上 下
12 / 45
3章

1

しおりを挟む
「いやー、めっちゃ可愛かったっすよ。巨乳だし、色っぽいし、ちょっとあどけなさがあってどストライクでした! しかも七つ星城の着せ替え体験ではしゃいでいて楽しかったです!」
 昨日のデートで興奮気味のみみずくに、すいせんはコイツぞっこんだなと確信した。
「それにしてもボディータッチ激しい子だったね。いきなりここまで来る?」
「不倫する人とか異性遊び激しい人はそういうタイプ多いみたいよ」
 昨日のみみずくとゆあの初デートは、すずらんとすいせんも遠くから尾行するような形で見ていた。
「大浴場であの子みたけど、スタイル良かったわ。なんか女優さんとかグラビアモデルみたい」
「でも写真とちょっと違うくない?」
 瀬川に見せられたのはショートの女性だった。一方みみずくと会った女性は黒髪ロングだ。
 すいせんの眉が八の字になってる。
「確かにちょっと違うわ……みみずくが会った人と瀬川が会った人と。一体どうなってるの?」
「ゆあって名前結構いますからねー。今どきの名前ですし。実は違う人でしただったら、それはそれで俺としてはいいんだけど……ただ、プロフィールは瀬川さんが付き合っていたゆあさんと一緒なんだよなー」
「これ、写真だけ変えて、プロフィールと名前はそのままにしてるかも。つまり何人かの女性で”ゆあ”と名乗って美人局させてるのかも」
 すずらんの推察に二人は頷く。
「あと、昨日会ったゆあさんの免許証を撮りました」
 ゆあが寝てる隙にこっそり免許証を撮った。ほんとは良くないことだが。そしてみみずくは免許証を持っているが、彼女に見せないようにした。
「おおっ! グッジョブ! さっすがー!!」
 バシバシとみみずくの背中をたたくすずらん。
「ただ、名前はニックネームと全く関係なかったですね……なんというか、今どきですねみたいな名前……」
 みみずくはすいせんとすずらんに免許証の写真を見せる。
「これで、SNS特定できるワンチャンあるんじゃない?」
 すずらんはパソコンでゆあの名前を検索してする。
 あっさり出てきた。
 実名制SNSに占部浩平うらべこうへいという男性の投稿の中に彼女の名前がでてきた。
「うーん、これ気になりますねー」
  みみずくがすずらんとすいせんに見せたのは、占部浩平のSNSの中にある投稿記事。
 日付けは二日前だろうか。
『妻と義理の妹でバーベキューしました!』という写真。
その中にゆあがいた。彼女の服はベージュのセーター風のミニワンピースで、胸が強調されているタイプだ。トングを持って焼いている。
そしてショートカットの女性。瀬川が関係を持っていた人と一致している。
 赤のミニワンピースで胸の真ん中が開いている。お酒だろうかプラスチックのコップを片手に持ってる姿。
 バーベキューにふさわしい格好ではない。
ゆあの免許証に書かれた名前が出ている。
「占部浩平って誰よ?」
「えーっと、なんか聞いたことあるのよね……」
 すずらんとすいせんが思い出せない中「セリバーテルの社長です!」とみみずくが教える。
「これで家特定できるかも。すいせん、この免許証の住所検索してみて。みみずくは占部浩平を調べて」
 苗字が珍しいからすぐに絞り込めるかもしれないと淡い期待をする。
「こいつですよ……」
「あー、こいつね……胡散うさんさそう。詐欺やってそう」
 すずらんはセリバーテルの公式ホームページを見て、画面越しに毒を吐く。
 占部浩平のSNSと本人の顔が一致している。
 社長のメッセージには「皆を幸せにさせたい」と美辞麗句びじれいくが並ぶ。
 公式ホームページの宣伝に文句は「サクラ・業者はいません!」「既婚者禁止」「セリバーテルで結婚しました!」と並んでいる。
 すずらんはホームページを見て、白々しく感じていた。
「既婚者禁止って言ってるけど、めちゃくちゃ嘘ついてますやん……」
 ネーミング詐欺だとすずらんは心の中で呆れる。
 ねぇ、この画像見て欲しいんだけど。この海が見えるの……」
 すいせんが写真を拡大したのを二人に見せる。
 高速道路だろうか。
「ここ! ひしゃく町ですよ! ほら七つ星町の中にある。で、この近く、南北なんぼく線が走ってるはずです」
「ほんとだ。免許証の住所もそうよ」
 あとは家の周りのお店がわかればいい。
 庭の写真だろうか。ガーデニングをせっせとやってる様子や、咲いたパンジーの花が写っている。
 奥に辛うじて工務店の名前が見える。
「ここじゃないかな。該当の工務店が向かいにあるわ」
 免許証の住所を元に地図アプリですいせんが検索した工務店の名前が出てきた。
「結構おおきな家ねー」
 白を基調とした、洋風の戸建ての住宅。ご丁寧にシャッター付きの駐車場もあり、白の高級車が止まっている。
「てか、めっちゃ金持ちじゃん……」
  これで、マッチングアプリでみみずくに教えた住所は嘘になる。
「あー、瀬川さんが聞いてた住所と一緒ですね……」
「そういえば、ネット掲示板には、占部がゆあの美人局つつもたせに絡んでるって書いてましたね……まさか……」
 みみずくの顔が青ざめる。
「いや、彼女に限ってないですよ! 超いい子でしたもん!」
 みみずくは大きく首を横に振る。
 そんな訳ないと信じたい。美人局やってると信じたくない。
「信じたい気持ちは山々だけどね、現に、ゆあという女性が美人局してる訳でしょ? このアプリで。そうじゃなきゃ、瀬川さんはここに相談なんて来ないから」
「それはそうですけど……」
 みみずくが口籠る。
「まあ、まだ確定してないから。まだみみずくはお金ぶんどられてないからね。ただ、占部社長とゆあさんとショートカットの女性が家族みたいなのは確実ね。セリバーテルの会社情報も調べるよ。社長の名前もっと詳しく検索して」
 みみずくは自分のパソコンで占部について調べる。
 真っ先に出てきたのがセリバーテルのホームページ、そして、実名制のSNSと匿名制のつぶやきSNS。
 占部の匿名制SNSを見ると、直近は二日前。
 女性達と遊んでる姿が載せられている。
「……こいつめっちゃ遊んでますなー。ほら……」
 モテる俺をアピールしたいのか、いつでも女性に囲まれてる様子が伺える。
 頬杖つきながら見ていくと、みみずくはため息をついた。
 リア充爆発しろとは言わないが、なんとなく腹立たしさが湧いてくる。
 羨ましいような羨ましくないような……。
「すずらんさん見てくださいよー。この人よく今まで炎上しなかったなーと思いますよ」
『女性と遊びたい方募集!』
『女性の方必見! セリバーテルで働きませんか? 簡単なお仕事をお任せします』
『今回も美人局で儲けたので、嫁と女達でデートしたw』
「うわぁー、まじか……しかもデートしたメンバーに瀬川さんの相手が入ってるじゃん……これ、魚拓とスクショよろしく」
「へい」
 こんなのテレビで取り上げられてもいいと思うが……美人局はなかなか表面化しにくい。
 異性に騙されたと警察に相談しにくいし、自分が悪いと思い込んでしまう。それゆえ表面化しにくい。
 しかし騙された人の心の傷は一生癒えない。女性不信になって人付き合いや人生に影響がでることだってある。
「簡単なお仕事って何?」
「もしかして、美人局やらせてるのかも。最近は集団でやってるって聞くし……」
「つまり、美人局する女性がスタッフで働いてる……となると、脅し役の男性スタッフもいてもおかしくないわ。別に脅し役は女性でもあるけど……」
 すずらんの推察に沈黙が落ちる。
「占部の住まい分かりました。この人個人情報ガバガバですよ!」
 すずらんとすいせんはみみずくのパソコンを覗き込む。
「これって……!」
「うん……」
「あははは……」
 三人に乾いた笑いが出た。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したら、現代日本だった話

千葉みきを
キャラ文芸
平安時代の庶民である時子は、ある日、どこに続いているのかわからない不思議な洞窟の噂を耳にする。 洞窟を探索することにした時子だが、その中で、時子は眠りに落ちてしまう。 目を覚ますと、そこは、現代の日本で、時子はひどく混乱する。 立ち寄った店先、喫茶マロウドで、紅茶を飲み、金銭を払おうとしたが、今の通貨と異なる為、支払うことが出来なかった。その時、隣で飲んでいた売れない漫画家、染谷一平が飲み代を払ってくれた。時子は感謝を告げ、一平に別れを告げその場を去ろうとするが、一平はその不思議な通貨を見せてくれと、時子を引き留める。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

軍艦少女は死に至る夢を見る【船魄紹介まとめ】

takahiro
キャラ文芸
同名の小説「軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/176458335/571869563)のキャラ紹介だけを纏めた部分です。 小説全体に散らばっていて見返しづらくなっていたので、別に独立させることにしました。内容は全く同じです。本編の内容自体に触れることは少ないので大してネタバレにはなりませんが、誰が登場するかを楽しみにしておきたい方はブラウザバックしてください。 なお挿絵は全てAI加筆なので雰囲気程度です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...