16 / 33
ルートF(フェアリー) ※十話から分岐
十三話 死闘、チヘ・ド・ハーク!
しおりを挟む
「フレイムスフィア!」
ボクはレアルを放すと両手からフレイムスフィアを出し、犬の化け物に押し込む。
「グゴゴゴォォォ!!」
犬の化け物は既に飛び出している目を更に飛び出し充血させて苦しそうに叫ぶ。
犬の化け物の体は赤く染まり、体毛はメラメラと燃え始めた。
「グガハッ!!」
犬の化け物は口から大量の血飛沫を上げた。
異常な光景。
ボクの攻撃によってそうなったわけじゃない。
この犬の化け物はボクの攻撃への対抗策として血を使っていた。
血の噴水によってフレイムスフィアが齎した火だるま状態は鎮火された。
「知性があるのか反射的なものか……どっちにしろ厄介なワンちゃんだ! でも、血は無限ってわけじゃないよね!?」
ボクは再びフレイムスフィアを作り、今度はブラスターを発動させ、両手で「フレイムブラスター」を犬の化け物目掛けて発射する。
火炙りにされた犬の化け物は再び血の噴水での鎮火を試みた。
「体から力が抜けていく……でも、ここで止めるわけにはいかないんだ!! ボクが守るんだあああああああっ!!」
ボクはフレイムブラスターを噴射し続けたまま踏ん張る。
ボクは目の前の敵の体力を削る事に成功している。
敵は干からびかけている。
でもボクの体の中で何かがブチブチと千切れてゆく。
それと同時にボクの体は急速に熱を失っていった。
両手が悲鳴をあげている。
誰かに両手を切り落として欲しいほどの痛みがボクを襲う。
気持ち悪い。
今すぐに体に手を突っ込んで自分の中にあるモノ全てを引きずり出してしまいたいほどの吐き気。
逃げ出したい。
投げ出したい。
楽になりたい……!
その時ふと脳裏にミルクウィードさんの言葉が浮かび上がった。
──「帰りたいと願えばいつでも帰ることができます」
本当に元の世界に帰れる?
この辛い今から逃げ出す事が出来る?
何もかも投げ出して、あの幸せな生活に……?
ダメだッ!!
ボクは逃げない、投げ出さない。
ボクはレアルを守る。
幸せの妖精として、負けるわけにはいかない。
みんなに笑顔でいて欲しい。
レアルにも、受付のおじさんにも、街で優しくしてくれた人たちにも、アオノにも。
暗い顔も、悲しい顔も、君たちには似合わない。
君たちに似合うのは幸せな笑顔だ。
ボクにもっと見せてよ。
その幸せが、ボクの生きる意味だッ!!
両手なんかくれてやる。
ありったけの魔力を搾り出せ。
無くなっても根性を魔力に変えろ。
足りない分は他のいらないもので補え。
今までの甘え切ったボク、必要なし!
これから先の情けないボク、必要なし!
痛みや苦しみに怖気付くボク、必要なし!
