳内を駆け抜けてゆく無数の「情報」。
これは……メカの記憶だ。
ボクはメカの記憶を追体験する事となった。
ボクとメカは同時に加速する。
深い森の中を流れる風は動きを止め、世界は音を鈍らせる。
落ちる木の葉はその速度を落とし、無重力の中を泳ぐようにゆっくりと宙を泳ぐ。
これがオーバークロック……か。
これはすごい。
世界がよく見える。
一つ一つの事象に落ち着いてゆっくりと対処できる。
でも今に限ってはそうはいかない。
メカは真正面から全速力で距離を詰め魔剣でボクを斬りつける。
ボクは右手の籠手でその攻撃を受け止め、左手でフレイムスフィアを出してメカへ押し込む。
メカは背後に木がない事を確認しながら後方へ飛ぶ。
(クソっ、鎧が硬い)
(我の刀身で切れぬとは……宝石類を使っているな。それも魔力で強化されている)
(だが鎧が硬いのはこっちも同じはず。条件は同じだ! 何度も攻撃するだけだ!)
メカがボクに向かってきた途端。
ボクはメカに向けてフレイムブラスターを放つ。
(何っ!?)
メカはフレイムブラスターを避ける。
でもボクはメカを執拗にフレイムブラスターで追いかけ続ける。
(火炎放射器かよチクショウ! さっきまでこんな魔法使わなかったろ! どうして今になって……)
焦るメカ。
徐々にフレイムブラスターの炎はメカの体を捉え始める。
(熱っ……こいつ、僕をこのまま燃やす気か? いや、これは……)
気がつくと周囲は火の海になっていた。
スローモーションの中で燃え始めた木々。
これまでのボクはこの深い森が火事になる事を懸念していた。
だからわざわざフレイムブラスターではなくフレイムスフィアを手に出した状態で近距離で戦っていた。
でももう躊躇ったりはしない。
目の前の敵を倒すためならどんな手段でも使う。
メカはここに来るまでにオーバークロックを使っている。
つまりフル充電ではない。
対してボクは使い方を知らなかったので一度も鎧を出さなかったしオーバークロックなんてしていない。
メカの指輪のバッテリー……魔力が完全に尽きればボクの勝ち。
オーバークロックから投げ出されたメカは大量の熱エネルギーに晒される。
逃げ場なんてない。
ボクはこれまでフレイムスフィアを使い続けた。
この深い森がいかに湿気ていようと、高温になれば水分は飛ぶ。
この森は今、よく燃える。
ボクの狙いは二つ。
一つは完全にメカを燃やし尽くす事。
いくら再生出来ると言っても原型がなければ再生はできない。
そしてもう一つの狙いは、高熱によってメカの機能を完全に停止させる事。
いくら高性能でも機械は熱に弱い。
メカの動きが止まった。
正確には止まったかのようにゆっくりになった。
それと同時に鎧が光の粒子となって空気中に溶けていく。
ボクは格好の的となったメカ目掛けてフレイムブラスターを放ち続ける。
ボクの体感での三十秒、現実の時間にしてみれば三秒程度、メカは炙られ続けた。
ボクはオーバークロックを解除し、メカの様子を見る。
「うあああああああああああああああっ!!!」
メカの体はドロドロに溶け、地面と同化していった。
その場に残ったのは魔剣のみだった。
魔剣には興味がない。もうメカは死んだ。
ならこの魔剣が戦う意味もないのだろう。
「思い知ったかボク」
ボクは捨て台詞を吐き、その場から去ろうとする。
その時、ドロドロの地面から光の針のようなものが飛び出し、ボクの頭を貫いた。
痛みは無い。
だが脳内を駆け抜けてゆく無数の「情報」。
これは……メカの記憶だ。
ボクはメカの記憶を追体験する事となった。
1
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ハイドランジアの花束を
春風 紙風船
恋愛
そこは静かな田舎の町。
そこには明日が見える不思議な力を持つ学校の先生ロロがいる。
ロロはある日の嵐の夜、美しい薬屋さんのルルと出会う。
ロロはルルの明日を見る。
ロロはルルを守り続ける事が出来るだろうか。
ハイドランジア、それは雨が良く似合う。
ハイドランジアは色によって意味を変える。
移り気、無情、高慢、家族団欒、元気な女性、寛容、それに辛抱強い愛情・・・
彼の全てを見守ってきたクマのぬいぐるみが語る、心に花束を贈る物語。
ぬいばな
しばしば
ライト文芸
ゲーセンで取ったぬいぐるみに、命が宿っていた──
マスコットサイズの「ぬい」の兄弟・千景(ちかげ)と碧生(あおい)。
何の変哲もないわたと布のフリをしてるけど、実は動くし喋るし料理や発明だってできる、高度な知能を持った不思議な生き(?)物だ。
中学2年生のヒデアキは、ぬい兄弟に頼まれてツイッターの写真投稿を手伝うことに。
◆◆◆
★Ep.1『ぬいと映えゴハン』
ぬい撮りツイッターの手伝いを始めたヒデアキ。ぬいと一緒にコラボカフェを満喫。母のオタク友達はヒデアキの学校の先生で…
★Ep.2『ぬいと鍵つきアカウント』
母は鍵付きアカウントを持っていた!? 「アンソロ」ってなんだ!? ぬいと共に謎を追う。
★Ep.2.5『ぬいと、ていねいなくらし』
少しずつ明らかになる、ぬいの生態。
★Ep.3『ぬいと、歌ってみた』
歌を売るという仕事について。
◆◆◆
楽しいぬい撮りでフォロワーを増やしたい!
ニンゲンとぬいで結託して「いいねいっぱい」を目指す。
でも現実はそんなに簡単ではなく……
可愛いぬいと、ゆるりほっこり、ときどき切ないファミリードラマです。
──ニンゲンを幸せにすることが、「ぬい」の仕事だ!
(※「カクヨム」「小説家になろう」にも同じものを投稿しています)
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
伯爵夫人のお気に入り
つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。
数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。
喜ぶ伯爵夫人。
伯爵夫人を慕う少女。
静観する伯爵。
三者三様の想いが交差する。
歪な家族の形。
「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」
「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」
「家族?いいえ、貴方は他所の子です」
ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。
「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる