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第三章 ラッキー・クローバー冒険者試験編
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「なァ盾騎士」
「ん」
「アンタさ、騎士名乗ってるけどよ」
「うむ」
「その重装備で馬に乗れンの?」
そのときリモンに衝撃走る──。
鎧兜で全身を覆い隠すようになったのはドラゴンに呪いを受けてから。巨大な三人用の盾──正式名称・油圧展開式三人用突撃防盾を武器としはじめたのは【ドラゴンスレイヤーズ】加入後。
全てを装備した状態で馬に乗ったことは未だなく、常識に照らし合わせて、その重量に耐えきれる頑健な馬はこの世に存在しない。
「……フゥン」
「フゥンじゃねェよ騎士なんだろがよ騎乗しろよォー、ギャハハハ!」
「煽りおる」
面白くてたまらず、ノッペラは笑いが止まらず腹を抑えてうずくまるほどだ。
「盾騎士から騎士取ったら盾しか残りませんね」
「ヒィーッ、ヒヒッ、それオモシロすぎだろッ、ギャハハ」
「むっ」
同席していたオリヴィアも、冷ややかにノッペラを見ながらもその言説には賛同しているようだった。
「脱げば良いだろ脱げば。鎧などポイだ。盾もポイだ」
「それじゃあ盾騎士じゃなくて騎士じゃないですか」
「ヒャハハハハ!!」
「うるさいぞ!」
リモンはその日から「馬に乗れない」ことを大層気にするようになった……。
「というわけだ」
カレドゥシャ近郊。
一頭の馬とともにリモンはそこに居た。
「頼むぞ」
馬は何も言わない。
「乗るぞ」
馬は何も言わない。
リモンは馬に乗った。
まずは防具一式のない、裸一貫での騎乗だ。
「乗ったぞ。大丈夫か」
馬は何も言わない。
「よし。次」
リモンは颯爽と馬から降りようとして着地に失敗したのを前転で誤魔化した。
「鎧のみ。これは軽くて良いものであるからして。すまん、少し重いぞ」
ひとまず鎧のみを装備。足場に登って馬に跨がる。
馬は何も言わないが、「この程度か?」とでも言いたげに自信に満ちた目をしていた。
「ならもう完全装備だ」
鎧。兜。盾。
全身黒色の不審者が完成する。
総重量、オリヴィアふたりぶんの負荷。
それをまるで普段着でも着ているかのように軽々着こなし俊敏に動ける。リモンはそんな自分が誇らしくなった。
「行くぞ。とても重いぞ」
馬は何も言わない。
ただ、少しばかり「それは無理だろ」というような自信なさげな瞳でリモンを見つめている。
「行くぞ。乗るぞ。行くぞっ」
馬は逃げた。
その脚力をもってして、全速前進した。
彼は賢かった。彼は自分の限界を知っていたのだ。
この場で限界を知らない馬鹿はリモンだけである。
「うぬぬぬぬぬぬ」
どれほど歯噛みしても馬には乗れない。悲しいかな、リモンは「盾騎士」ならぬ「盾」になってしまった。
「悲しき運命だとしても……俺は、盾騎士であるからして……」
本人が盾騎士を名乗っているのだから、たとえ馬に乗れずともリモンは盾騎士である。
それ以上に確かなことはない。盾騎士を自称し続ければ良いだけの話だ。
だが馬に乗れないと格好がつかないのは事実で、リモンは格好良いほうが好きである。
よって、彼はフル装備では馬に乗れないことに大層落ち込むこととなった!