「全部出し切れえええええええええええええええええぇぇーーーーーーっ!!!」
ボクの目は黒から白へと変わる。
一際大きなフレイムブラスターが犬の化け物を包み、一瞬にして灰へと変えた。
灰は赤い光を帯びて宙を舞う。
なんて幻想的な風景なのだろうか。
でもボクにはもう殆ど見えない。
視界は色褪せモノクロになった。
そして徐々に輪郭すらも曖昧になり、ボクの目はついに何も映さなくなった。
ボクの手は作るのに失敗したクッキーのようにボロボロと崩れ落ちる。
いっそ気持ちがいい。
その崩壊は身体中に広がり、頭と胴の繋がる部分が失われ、ボクの頭は地面に落ち、砂と化した。
「うさぎさん……ぼくを守るために……死んで──」
「ませんよ」
レアルの言葉の続きを奪ったのはミルクウィードさんだった。
「幸せの妖精サラに祝福あれ!」
ミルクウィードさんの掛け声に合わせ、ボクの残骸が集まり、形を成す。
ボクは元のかわいいうさぎのぬいぐるみの姿に戻った。
「これは……!」
「だから死ぬ事はないんですよ。死ぬほど苦しくても死にはしません」
「うさぎさん……! よかった!」
レアルは再びボクに抱きついてきた。
「あらあらあらあらチヘ・ド・ハークを倒しちまったわねえ。あらあらあらあらマティココックですら逃げるしか無かったこの魔獣を。あらあらあらあら幸せの妖精ってのは伊達じゃないみたいだね。あらあらあらあらこれは魔王様に報告しなきゃねえ。あらあらあらあら」
地上でのボクの戦闘の様子は上空五百メートルから桃色の飛竜──ワイバーンの背中に乗る何者かによって見られていた。
その何者かはボクの戦闘が終わったのを確認するとワイバーンの背中にナイフを刺し、帰還よ、と命令する。
ワイバーンはその命令通り翼を羽ばたかせ空気を泳いでその場を後にした。
ボクはレアルを放すと両手からフレイムスフィアを出し、犬の化け物に押し込む。
「グゴゴゴォォォ!!」
犬の化け物は既に飛び出している目を更に飛び出し充血させて苦しそうに叫ぶ。
犬の化け物の体は赤く染まり、体毛はメラメラと燃え始めた。
「グガハッ!!」
犬の化け物は口から大量の血飛沫を上げた。
異常な光景。
ボクの攻撃によってそうなったわけじゃない。
この犬の化け物はボクの攻撃への対抗策として血を使っていた。
血の噴水によってフレイムスフィアが齎した火だるま状態は鎮火された。
「知性があるのか反射的なものか……どっちにしろ厄介なワンちゃんだ! でも、血は無限ってわけじゃないよね!?」
ボクは再びフレイムスフィアを作り、今度はブラスターを発動させ、両手で「フレイムブラスター」を犬の化け物目掛けて発射する。
火炙りにされた犬の化け物は再び血の噴水での鎮火を試みた。
「体から力が抜けていく……でも、ここで止めるわけにはいかないんだ!! ボクが守るんだあああああああっ!!」
ボクはフレイムブラスターを噴射し続けたまま踏ん張る。
ボクは目の前の敵の体力を削る事に成功している。
敵は干からびかけている。
でもボクの体の中で何かがブチブチと千切れてゆく。
それと同時にボクの体は急速に熱を失っていった。
両手が悲鳴をあげている。
誰かに両手を切り落として欲しいほどの痛みがボクを襲う。
気持ち悪い。
今すぐに体に手を突っ込んで自分の中にあるモノ全てを引きずり出してしまいたいほどの吐き気。
逃げ出したい。
投げ出したい。
楽になりたい……!
その時ふと脳裏にミルクウィードさんの言葉が浮かび上がった。
──「帰りたいと願えばいつでも帰ることができます」
本当に元の世界に帰れる?
この辛い今から逃げ出す事が出来る?
何もかも投げ出して、あの幸せな生活に……?
ダメだッ!!
ボクは逃げない、投げ出さない。
ボクはレアルを守る。
幸せの妖精として、負けるわけにはいかない。
みんなに笑顔でいて欲しい。
レアルにも、受付のおじさんにも、街で優しくしてくれた人たちにも、アオノにも。
暗い顔も、悲しい顔も、君たちには似合わない。
君たちに似合うのは幸せな笑顔だ。
ボクにもっと見せてよ。
その幸せが、ボクの生きる意味だッ!!
両手なんかくれてやる。
ありったけの魔力を搾り出せ。
無くなっても根性を魔力に変えろ。
足りない分は他のいらないもので補え。
今までの甘え切ったボク、必要なし!
これから先の情けないボク、必要なし!
痛みや苦しみに怖気付くボク、必要なし!
