ボクはうさぎのぬいぐるみ

白井しのの

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四話 この魔法飛ばせませんでした。

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「主人公補正ってやつかな? 幸せの妖精だからかも?」
「もうなんでもいいぜ……」

 フレイムスフィアの魔法を発動させているボクはその場で固まる。

「あれっ、これどうやって飛ばすの?」
「何言ってんだ? 飛ぶわけないだろ。投げるんだよ」
「えっ?」
「こうやってボールを投げるみたいに」

 フレイムスフィアは綺麗な放物線を描いて近くにあった岩めがけて飛び、命中すると同時に岩が赤く染まり、うっすらと煙を吐く。

「なんか思ってたより地味だなあ……」
「そうか? 魔法なんてこんなもんだろ。ご満足いただけねえってんなら、フレイムスフィアを発動させたまま風の魔法『ブラスター』を使うって手もあるぜ。見てろ。世界の理を統べし者よ、我が願いを聞き届け賜え。程度は小、属性は風、形は波、以上!」

 アオノの手からギリギリ人が吹き飛ばされない程度の威力の風が吹き荒れる。

「これがブラスターだ。フレイムスフィアを発動させたまま使うと火炎放射ができる。応用魔法の本にはフレイムブラスターって載ってたな」
「へえ。結構な威力の風だね。程度は小なのに」
「火、水、風、土の四属性の中でも風は実体を持ってないだろ? 『小』に当てはめようとすればその質量分を補おうとして他の属性より威力が高まってしまうんだなこれが」

「ちょっと難しいかな」
「蛇口を同じ回数捻ってもドロドロの液体が出てくる速さとサラサラの水が出てくる速さは違うって言えば分かるか?」
「なるほど、何となくわかったよ。っていうか普通に受け入れてたけどこの世界に蛇口ってあるんだね。井戸とかじゃなくて」
「何年前の話をしてるんだ? 今は二〇二四年だぞ」
「西暦は共通なんだね」

 そんなやりとりをしていると巨大な石のトンネルが見えてきた。
 その前には二人の魔法使いが立っていた。
 一人は女性でもう一人は幼い子供だった。
 一体なぜこの二人が門番みたいな事をしているんだろうと思っていてると、女性の魔法使いに話しかけられた。

「身分証のご提示を」
「あ、はい」

 ボクは旅人証を、アオノは冒険家証を見せる。
 女性と子供は通ってよしというとトンネルの両端にそれぞれ移動した。

「よし、ついたぞ」

 アオノの声に反応して石のトンネルの向こうを見ると、多くの人たちが見えた。

「これが街……! すごい、色んな人がいるよ! 猫耳に犬耳、うさ耳までいる!」

 目の前に広がる確かなファンタジーにボクは胸を躍らせた。
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