──数日後──
「…………ッ、…………ッッッッ、殺ッッッ」
「ワハハハ!」
リモンはノッペラに乗っていた。
ノッペラは四つん這いの体勢で鎧兜盾装備のリモンを震えながら支えている。
凄まじい筋力だ。建設ギルドのメンバーであるというのは伊達ではない。
「何を…やってるんですか」
その光景を思わずラッキーは8度見した。
8度である。並の回数ではない。
「ノッペラ号だ、俺の愛馬!」
「……死、ねッ」
「なぜそうなったのかと聞いてるんです」
「コイツが俺との賭けに負けたからだ。腕相撲だった。俺の圧勝だ、何でも言うことを聞くというから馬にした。フゥン」
「…………ッ、ア゛ッ…!」
「流石にやめといた方がいいんじゃないですかねぇ」
「ん」
「アンタさ、騎士名乗ってるけどよ」
「うむ」
「その重装備で馬に乗れンの?」
そのときリモンに衝撃走る──。
鎧兜で全身を覆い隠すようになったのはドラゴンに呪いを受けてから。巨大な三人用の盾──正式名称・油圧展開式三人用突撃防盾を武器としはじめたのは【ドラゴンスレイヤーズ】加入後。
全てを装備した状態で馬に乗ったことは未だなく、常識に照らし合わせて、その重量に耐えきれる頑健な馬はこの世に存在しない。
「……フゥン」
「フゥンじゃねェよ騎士なんだろがよ騎乗しろよォー、ギャハハハ!」
「煽りおる」
面白くてたまらず、ノッペラは笑いが止まらず腹を抑えてうずくまるほどだ。
「盾騎士から騎士取ったら盾しか残りませんね」
「ヒィーッ、ヒヒッ、それオモシロすぎだろッ、ギャハハ」
「むっ」
同席していたオリヴィアも、冷ややかにノッペラを見ながらもその言説には賛同しているようだった。
「脱げば良いだろ脱げば。鎧などポイだ。盾もポイだ」
「それじゃあ盾騎士じゃなくて騎士じゃないですか」
「ヒャハハハハ!!」
「うるさいぞ!」
リモンはその日から「馬に乗れない」ことを大層気にするようになった……。
「というわけだ」
カレドゥシャ近郊。
一頭の馬とともにリモンはそこに居た。
「頼むぞ」
馬は何も言わない。
「乗るぞ」
馬は何も言わない。
リモンは馬に乗った。
まずは防具一式のない、裸一貫での騎乗だ。
「乗ったぞ。大丈夫か」
馬は何も言わない。
「よし。次」
リモンは颯爽と馬から降りようとして着地に失敗したのを前転で誤魔化した。
「鎧のみ。これは軽くて良いものであるからして。すまん、少し重いぞ」
ひとまず鎧のみを装備。足場に登って馬に跨がる。
馬は何も言わないが、「この程度か?」とでも言いたげに自信に満ちた目をしていた。
「ならもう完全装備だ」
鎧。兜。盾。
全身黒色の不審者が完成する。
総重量、オリヴィアふたりぶんの負荷。
それをまるで普段着でも着ているかのように軽々着こなし俊敏に動ける。リモンはそんな自分が誇らしくなった。
「行くぞ。とても重いぞ」
馬は何も言わない。
ただ、少しばかり「それは無理だろ」というような自信なさげな瞳でリモンを見つめている。
「行くぞ。乗るぞ。行くぞっ」
馬は逃げた。
その脚力をもってして、全速前進した。
彼は賢かった。彼は自分の限界を知っていたのだ。
この場で限界を知らない馬鹿はリモンだけである。
「うぬぬぬぬぬぬ」
どれほど歯噛みしても馬には乗れない。悲しいかな、リモンは「盾騎士」ならぬ「盾」になってしまった。
「悲しき運命だとしても……俺は、盾騎士であるからして……」
本人が盾騎士を名乗っているのだから、たとえ馬に乗れずともリモンは盾騎士である。
それ以上に確かなことはない。盾騎士を自称し続ければ良いだけの話だ。
だが馬に乗れないと格好がつかないのは事実で、リモンは格好良いほうが好きである。
よって、彼はフル装備では馬に乗れないことに大層落ち込むこととなった!
──数日後──
「…………ッ、…………ッッッッ、殺ッッッ」
「ワハハハ!」
リモンはノッペラに乗っていた。
ノッペラは四つん這いの体勢で鎧兜盾装備のリモンを震えながら支えている。
凄まじい筋力だ。建設ギルドのメンバーであるというのは伊達ではない。
「何を…やってるんですか」
その光景を思わずラッキーは8度見した。
8度である。並の回数ではない。
「ノッペラ号だ、俺の愛馬!」
「……死、ねッ」
「なぜそうなったのかと聞いてるんです」
「コイツが俺との賭けに負けたからだ。腕相撲だった。俺の圧勝だ、何でも言うことを聞くというから馬にした。フゥン」
「…………ッ、ア゛ッ…!」
「流石にやめといた方がいいんじゃないですかねぇ」
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