「全部出し切れえええええええええええええええええぇぇーーーーーーっ!!!」
ボクの目は黒から白へと変わる。
一際大きなフレイムブラスターが犬の化け物を包み、一瞬にして灰へと変えた。
灰は赤い光を帯びて宙を舞う。
なんて幻想的な風景なのだろうか。
でもボクにはもう殆ど見えない。
視界は色褪せモノクロになった。
そして徐々に輪郭すらも曖昧になり、ボクの目はついに何も映さなくなった。
ボクの手は作るのに失敗したクッキーのようにボロボロと崩れ落ちる。
いっそ気持ちがいい。
その崩壊は身体中に広がり、頭と胴の繋がる部分が失われ、ボクの頭は地面に落ち、砂と化した。
「うさぎさん……ぼくを守るために……死んで──」
「ませんよ」
レアルの言葉の続きを奪ったのはミルクウィードさんだった。
「幸せの妖精サラに祝福あれ!」
ミルクウィードさんの掛け声に合わせ、ボクの残骸が集まり、形を成す。
ボクは元のかわいいうさぎのぬいぐるみの姿に戻った。
「これは……!」
「だから死ぬ事はないんですよ。死ぬほど苦しくても死にはしません」
「うさぎさん……! よかった!」
レアルは再びボクに抱きついてきた。
「あらあらあらあらチヘ・ド・ハークを倒しちまったわねえ。あらあらあらあらマティココックですら逃げるしか無かったこの魔獣を。あらあらあらあら幸せの妖精ってのは伊達じゃないみたいだね。あらあらあらあらこれは魔王様に報告しなきゃねえ。あらあらあらあら」
地上でのボクの戦闘の様子は上空五百メートルから桃色の飛竜──ワイバーンの背中に乗る何者かによって見られていた。
その何者かはボクの戦闘が終わったのを確認するとワイバーンの背中にナイフを刺し、帰還よ、と命令する。
ワイバーンはその命令通り翼を羽ばたかせ空気を泳いでその場を後にした。
1
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ハイドランジアの花束を
春風 紙風船
恋愛
そこは静かな田舎の町。
そこには明日が見える不思議な力を持つ学校の先生ロロがいる。
ロロはある日の嵐の夜、美しい薬屋さんのルルと出会う。
ロロはルルの明日を見る。
ロロはルルを守り続ける事が出来るだろうか。
ハイドランジア、それは雨が良く似合う。
ハイドランジアは色によって意味を変える。
移り気、無情、高慢、家族団欒、元気な女性、寛容、それに辛抱強い愛情・・・
彼の全てを見守ってきたクマのぬいぐるみが語る、心に花束を贈る物語。
ぬいばな
しばしば
ライト文芸
ゲーセンで取ったぬいぐるみに、命が宿っていた──
マスコットサイズの「ぬい」の兄弟・千景(ちかげ)と碧生(あおい)。
何の変哲もないわたと布のフリをしてるけど、実は動くし喋るし料理や発明だってできる、高度な知能を持った不思議な生き(?)物だ。
中学2年生のヒデアキは、ぬい兄弟に頼まれてツイッターの写真投稿を手伝うことに。
◆◆◆
★Ep.1『ぬいと映えゴハン』
ぬい撮りツイッターの手伝いを始めたヒデアキ。ぬいと一緒にコラボカフェを満喫。母のオタク友達はヒデアキの学校の先生で…
★Ep.2『ぬいと鍵つきアカウント』
母は鍵付きアカウントを持っていた!? 「アンソロ」ってなんだ!? ぬいと共に謎を追う。
★Ep.2.5『ぬいと、ていねいなくらし』
少しずつ明らかになる、ぬいの生態。
★Ep.3『ぬいと、歌ってみた』
歌を売るという仕事について。
◆◆◆
楽しいぬい撮りでフォロワーを増やしたい!
ニンゲンとぬいで結託して「いいねいっぱい」を目指す。
でも現実はそんなに簡単ではなく……
可愛いぬいと、ゆるりほっこり、ときどき切ないファミリードラマです。
──ニンゲンを幸せにすることが、「ぬい」の仕事だ!
(※「カクヨム」「小説家になろう」にも同じものを投稿しています)
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
田村涼は異世界で物乞いを始めた。
イペンシ・ノキマ
ファンタジー
異世界に転生した田村涼に割り振られた職業は「物乞い」。それは一切の魔術が使えず、戦闘能力は極めて低い、ゴミ職業であった。おまけにこの世界は超階級社会で、「物乞い」のランクは最低の第四階級。街の人々は彼を蔑み、馬鹿にし、人間扱いさえしようとしない。そのうえ、最近やってきた教会長はこの街から第四階級の人々を駆逐しようとさえしている。そんななか、田村涼は「物乞い」には”隠されたスキル”があることに気がつく。そのことに気づいたところから、田村涼の快進撃が始まる――。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる