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終章

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 寮生活をはじめて半年以上経つが、同室の子も、学科の子も、みんな出身地はバラバラ。
 地元だと過去のことを知ってる人間が多いからと考え、担任に推薦の候補に挙げられたのが、今いる大学だ。

 高校3年間ずっと同じ担任で、父の部活の後輩だった。
 担任は入学して最初の個人面談で「依田先輩の娘がくるとは……びっくりしました。あはは」と呑気に笑っていた。
 入学式に父が同席していたことを話すと、正直 別人過ぎて分からなかったと。
 高校時代の父は今と違って、痩せ型で背が高く、天パで薄い青眼鏡かけていたと。

 クイズは歴史・数学・スポーツ系が強かったと言っていた。
 残念ながら娘である私は、全部苦手なジャンルだ。
 当時の父の見た目は、白髪が少しずつ目立ち始めていた。
 私は父が眼鏡かけてたことを、担任の話で初めて知った。いつもコンタクトをしているから。
 白髪が生えたのはあの人のことで、ストレスになっていたんだと思う。
 長年あの人の横暴さや傍若無人ぶりに振り回され、精神的にダメージがきていた。
 私は父が元気ない姿や、じんましんでかゆそうにしている姿を見てきた。
 父が家に戻る時間が遅いのも、中学生になって気持ちが分かった。
 
 担任は私の両親の結婚式に出てた。

『結婚式場は地元でいいとこで、めっちゃお金かかってるなーと思った。お母さん可愛い系だったな。見てて気になったのが、お母さん、出席してくれた友達と写真撮っても、つっけんどんしてたけど、おとうさん側の友達が来ると、媚びうるようなテンションだった。俺も友達もそうだけど、片っ端から連絡先教えてってやってた』

『今でも覚えてるけど、お母さん、お色直し4回ぐらいやってたよ。後にも先にもこんなに多いのはなかった。確かに似合ってたけどね……お父さんもゲストも疲れ切ってた。というか、披露宴自体がもうお母さんが主役で、お父さん脇役みたいな扱い。仲間うちで、お父さんが上手くやっていけるか心配していた。クイズにも全然顔出せなくなったと聞いてね……』
 
 当時出席していた人達の話を聞いて、あの人は人のこと一切考えない人間なんだなと改めて思った。
 自分が常に主役じゃないと嫌。お姫様扱いしないと許さない。

『そっか。お父さんも依田さん2人で頑張ってきたんだね。お母さんの過去のことは、依田さんには関係ない。とやかく言ってくる方がおかしい。いっそのこと見返そう。依田さんがお母さんみたいな人間でないことを証明するために。一泡吹かせよう』

 調子いい口調で、一泡吹かせる、見返すという言葉が出た瞬間、この人は味方になってくれそうだと思った。
 実際進路相談は「あの人に居場所を特定されないような所の大学」を前提として考えていた。その中の1つが今いる大学。
 クイズサークルもあって、なおかつ地元からだいぶ離れた距離の場所。
 普通の一人暮らしだと、あの人が殴りこんでくるリスクが高いことを考えて、セキュリティが厳しい寮生活を選んだ。
 それなりに大きい大学なので、遠方から来る人も少なくなく、部屋も多いことから、簡単に見つけ出すことはできない。それに、外部からの訪問だと、事前申請が必要だ。
 そういう意味では、私にとってラッキーな場所だった。
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