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ルートS(サラ) ※十話時点から分岐
十一話 魔族との因縁を聞きました。※ルートF二十八話より継続
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ボクたちは試験場を後にして、街の中を観光する事にした。
この街のメインの通りは一通り見たけど、少し裏に入ったところはまだ見ていない。
ボクは街並みや人を眺めながらアオノと話しながら歩く。
「アオノは冒険家になろうとは思わないの?」
「ああ。まあ人並みになりたいって気持ちはあったが……でも村長になる方が性に合ってる。オレはお山の大将でしかないからな。自分の器を超える何かをすれば必ず酷い何かが帰ってくる。さっき見たろ、あの受付のおっさん。あれだけの魔法が使えてああなったんだ。冒険するってのはオレたちが考えている以上に過酷らしい。まあ過酷なのはオレも痛いほど分かってるつもりだ」
アオノは拳を強く握り締めて地を睨む。
きっと過去に何かあったに違いない。
ボクは軽々しく訊いちゃダメなんだろうと思いながらも、好奇心に負けて事情を聞く事を決意する。
何故か、そうすべきだと思ったから。
「アオノ。何があったか話してよ。ボクたち友達だよね。もっとアオノの事知りたいんだ」
「サラ……」
アオノは目を閉じ、一呼吸すると話し始めた。
「オレの生まれは富豪一家でな。オレはいつでも好きなものが食べられるしいつでも寝たり遊んだりする事が許されたんだ。だがオレの兄さん……クロノはずっと一人で勉強や魔法を頑張り続けてきた。一家の跡取りさ。両親はオレを甘やかし、兄さんはそんなオレを嫌っていた。ある日魔族がオレの家を襲撃してきた。両親は殺され、兄さんは半殺しにされて魔族に連れていかれた。今頃拷問でもされているに違いない。兄さんは最後、物凄く悔しそうな顔をしてた。何で自分ばかりこんな目に遭うんだ、とでも訴えているかのような顔だった。才能があって努力もして、それなのに魔族に歯が立たずに悔しかったんだろうな。オレも悔しい。連れて行かれるべきはオレだった。オレはただ遊んでばかりのバカな子供だった! オレが犠牲になるべきだった! オレが兄さんを地獄に追いやってしまったんだ! オレがもっと努力していれば……二人なら何とかなったかもしれない。戦えたかもしれない。勝てたかもしれない。両親を救えたかもしれない……もうどれだけ後悔しても遅いが、な」
アオノはこちらに目を向ける。
その目は怒りと悲しみに満ちていた。
ボクは能天気だった。
アオノがこんなに苦しい人生を送っていたのに。
ボクはただ環境に恵まれて今まで生きてきただけだ。
情けない、恥ずかしい。
「オレはもう二度と同じ過ちは繰り返さない。行く宛のないオレを受け入れてくれた村のみんなをオレは守る。だからオレは村長になる事を望んだんだ。選ばれたからなるんじゃない。オレの意思だ」
アオノは涙を流しながら微笑んでみせた。
ボクは少しの間、何と言えばいいのか考えた。
でも幸せな人生を送ってきたボクには人の苦しみに寄り添う資格はない。
だからボクはボクとして答える事にした。
「ありがとうアオノ。話してくれて。アオノが話してくれなかったらボクは綺麗事野郎になってたと思う。ボクに一人の人間として生きる資格を与えてくれて、ボクを信頼してくれて、ありがとう。お礼になるかどうか分からないけど……ボクは魔族を見つけたら少しでも多く倒していく事にするよ。アオノの敵はボクの敵だ。アオノが守りならボクは攻めだ。村長さんがお金を出してくれなきゃボクは冒険家になれなかったし、村の脅威を無くすって意味でも、ボクは魔族を躊躇なく倒す事を約束するよ」
「ああ。ありがとな、親友」
ボクとアオノは拳と拳を合わせた。
まあボク拳握れないんだけどね。
その様子を物陰から見ていた魔族の少年は鬼のような形相を浮かべこちらを睨んでいたが、ボクたちはそれを知る由もなかった。
この街のメインの通りは一通り見たけど、少し裏に入ったところはまだ見ていない。
ボクは街並みや人を眺めながらアオノと話しながら歩く。
「アオノは冒険家になろうとは思わないの?」
「ああ。まあ人並みになりたいって気持ちはあったが……でも村長になる方が性に合ってる。オレはお山の大将でしかないからな。自分の器を超える何かをすれば必ず酷い何かが帰ってくる。さっき見たろ、あの受付のおっさん。あれだけの魔法が使えてああなったんだ。冒険するってのはオレたちが考えている以上に過酷らしい。まあ過酷なのはオレも痛いほど分かってるつもりだ」
アオノは拳を強く握り締めて地を睨む。
きっと過去に何かあったに違いない。
ボクは軽々しく訊いちゃダメなんだろうと思いながらも、好奇心に負けて事情を聞く事を決意する。
何故か、そうすべきだと思ったから。
「アオノ。何があったか話してよ。ボクたち友達だよね。もっとアオノの事知りたいんだ」
「サラ……」
アオノは目を閉じ、一呼吸すると話し始めた。
「オレの生まれは富豪一家でな。オレはいつでも好きなものが食べられるしいつでも寝たり遊んだりする事が許されたんだ。だがオレの兄さん……クロノはずっと一人で勉強や魔法を頑張り続けてきた。一家の跡取りさ。両親はオレを甘やかし、兄さんはそんなオレを嫌っていた。ある日魔族がオレの家を襲撃してきた。両親は殺され、兄さんは半殺しにされて魔族に連れていかれた。今頃拷問でもされているに違いない。兄さんは最後、物凄く悔しそうな顔をしてた。何で自分ばかりこんな目に遭うんだ、とでも訴えているかのような顔だった。才能があって努力もして、それなのに魔族に歯が立たずに悔しかったんだろうな。オレも悔しい。連れて行かれるべきはオレだった。オレはただ遊んでばかりのバカな子供だった! オレが犠牲になるべきだった! オレが兄さんを地獄に追いやってしまったんだ! オレがもっと努力していれば……二人なら何とかなったかもしれない。戦えたかもしれない。勝てたかもしれない。両親を救えたかもしれない……もうどれだけ後悔しても遅いが、な」
アオノはこちらに目を向ける。
その目は怒りと悲しみに満ちていた。
ボクは能天気だった。
アオノがこんなに苦しい人生を送っていたのに。
ボクはただ環境に恵まれて今まで生きてきただけだ。
情けない、恥ずかしい。
「オレはもう二度と同じ過ちは繰り返さない。行く宛のないオレを受け入れてくれた村のみんなをオレは守る。だからオレは村長になる事を望んだんだ。選ばれたからなるんじゃない。オレの意思だ」
アオノは涙を流しながら微笑んでみせた。
ボクは少しの間、何と言えばいいのか考えた。
でも幸せな人生を送ってきたボクには人の苦しみに寄り添う資格はない。
だからボクはボクとして答える事にした。
「ありがとうアオノ。話してくれて。アオノが話してくれなかったらボクは綺麗事野郎になってたと思う。ボクに一人の人間として生きる資格を与えてくれて、ボクを信頼してくれて、ありがとう。お礼になるかどうか分からないけど……ボクは魔族を見つけたら少しでも多く倒していく事にするよ。アオノの敵はボクの敵だ。アオノが守りならボクは攻めだ。村長さんがお金を出してくれなきゃボクは冒険家になれなかったし、村の脅威を無くすって意味でも、ボクは魔族を躊躇なく倒す事を約束するよ」
「ああ。ありがとな、親友」
ボクとアオノは拳と拳を合わせた。
まあボク拳握れないんだけどね。
その様子を物陰から見ていた魔族の少年は鬼のような形相を浮かべこちらを睨んでいたが、ボクたちはそれを知る由もなかった。
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